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2006年7月31日
かなり話題になっている本なので、ご存知の方も多いと思いますが、来栖けい氏の
﹃美食の王様 究極の167店 珠玉の180皿﹄︵筑摩書房︶
﹃美食の王様 スイーツ 絶対おいしい169店 厳選の380種﹄︵筑摩書房︶
﹃美食の王様 パン 絶対おいしい92店 厳選の210種﹄︵筑摩書房︶
をご紹介します。
内容は美味しいお店の料理についてまとめたグルメ本なのですが、今までのグルメ本の概念を覆す本であることは間違いありません。
それは、氏の食に向かう真剣な態度、鋭い感性、豊かな表現力がもたらしているのでしょう。
幼い頃から両親に連れられ、様々なお店に足を運んでいた私の食べ物と向き合う姿勢は、一般の子供とは明らかに違っていました。何を食べるにしても、それが何でできているのか、何が使われているのか、の細かな分析をはじめてしまうのです。子供がよく食べるポテトチップスなどのジャンクフードも、口にした憶えがほとんどありません。だからかどうかはわかりませんが、私の舌は人一倍敏感です。
本書﹃美食の王様﹄は、そんな﹁食べること﹂にこだわり続けた私の、現時点での食の集大成です。これまでに出逢った珠玉のお店、料理をランキング形式でリストアップし、その1つ1つに対して詳細な﹁味﹂のコメントをつけています。
ここまでは、大抵の料理評論家と変わりないのです。
しかし、ここからが凄い。
ただこれらのデータは、最初から本を出版するつもりで書きためていたわけではありません。性格上、興味のあることに関してはとことん突きつめなくては気がすまないだけなのです。ごく一部の人には、私が書いた文章をお見せしたことはありますが、﹁本﹂という形で大勢の人に公開するなんて、一度も考えたことはありませんでした。何せ私はまだ25歳。一般的な考えからすると、そんな人間が料理、いや食べ物すべてについていろいろ語っても、信憑性がなく、受け入れられないに決まっている、と思ったからです。しかし、今回はいろいろな縁があって、本を書く決心をしました。自分の舌の記憶を頼りに厳しい基準をクリアしたものだけを掲載しているので、ここにランク入りしたお店、料理等は相当なレヴェルであると自信を持っていえます。
来栖氏は、まだ20代半ばの若者です。
しかし、その桁はずれた胃袋と行動力によって、どんな料理評論家よりも多くの料理を口にしているのです。
そして、さまざまな興味ある料理を食べた後、かなりの日時を置いて、そのあとで特に印象に残っているものについてのみランキングしていくというスタイルです。
私には、食べることに関して人間の常識が当てはまらない部分があります。とにかく、食べる量が尋常ではないのです。レストランでいえば、前菜︵×2︶、魚料理︵×1︶、肉料理︵×5︶、デザート︵×4︶、というように、気になったものはすべてオーダーしないと気がすみません。ケーキ屋、和菓子屋、パン屋・・・・にしてもそう。気になるものすべてを購入し、そのすべてを食べ尽くします。昼と夜にレストランに伺い、その前後の時間帯に他のジャンルのお店︵ラーメン、洋菓子、和菓子、パン・・・・︶に足を運ぶ。それが私の1日の基本的なパターンです︵1日の時間をフルに使います︶。そんなことができるからこそ、全ジャンルを深く追求することができる、というわけなのです。
ただ、現在は他に仕事を持っているので、以前のようにこれを毎日決行することはできません。週に2?4日のペースで行い、それ以外の日は食事の量を抑えています。その代わり、水を1日15リットル以上補給し︵朝昼夜、それぞれ最低5リットル︶、胃を極端に小さくしないよう心掛けています。
テレビでその食事の様子が放映されておりましたが、とにかく食べる量が半端ではないです。
5人掛けくらいのテーブル一杯に料理が並べられ、それを一口も残さず全て胃袋に収めてしまいます。
それぞれについての評価をその場ですべてメモに残していくわけです。
この本にランク入りした完成度の高い料理、お金には代えられない料理のことを、私は﹁珠食﹂︵しゅしょく︶と呼びます︵﹁珠玉の食べ物﹂という意味です︶。この珠食との出逢いを求めて、日々食べ歩いているわけです。本書はあくまでも現段階でのベストであり、いわば私の﹁珠食リスト﹂です。﹁食べる﹂ということに終わりはありませんし、今後このランクは少しずつ変わっていくものだと思いますが、食べることが大好きな人には間違いなく喜んでいただける内容であることを確信しています。すべては﹁味﹂。個々の味わいをここまで深く掘り下げて書いてある本は他にはない、とはっきりいえます。人と同じことをするのが嫌いな私。人に負けるのも大嫌いな私。本書は、そんな想いがぎっしりと詰まった、全く新しいレストラン評価本です。
また、その評価内容も的確です。
全ての本を読ませていただきましたが、読んでいる私たちにも、まるで今食べているような錯覚にさせるような文章です。
そして、心地よい感覚を与えてくれ、食に関してこんなに奥が深いものなのかということを改めて実感させてくれる本です。
料理を作る者としては、氏の本にリストアップされ、印象を記述してもらうことは最高の名誉なのだろうと思います。
読後に心地よさを残してくれる理由は、豊かな表現力によるものだけではありません。
彼の評論は、決して﹁悪い部分﹂を書かないのです。
つまり、褒めるべきのみの評論文であるわけですが、この姿勢は私たちに示唆を与えてくれるように思います。
例えば子どもたちと向かい合うときに、ここが駄目、あれが駄目と言い過ぎないでしょうか。
ドロシー・ロー ノルトの﹃子どもが育つ魔法の言葉﹄にも通じるものを感じました。
来栖けい official site
http://www7a.biglobe.ne.jp/~shina-kei_kurusu/toppage.html