住宅再建か景観保全か

宮城県沿岸部の中で、日本三景・松島の湾内は海上に点在する島々によって津波のエネルギーが受け止められ、その分被害が軽減されたと言われています。

そのために、松島は、だいぶ島の形が変わってしまいました。

松島のホテルの中は、既に営業しはじめているものもあり、松島観光船も営業を再開する準備に入っています。

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私たちが宿泊したホテルも、松島のホテルです。
しかし、宿泊客は災害復旧関係者、ボランティアばかり。

街では、観光客に足を運んで欲しいそうです。
しかし、全体的な大震災復興の道筋が見えない中、また余震が続く中ではなかなか観光客の出足は伸びそうにありません。

地域でお金を消費するということも復興支援の一つだと思うのですが・・・・

4月11日の夜、大きな余震があったため、東北自動車道が通行止めになり、南三陸・気仙沼方面に行っていた東京宗務所の皆様が帰れなくなり、急遽私たちと同じホテルに宿泊することとなりました。
再び情報交換をすることもできました。
炊き出しを行ってきた避難所では、これまで炊き出しが行われたことが無く、大変に歓迎されたそうです。
避難所による格差は大きく、物資面だけをとってみれば食べ物も物資も届いている場所もあれば、最低限の食料すら届かない場所もある(避難所格差)ようで、必要なところに必要なものが届くための体制作りが早急に必要なようです。
そのようなことがようやくわかり始めてきた段階なのでしょうか。

昨日のブログ記事に書いたとおり、寺院・僧侶はそれぞれが地域に根付いたそれぞれのネットワークを持っています。
寺院・僧侶の持つネットワークは、行政の手の行き届かない部分を埋める重要な役割を果たします。 


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早朝の松島(4月12日)。
実に美しい光景です。


追記

この美しい松島も、「住宅再建」か「景観保全」かという難しい問題に直面しています。


東日本大震災の津波被害からの復興をめぐり、日本三景の一つ「松島」が揺れている。
津波から身を守るため高台への移転を求める地元の要望に、国宝級の美しい景観を守るための法規制が立ちはだかる。
住宅再建か、景観保全か。担当の文化庁は簡単には判断できずにいる。

■被災住民「安全な高台に家」
「同じところに家は建てたくない」
「松島」の一つ、桂島(宮城県塩釜市)でノリ養殖業を営むUさん(52)はため息をついた。Uさんが約8年前、約1500万円かけてリフォームした2階建ての住宅は、津波で流された。浜辺近くの約5千万円のノリ乾燥施設も失った。それでも、養殖を続けたい。「この年でほかに働く場所はない。行く場所もない」
桂島では華のうち、50戸が全半壊した。被災者の多くは漁業を続けるため、より安全な近くの高台に移りたいが、希望は簡単にかないそうもない。
同島を含む周辺1万2600ヘクタールは、国の特別名勝「松島」に指定されているからだ。
地区内は文化財保護法に基づき、文化庁の指導で県が作る県保存管理計画で7段階に分けて建設を制限。
76ヘクタールの桂島の高台の多くは、建造物の新築が認められていない「特別保護地区」と「1A地区」だ。
高台は規制の壁で新築できない。低地は津波の心配がある。このジレンマに被災者は悩んでいる。
松島全体の被害の全容はまだ分かっていないが、「奥松島」の名で知られる同県東松島市の宮戸島も壊滅的な被害を受けた。人口約1千人。13日現在でも半数が避難生活を続けている。
外洋に画した四つの浜は夏には海水浴客でにぎわい、民宿で生計を立てる住民も多い。ここでも「安全な高台に建てたい」との希望が目立つ。
地元の村井嘉浩知事は規制緩和に動き出した。
先月30日の県災害対策本部会議で、阿久津幸彦・内閣府政務官に建築規制の緩和を要求した。
県が期待を寄せるのは文化財保護法125条4「非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない」 県側は、この例外規定を家屋に適用して「弾力的な運用を」と求める。
ただ、松林と切り立った岩肌の景観が失われると、中長期的には観光産業がダメージを受けかねない。指定区域内の自治体関係者の一人は懸念する。「いったん規制を緩めれば、収拾がつかなくなる恐れがある」

■文化庁「世代超えた宝だ」
被害調査で現地入りしている文化庁の本中真主任調査官は13日、同県塩釜市の渡辺誠一郎教育部長と会談した。前日の東松島市と同様、「規制」についての議
論は平行線をたどった。渡辺部長「復興にとって規制は大きな課題。保護と復興を調和させる選択肢を示してほしい」
本中調査官「住んでいる方がまず大事だが、特別名勝の価値を守ることを前提とした計画をまとめていただきたい」
被災地の「復興優先」の声に文化財保護の必要性の訴えがかき消されることを同庁は懸念する。
(朝日新聞2011/4/14)


非常に難しい問題です。
地元住民にとっては、より安全な場所に住居を構えたいということは当然の心情でしょう。
しかし、松島は日本を代表する名勝地です。
そこに無秩序に住宅が立ち並んでしまったら、松島の価値が失われます。
後世に文化財を残すことも私たちの大切な役割です。
この論議は、慎重に審議されていく必要があるでしょう。

投稿者: kameno 日時: 2011年4月13日 14:45

コメント: 住宅再建か景観保全か

大震災復興ボランティアご苦労様です。

国は阪神大震災後、地理情報システムを構築して「電子国土」を立ち上げているはずです。国土地理院では既に1/2500レベルの「基盤地図情報」として仙台も、石巻もあります。また1/2.5万レベルでは全国が整備されているはずです。(紙の地形図の印刷は止めてまで作ったのに!?)しかし政府機関がこれらの情報をどの様にして活用しているのかが見えてこないのが現状です。
テレビ画面などで見る限り、役場等で活躍しているのは紙地図の管内図やゼンリンの住宅地図の様です。早急にせっかく作った「電子国土」の地図情報を活用して状況の把握を地図上で可視化してもらいたいものです。

投稿者 ハマちゃん | 2011年4月13日 18:15

ハマちゃんさま
例えば電子国土+GPSを活用して+モバイル端末を使って震災前後の状況をその場で把握できると被災地復興の一つの大きな原動力になると思います。
折角構築したシステムを、こういう時にこそ運用できるようにして欲しいですね。

投稿者 kameno | 2011年4月14日 07:26

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