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2007年3月 4日
今年は記録的な暖冬となりました。
日本だけでなく、世界各地で気象変動が大きな問題となっています。
さらに、原油価格の高騰もあり、エネルギー問題と炭酸ガス削減の問題をいかに解決するのかということが重要な課題となってます。
ここ数年で着目されつるあるエネルギー源に、バイオマスを用いた燃料、バイオ燃料があります。
バイオマス
バイオマス︵Biomass︶とは生態学で、特定の時点においてある空間に存在する生物の量を、物質の量として表現したものである。通常、質量あるいはエネルギー量で数値化する。日本語では生物体量、生物量の語が用いられる。植物生態学などの場合には現存量︵Standing crop︶の語が使われることも多い。
転じて生物由来の資源を指すこともある。バイオマスを用いた燃料は、バイオ燃料︵biofuel︶またはエコ燃料︵ecofuel︶と呼ばれている。
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バイオ燃料は炭酸ガス削減に大いに効果がある夢の原料だという考え方があります。
すなわち、
■植物は成長のために大気中の炭酸ガスを吸収し、酸素を放出する。炭素は対組織となり固定される。
■燃焼により、体組織の炭素は空気中の酸素と再び結合し、炭酸ガスとなる。
■したがって、結果的に、吸収した炭酸ガスが燃焼によって放出されるので、炭酸ガスは増加しない。
ということです。
この考えをカーボンニュートラル といいます。
バイオ燃料としてのバイオエタノールの全世界の生産量は2005年で 4,600万キロリットルとなり、2000年から倍増しています。
このうち、3分の1の33%はブラジルとアメリカで生産されています。
︵アメリカのバイオエタノールはとうもろこしにより、ブラジルのバイオエタノールはサトウキビにより主に生産される︶
なぜブラジルで、これだけのバイオエタノールが生産できるのか。
ブラジルの国土面積は日本の23倍、可耕地面積は日本の10倍以上、しかも農耕地利用されている面積は2割にも満たないといわれています。さらには、熱帯雨林の開発による耕地拡大がバックグラウンドにあります。
しかしながら、ここには落とし穴があります。
バイオ燃料には
︵1︶第一世代バイオ燃料
︵2︶第二世代バイオ燃料
がありますが、現在主流となっている第一世代バイオ燃料は、バイオエタノールやバイオディーゼルを生産するために、主に穀物や、大豆、菜種油、サトウキビ、パーム油のような農作物を原料としています。
バイオ燃料を作るためには、安価でかつ安定的に耕作地を広げようと、熱帯雨林などを開発してしまったり、食料や飼料用の農作物を奪い合いを引き起こしたりするという問題が生じます。
例えば、大豆価格は半年で2倍に急騰しています。
食料の他、バイオ燃料として需要が急拡大する中、それに応えるため、アマゾンの熱帯域における開発が進み、ブラジルは、ついに世界一の大豆輸出国となりつつあります。
そのために、伐採による森林の消失が深刻化し、一年間に東京都の12倍もの面積が消失しています。
■関連トピックス
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また、食料用に生産された農作物が、燃料用として供給されるようになり、食料と燃料の奪い合いによる価格高騰が深刻な問題となっています。
燃料アルコールは、サトウキビ、テンサイ、トウモロコシ、大麦、ジャガイモ、キャッサバ、ヒマワリ、ユーカリのような多様な作物などから製造される。重要なバイオアルコール計画としてブラジルのサトウキビからのエタノールとロシアのユーカリからのメタノールが挙げられる。また、アルコールはエタンあるいはアセチレン、炭化カルシウム、石炭、石油ガスあるいは他の資源から合成的に得ることができる。
農業による燃料アルコール生産は豊かな土と水で耕作できる土地を相当規模必要とする。それゆえ西欧のように人口密度が高く産業化された地域では選択肢としてそれほど有効ではない。仮に、ドイツ全土をサトウキビ大農園で覆い尽くしたとしても、ドイツの現在のエネルギー需要(燃料と電気を含む)の半分ほどしか供給できない。
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従って、第一世代バイオ燃料は炭酸ガス削減の手段として用いるのには不適切であると、私は考えています。
対して、次世代の第二世代バイオ燃料は、例えばリグノセルロース系バイオマスのようなものです。
リグノセルロースは、植物の茎、籾殻、葉、その他、植物の繊維などすべてを原材料とすることができます。
つまり、たとえばとうもろこしを栽培するとして、その実の部分は穀物飼料として供給し、その収穫後の残りの部分をバイオエタノールやバイオディーゼルとして利用するというものです。
このシステムが構築されれば、バイオ燃料は炭酸ガス削減に大いに効果があると言ってよさそうです。
しかしながら、第二世代バイオ燃料が実現するために大きな障壁が立ちはだかります。
それは、コストと、バイオマスのための技術確立という障壁です。
EUにおける現在のバイオマス価格例
■バイオマス残渣︵廃棄物利用︶
スウェーデン35ECU/t︵残渣︶,80ECU/t︵木材ペレット︶,デンマーク30ECU/t︵藁︶
■バイオマス作物
ドイツ70ECU/t︵草,穀物︶,フランス60ECU/t︵パルプ︶
■バイオ・ディーゼル油︵エステル︶
フランス0.43ECU/l
■バイオ・エタノール
フランス0.47ECU/l
■バイオガス
フランス 原料6ECU/t メタン0.3ECU/m3
出典‥NEF News, 財団法人新エネルギー財団,Vol.6, No.3, 1998
もちろん、化石燃料資源を再生可能エネルギーへ移行することは、必要不可欠なことです。
しかしながら、バイオ燃料を手放しに賛美するのではなく、その利点と欠点をよく見据えた行動が必要だろう思います。
バイオ燃料の利点は、
︵1︶持続可能な管理さえ行えば枯渇しない資源である。
︵2︶持続的に利用することによりカーボンニュートラルを保つことができる。
︵3︶資源備蓄の方法を工夫︵チップ化、ガス化、液体化など︶することにより稼働効率を高めることができる。
︵4︶有機廃棄物の有効利用策となりうる
︵5︶化石燃料と比べ燃焼時の有害物質の発生が少ない。
︵6︶太陽光・風力発電よりコストが低い。
欠点は
︵1︶化石燃料よりもエネルギー密度が低いため、収集にコストがかかる
︵2︶穀物利用の場合、食糧と競合する場合がある
︵3︶持続的な利用をしなければ熱帯雨林の破壊や農地の圧迫などの問題がある。
ということです。
少なくとも、
■バイオ燃料生産のために、熱帯雨林などの森林開発を行うのは本末転倒。
■既にある農地を転用して、バイオ燃料の原料となる植物を植えるべきではない。
■バイオ燃料の原料として、人間や家畜などの食料となりうる部分を用いるのは、たとえコストが低くても行うべきではない。
という三点を主張します。
京都議定書では、バイオ燃料から生じる炭酸ガス排出はは温暖化ガス排出には加算されないことになっていますが、少なくとも上記三点に由来するバイオ燃料については、加算されてしかるべきであると考えています。
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こういう方向性は歓迎するべきだと思います。
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