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水道が都市の動脈であるのならば、下水道は静脈に喩えられます。
静脈が生物の各組織が排出した老廃物や二酸化炭素を肺や腎臓に送るのと同様に、人間の生活や産業活動で生じたさまざまな排出物を処理施設に送り、水を浄化させます。
汚水を浄化する工程では、汚れが分離されるわけですから、当然、汚れを集めた「汚泥」が溜まっていきます。
それを脱水処理したり、焼却したりして、濃縮したうえ様々な利用をしています。
下水道の汚泥というと、単なる産業廃棄物のように思えるかもしれませんが、そんなことは無く
下水汚泥の約40%はセメントの原料として
2割強はタイルやレンガなどの建築資材として
1割強が肥料などの原料として活用され、実に8割程度が再利用されて、その売却益は自治体の収入として還元されています。
ところが、福島第一原子力発電所の事故以来、濃縮汚泥から高濃度の放射性物質が検出されるようになりました。
広範囲に撒き散らされた放射性物質が、下水道を通して集められたのでしょう。
下水道の汚泥は、今後再利用され自治体の収入源になるどころか、莫大な放射性物質処理費用がかり、廃棄する目処すら立たない厄介者になってしまいました。
さらに、高濃度に濃縮された放射性物質により、下水道水処理施設で働く方々への放射線の影響が心配されます。
東京都下水道局では各水再生センター及びスラッジプラントの脱水汚泥及び汚泥焼却灰に含まれる放射能の詳細な測定結果並びに施設周辺の空間放射線量の測定結果を公表していますので、どのくらいの値が出ているかを見てみましょう。
■放射能量測定結果
脱水汚泥 試料採取日 平成23年5月10日~12日 単位:Bq/kg
施 設 名 | 放射性ヨウ素131 | 放射性セシウム134 | 放射性セシウム137 |
東部スラッジプラント 江東区新砂) | 110 | 6,700 | 7,700 |
葛西水再生センター(江戸川区臨海町) | 不検出 | 22,000 | 24,000 |
みやぎ水再生センター(足立区宮城) | 不検出 | 6,800 | 7,500 |
新河岸水再生センター(板橋区新河岸) | 不検出 | 5,400 | 6,200 |
南部スラッジプラント(大田区城南島) | 不検出 | 4,900 | 5,600 |
北多摩一号水再生センター(府中市小柳町) | 不検出 | 5,300 | 4,600 |
南多摩水再生センター(稲城市大丸) | 不検出 | 1,200 | 1,100 |
北多摩二号水再生センター(国立市泉) | 不検出 | 7,800 | 7,000 |
浅川水再生センター(日野市石田) | 不検出 | 2,000 | 1,800 |
多摩川上流水再生センター(昭島市宮沢町) | 不検出 | 2,500 | 2,000 |
八王子水再生センター(八王子市小宮町) | 不検出 | 2,500 | 2,200 |
清瀬水再生センター(清瀬市下宿) | 100 | 1,500 | 1,400 |
東京の北東部ではかなり高い数値が出ています。
3月には、170,000 Bq/kg などという数値もありました。
福島県内の処理場では恒常的に 50万 Bq/kg 程度の数値が出ています。
ちなみに、2009年の全国水準は 65 Bq/kg 程度。単位が 1万倍のオーダーで推移しています。
このような高濃度の汚泥を扱う施設で仕事をする職員も大変です。
下水処理施設内では、当然に高い放射線量に曝されています。
例えば、東京都大田区の下水処理施設 南部スラッジプラント内の空気中から、毎時約2.7マイクロ・シーベルトの放射線量が検出されています。
これは、計画的避難区域の福島県飯舘村の放射線量と同程度です。
「放射線管理区域」に指定、核燃料処理施設並みの体制を取っている処理場も出てきました。
政府 汚泥処理の方針を発表東日本を中心にした各地の下水処理施設の汚泥などから放射性物質が相次いで検出されている問題で、政府は、濃度が1キログラム当たり8000ベクレル以下の比較的低濃度なものは、防水対策をとれば、居住などに利用しない場合に限り埋め立て処分ができるなどとする方針を正式に発表しました。
この問題は、東北や関東など東日本を中心にした広い範囲にある各地の下水処理施設の汚泥などから放射性物質が相次いで検出されているもので、政府の原子力災害対策本部は16日夕方、当面の方針を発表しました。
それによりますと、汚泥を焼却や溶融処理する際は、排気から放射性物質が外部に放出しないよう、フィルターなどを備えた処理施設を使うとしています。そのうえで、いずれも濃度が1キログラム当たりで10万ベクレルを超えるものは、コンクリートなどで遮蔽できる施設で厳重に保管するとしていますが、最終的な処分方法は引き続き検討するとしています。
一方、8000ベクレルを超え、10万ベクレル以下のものは、周辺の住民が受ける放射線量を年間10マイクロシーベルト以下に抑える対策を行ったうえで、廃棄物処分場に埋め立て処分もできるとしています。
さらに、8000ベクレル以下の比較的低濃度なものは、防水対策をとれば、居住などに利用しない場所では埋め立て処分ができるなどとしています。政府は、この方針を福島県や東京都など、合わせて13の都と県に、16日、通知しました。政府が処分方針をまとめたことについて、政府と東京電力で作る統合対策室の事務局長を務める細野総理大臣補佐官は、「原子力発電所の外で見つかる放射性物質については、対応の根拠となる法律がなく、さまざまな問題が起こりうる。自治体が中心となって、管理できる上下水道の汚泥について、できるだけ安全な方法を提示した。今後も問題が発生すれば、一つ一つ丁寧に対応していく」と述べました。
そのうえで「完璧かと言われると、いろいろ意見があると思うが、これなら周辺住民や作業をする人に健康被害を与えないだろうと、原子力安全委員会と話し合って決めた。今、日本が置かれている状況からすると、私は適切だと考えている」と述べました。
(NHK 6月16日)
このような処理方針で大丈夫でしょうか。
根本的に基準が適切なものかどうかと言う論議儀がされていません。
また、8千ベクレル/kgを超える大量の汚泥を年間10マイクロシーベルト以下に抑える対策を行ったうえで、廃棄物処分場に埋立て続けるということが、埋立て場所の確保、周辺住民等の理解を得られたうえで可能なものかどうか、よく検証していただきたいものです。