ハマグリ調査から食を考える

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雛祭りにちらし寿司と潮汁をいただきました。

潮汁に欠かせないハマグリ。
ここ数年、近所のスーパーに並んでいるハマグリは小さいものが多くしかも高価です。
大きなハマグリは貴重です。
今年は大船駅前商店街の鮮魚店で伊勢湾産の大きなハマグリを購入することが出来ました。


店頭に並ぶ蛤を継続的に広く調査すると、環境問題も見えてきます。
昨日回ってきたメーリングリストに「日韓共同干潟調査団ハマグリプロジェクトチーム」と「アジアの浅瀬と干潟を守る会」によるハマグリ調査協力依頼がありました。
このプロジェクトチームでは2005年から毎年、雛祭りの時期にハマグリの店頭調査を行なっています。


私たちは,雛祭りの時期に,国産ハマグリと輸入ハマグリの流通・消費状況を調べ,
商品名・産地表示の適正さも調査しています.
以下の要領で,調査に御協力いただければ幸いです.
調査日は,3月3日前後の,いつでもけっこうです。

必要最低限の情報:
調査日,調査地,店舗名,標準和名(種の名前),商品名,産地表示,100gあたり
の価格(もしくはパック価格:個数と価格),調査者

標準和名(種の名前)が分からない場合は不明でけっこうですが,写真がある場合は
同定致します.

凡例
2008年3月3日
神奈川県藤沢市鵠沼海岸,相鉄ローゼン鵠沼店
シナハマグリ,はまぐり,中国産,93円/100g,1パック 360g/15個
チョウセンハマグリ,はまぐり,茨城県産,g値段表示なし,1パック 580円
(本体552円)/1個
調査者:山下博由

協力していただける方は,以上のような情報を
wildsea**almond.ocn.ne.jp 山下宛て送って下さい. 注)**は@に書き換えて下さい。



ということで、早速協力させていただきました。


蛤は古来から食材としてのみならず、平安時代に流行した貝合せの遊びや、碁石としても利用されており、日本文化に根付いています。
日本各地の砂浜や干潟で広く収穫される身近な存在だったのです。
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(図は「沈黙の干潟―ハマグリを通して見るアジアの海と食の未来―」日韓共同干潟調査団ハマグリプロジェクトチームより)


しかし、高度経済成長期における海岸の開発、干潟の現象により、蛤の漁獲量は減少の一途を辿っています。

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(図は「沈黙の干潟―ハマグリを通して見るアジアの海と食の未来―」日韓共同干潟調査団ハマグリプロジェクトチームより)



戦後まもなく1947年には3万トンを超えていた漁獲量は、1980年には2千トン、2000年には2千トンも割り込んでいます。
ここまで減少すると「不可逆的な減少のサイクル」に入ってしまい、絶滅への道を辿ってしまうようです。
残念ながら、これが日本のハマグリの現実です。

そうなると、ハマグリを海外から求めることになります。
日本では主に朝鮮半島や中国から大量のハマグリを輸入するようになりました。
現在では、流通するハマグリの90 %以上が外国産となっています。

鮮魚店やスーパーでは雛祭りの直前に大量のハマグリを仕入れ、雛祭りキャンペーンを行っています。
見かけ上、潤沢なハマグリが供給されているように見えます。

 

店頭に並ぶほとんどは外国産に成り代わり、そういった「食材の種」が変わっていることになかなか気付きません。
しかし、その裏側には副次的に引き起こされる自然の荒廃があるということを知っておく必要があるでしょう。

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(図は「沈黙の干潟―ハマグリを通して見るアジアの海と食の未来―」日韓共同干潟調査団ハマグリプロジェクトチームより)

日本のハマグリは一様に個体群の規模が小さくなり、存続に危機的な状況にあるといえます。
また、個体数を確保するために行われている外来種の蓄養や放流も在来種への影響が懸念される事項です。
その意味で、日本のハマグリは先日のブログ記事に書いた「限界集落」の状態に陥っているといえます。
その状況が日本からアジア各国に広がっています。

 

このような問題はハマグリだけではありません。
ハマグリ調査を窓口として、様々な問題が見えてきます。

 

功の多少を計り 彼の来処を量る」(食事の前にお唱えする「五観の偈」より)
この一椀の食物は、たとえ一粒のお米、一茎の菜といえども、それが耕作され、種蒔かれて・・と限りない人々の手を経て、いま自分に与えられていることを思い、感謝していただきましょう・・・・

食材がどのように作られ、食卓に運ばれてきたのか、思いを巡らしながら食事をいただくことも大切なことだといえます。

 

はまぐりの ふたみに 分かれ行く秋ぞ
『奥の細道』大団円

いつまでもハマグリをいただくことができますように。

投稿者: kameno 日時: 2011年3月 4日 10:13

コメント: ハマグリ調査から食を考える

30年程前地形図作成作業で九州は宮崎県日向市に行った折海辺の街で「ハマグリ」を囲碁に使う白の碁石用に貝殻を丸くくり抜いた後の「殻」を見た事を思い出します。

日向市で現在一般的に作られている碁石はプラスチィックが主流だそうですが、高級品はこの日向・小倉ヶ浜産の”ハマグリ碁石”だったそうです。今では日向市でも「ハマグリ」は採れなくなり、今使われている「ハマグリ」はメキシコ産の貝を貝から抜き取って送ってくる物を加工して、貝の抜き取り作業は行なわれていないそうです。

投稿者 ハマちゃん | 2011年3月 5日 16:39

ハマちゃん様
今や日向特産のハマグリ碁石は数百万、数千万円するものもあるようで、まさに幻となってしまいました。
一度失われてしまった資源は、いくら稚貝を放流しても戻すことは困難であるということを知っておく必要がありますね。

投稿者 kameno | 2011年3月 5日 23:18

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