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電気、ガス、水道、交通、通信など、日常の生活や産業活動に無くてはならない施設をライフラインと呼びます。
大災害の際には、このライフラインが断絶するこすことにより、被災地の人々の生活、避難所の生活に大きな支障が生じました。
また、病院でのライフラインの障害は命にかかわりますし、被災地復興の障害となります。
従って、一刻も早いライフラインの復旧が求められるわけですが、東日本大震災のように津波により広範囲に甚大な被害をもたらした大災害では復旧が難航し、なかなか回復しないこととなりました。
ライフラインの普及がどういう状況であったかを纏めている資料がありましたので、その結果を引用しながら考えてみます。
土木学会地震工学委員会「ライフラインの地震時相互連関を考慮した都市機能防護戦略に関する研究小委員会」資料
注意事項
・水道・都市ガス・電力の停止戸数の解消過程および復旧率について,東日本大震災と阪神・淡路大震災との比較を行った.最後のデータの5 月31 日は地震発生から82 日目であり,兵庫県南部地震では4 月8 日に相当する.
・東日本大震災の電力については,東北電力管内のみを対象とした.
・阪神・淡路大震災における水道被害は,兵庫県内のみを対象としている.
・阪神・淡路大震災における都市ガスの復旧過程では,1995 年2 月28 日に,倒壊・焼失した約152,000戸が復旧対象から除外された.しかし図21では,最大停止戸数からの復旧戸数を差し引いた値を示したため不連続となっていない.また図23では,「復旧率=(復旧対象戸数-停止戸数)/復旧対象止戸数」としているため不連続となっていない.
阪神淡路大震災では、地震直後に260万戸が停電したものの、数時間後には100万戸へと、半数以上が復旧しています。
6日目までにほぼ100%まで復旧しました。
電気の復旧は1週間以内、電話は2週間、水道とガスは3ヶ月程度が全体復旧の目安期間でした。
水道、ガスの復旧が遅れる要因は、供給経路が道路の埋設管(地下)にあることにより、地盤の変形によって管路が損傷を受けた場合に、その場所を特定すること、道路を掘り返して修復することが困難であるからです。
電気や通信のような架空線の場合は、容易に復旧が可能であることは、感覚的にもわかると思います。
電信柱と電線によって街の美観が損なわれる というデメリットもありますが、災害からの復旧の面から考えると、電信柱と電線のメリットもあるのです。
今年3月に発生した東日本大震災では、電気の復旧率90%になるまでに5日間を要し、それ以降95%程度の復旧率で推移し中々100%に達しませんでした。
この理由として、(1)津波等電気設備、幹線が損害をうけた。(2)地域全体で家屋建物が流失してしまった。(3)移転等によりインフラは健全だが送電できないもの。(5)原子力発電所事故による立入制限区域
等々、復旧に長期化が予想されることが挙げられます。
例えば東松島市宮戸島では、5月下旬になってようやく電線の工事が進み、6月になって一部に電気が復旧、水道の一部復旧は8月に入ってからです。
「震災の被害の地域差によってライフラインの復旧時期が大きく変わる」というのが今回の震災の特徴といえます。
未だライフラインが回復していない地域の早期回復を願います。
携帯電話の復旧状況を見てみましょう。
通信のトラフィックジャムもあったはずですが、それでも震災発生当時は半数程度の基地局で通話通信が可能でした。
このことが、多くの命を救い、また遠く離れた家族親類と連絡を取り合う手段となりえたことを示唆しています。
但し、震災発生翌日には復旧率がほぼ0になってしまいます。
震災後続く停電により、基地局のバッテリーが切れてしまったためです。
また、4月7日に発生した余震による停電でも基地局の停止により半数近くが不通となっています。
携帯電話は、その普及に伴い、重要なライフラインとなりました。 震災発生初期の段階での途絶を防ぐことができるよう、今後、さらに震災に強いシステムを構築することが求められます。
震災発生後のライフライン復旧の目安を知っておくことは、震災のための備蓄品の量を決定するための重要な手段となります。
今後、さらに詳細な分析がなされていき、データが発表されていくはずですので、留意し活用していくことが大切といえましょう。