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『サザエさんよもやま話』の一コマ。
これは、サザエさんの原作者、長谷川町子さんが西日本新聞の社員として仕事で博多湾をスケッチをしていた時、憲兵に見つかりスパイ容疑をかけられたエピソードを描いたものです。
このエピソードは博多の話ですが、戦争直前、戦時中は日本各地の軍施設の周辺では、測量、撮影、模写、録取などが厳しく制限されていました。
横浜以南から三浦半島にかけて、同様の制限が掛けられていたことが同じ時期に発行された『京濱・湘南電鐡沿線案内』に見ることができます。
『京濱・湘南電鐡沿線案内』
昭和16年3月21日 東京湾要塞司令部許可済
昭和16年3月17日 横須賀鎮護府許可済
被許可者 鉄道省
この絵図には、右上に次のような注意書きがあります。
注意
要塞地帯内に於いて許可なく水陸の形状を測量・撮影・模写・録取することは禁じられております。犯したる者は法律によりて処罰せられます。
『護れ要塞 防げよスパイ』
この図では、おおむね横浜駅より南側の一帯、三浦半島全域が要塞地帯となっています。昭和16年といえば、太平洋戦争開戦の直前の時期です。
昭和12年7月7日日中戦争(支那事変)がにより、英米仏と日本の関係は急速に悪化、米が燃料や鉄鋼資源の対日輸出を制限するなどの日本への対策が行われました。
日本は、独・伊と日独伊三国軍事同盟を締結し、対して米国は石油輸出全面禁止等の経済封鎖を強化、昭和16年12月8日の真珠湾攻撃により 日本は英米に宣戦布告、太平洋戦争へと突入していった時期ですから、特にこのような制限が広くかけられたのでした。
それでも、地図をみると、仰々しい内容ばかりではなく、観光絵地図として楽しめる内容もふんだんに盛り込まれています。
京浜電鉄の主な観光スポットであった總持寺や花月園、川崎大師なども大きく描かれています。
油壷の海岸では海女さんが魚介を採る様子なども描かれていたり。
花見で宴会している様子が描かれていたり。
要塞地帯の中でも、決して日本全体が戦争に突入していくような緊張感を感じさせないような楽しい絵柄になっています。
眺めているだけでも楽しい絵図ですね。