連合町内会家庭防災員研修会

永野連合町内会家庭防災員自主活動研修会が行われました。

テーマは「築30年の家は救えるか」

近いうちに海溝型の地震が発生することが想定されます。
大地震が発生した際、自宅はどうなるのでしょうか。
また、その対策はあるのでしょうか。

 

日時 平成23年9月16日(金)10:00-12:00
場所 上永谷町内会館

第一部で、私が、第二部で一級建築士宮地誠氏の講演という構成で進められました。

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災害は、私たちが「想定」している以上の事象が発生した際に引き起こされます。
地震の揺れに対して、どれだけの耐力を持たせるか、という建築基準は、大震災が起き「想定外」の事象が発生するたびに建築基準法が改正され「想定」が引き上げられてきました。
建築基準法は、大震災のたびに改正されてきたのです。


震災と建築基準法の改正

1920年(大正9年)12月1日 (大正8年法律第37号)施行
第12条において、「主務大臣ハ建築物ノ構造、設備又ハ敷地ニ関シ衛生上、保安上又ハ防空上必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得」と規定される。
市街地建築物法施行規則(大正9年内務省令第37号)において、構造設計法として許容応力度設計法が採用され、自重と積載荷重による鉛直力に対する構造強度を要求。
ただし、地震力に関する規定は設けられていなかった。
1923年(大正12年) 関東大震災
1924年(大正13年) 市街地建築物法施行規則改正
許容応力度設計において、材料の安全率を3倍とし、地震力は水平震度0.1を要求。
1945年(昭和20年) 終戦
1950年(昭和25年)11月23日 市街地建築物法廃止、建築基準法施行(いわゆる旧耐震)
具体的な耐震基準は建築基準法施行令(昭和25年政令338号)に規定された。
許容応力度設計における地震力を水平震度0.2に引き上げた。
1968年(昭和43年) 十勝沖地震
1971年(昭和46年)6月17日 建築基準法施行令改正
鉄筋コンクリート造の帯筋の基準を強化した。
1978年(昭和53年) 宮城県沖地震
1981年(昭和56年)6月1日 建築基準法施行令改正(いわゆる新耐震)
一次設計、二次設計の概念が導入され、地震力に対しての必要壁倍率の改正
軸組の種類と壁倍率の改正が行われた。
1995年(平成7年) 阪神淡路大震災
2000年(平成12年)6月1日 建築基準法及び同施行令改正
性能規定の概念が導入され、構造計算法として従来の許容応力度等計算に加え限界耐力計算法が認められる。
(当日のkameno資料より一部引用)


今から30年前の1981(昭和56)年、建築基準法の大改正が行われ、新耐震基準が適用されるようになりました。
したがって、築30年を超える家か、それ以降に建てられた家かによって耐震基準が大きく異なるため、新耐震基準を満たしていない家屋への対策が求められる可能性があります。

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それでは、どのように危険性を見極め、対策を施すべきかを考える研修会でした。

災害に対する心構え(予防)
・災害に対する防災知識を身につける
・災害に備え応急手当の方法を覚えておく
・自分が住んでいる土地を把握する
・災害時の帰宅困難に備える
・ハザードマップ(防災マップ)を備える
・常に気象情報に注意する
・家の点検修理は早めに行う
・家族で防災会議を開く
・防災訓練への参加
(当日のkameno資料より一部引用)

そして、具体的な地盤調査、地盤改良、土台、構造物の補強等々の実例について、スライドをもとに学んでいきました。
まずは、自分の家の建っている場所の状態を調査した上で、費用対効果に鑑みバランスの良い地震対策を行う必要があります。

最近は、震災が近いということを脅し文句として、強引に耐震調査を行ったり、耐震補強金具を過度に売りつける悪質な業者もありますので、区役所等の相談窓口など、信頼のおける機関に問い合わせることも大切です。
そして、建物も大切ですが、被害の拡大を防ぎ、何よりも「命を守る」ための対策が最優先されるべきだと考えます。

投稿者: kameno 日時: 2011年9月17日 09:56

コメント: 連合町内会家庭防災員研修会

かって私は無線回線用の高さ50メートルの鉄塔の強度計算をし、設計し、部材の選定をしたことがあります。直径3.5メートルのパラボラアンテナを三基搭載可能な自立式の鉄塔です。当時の鉄塔構造計算基準では風速60メートルに耐えることとなっていましたが、永久施設でもありますので私は風速90メートルに耐えるものとして設計しました。30年も前のことですが予算的にはさほどに過大とはならず、今でもあれでよかったと思っています。自然現象に耐えるための施設は相当の心構えを持って設計しなければならないという考え方をしていました。

投稿者 zazen256 | 2011年9月18日 03:55

zazen256様
以前、東京タワーのトピックスでコメントいただいた塔ですね。
http://teishoin.net/blog/003639.html
設計基準はあくまでも基準。私もそれに適応しない新しい構造物の設計もしたことがあります。
一筋縄では行かないことですが、設計者の設計思想が生かされる醍醐味がありますね。

投稿者 kameno | 2011年9月18日 09:21

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