« 天蓋と蓮の花 | 最新記事 | 客殿床暖房工事(1) »
蓮の花(蓮華)は仏教の教えを象徴する花とされています。
その理由は「泥中の蓮(でいちゅうのはす)」(維摩経)にあるようです。
つまり、泥のような汚れた環境、であっても、その汚れに染まらず清く正しく生きるさまが菩薩道を歩む仏教修行者の姿に喩えているのだと思います。
仏教説話など読むと、
「泥水が濃ければ濃いほど、汚ければ汚いほど、蓮の花は大輪の花を咲かせる」
「きれいな水からは蓮の花は小さな花しか咲かせない」
などのように、汚い泥←→きれいな蓮の花 という構図が根底にあります。
私も、以前は何の疑問もなくこの構図を先入観を持って抱いていました。
しかし、蓮の花を育ててからは、蓮の育つ環境は、決して汚い環境ではないということをつくづく感じます。
貞昌院の大賀蓮は、直径約1mの鉢に土を入れて水を約10cmほどの深さに張っています。
そこから立ち上がる立葉や蓮華は高さ2mほどにもなっています。
では、根元の泥や水はどのようなんっているかというと・・・・
透明度抜群の澄んだ水です。
(↑クリックして拡大すると小さいメダカの赤ちゃんがたくさん見えます。右写真に矢印を加えました)
こんな感じで、次々と新しいメダカが生まれています。体長わずか数ミリ。
水底には、蓮の浮葉が枯れて沈んでいます。
その葉に付いた藻に、メダカが卵を産んでいます。
また、アマガエルも居るし、ヤゴも育っています。
ただの容器に水だけを張って外に置いておくと、水は腐り、ヤブ蚊の幼虫、ボウフラが沸いて、それこそ汚い水になりますが、蓮の鉢ではそんなことにはなりません。
対し、蓮の鉢の中はちょっとしたビオトープの環境が蓮鉢の中で整えられているのです。
泥の中にも活発に活動する細菌や小さい虫たちがたくさん居ます。
ボウフラはたちまちメダカの餌になりますので、蓮鉢の中では蚊の発生はありません。
また、ヤゴはメダカを食べるのですが、メダカは藻の中に隠れたり、何よりも繁殖力が旺盛なので、水深さえきちんと保っていれば絶滅することはありません。
そういった生物たちの営みにより、泥も水もとても清浄な環境を維持しているのです。
泥は決して汚いものではありません。
そして、「蓮はさまざまな生物たちにのはたらきによる清浄な泥と水から清浄な花を咲かせる」のだということを、蓮華鉢は教えてくれています。