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娑羅双樹について考えてみます。
お釈迦様の入滅の様子は涅槃経で記述されていますが、例えば曹洞宗でよく読まれる『仏垂般涅槃略説教誡教』(遺教経)では次のようになっています。
応に度すべき所の者は、皆已に度し訖って、沙羅双樹の間に於いて、将に涅槃に入りたまわんとす。
『仏垂般涅槃略説教誡教』
この表現から受けるイメージはどういう感じでしょうか。
「双樹の間」という表現から、頭と足先に一本づつ、2本の木の間でお釈迦様は横になられたと感じるかもしれませんね。
実際に曹洞宗の公式サイトでは、曹洞宗の年中行事>涅槃会 の項目に
お釈迦さまは2本のサーラ樹の間に用意された床で、頭を北に、顔を西に向け、右手を枕にされて寝ておられます。
(曹洞宗公式サイトより一部引用)
と説明されています。
しかし、同じページにある涅槃図には8本の娑羅双樹が描かれています。
なぜこのようなことが起きるのかを考えてみましょう。
娑羅双樹は、仏教の三大聖樹
(1)無憂樹 (マメ科):釈尊降誕の場所にあった木
(2)印度菩提樹 (クワ科):釈尊成道の場所にあった木
(3)娑羅双樹 (フタバガキ科):釈尊入滅の所にあった木
のうちの一です。
サラノキは釈尊入滅の場所の東西南北に各々2株のこの木があったので沙羅双樹といわれる。
『標準原色図鑑全集・樹木』(保育社・昭和41年)
などをみると「東西南北に各々2株」の様子から漢字の双樹をあてたと説明されています。
したがって、涅槃図の娑羅双樹は2対4組の8本であるし、一本の娑羅双樹の木でも娑羅「双樹」ということになります。
日本最古とされる平安時代の涅槃図でも8本の娑羅双樹が描かれています。
先の、曹洞宗公式サイトでの説明は、
お釈迦さまは2組8本の娑羅双樹の間に用意された床で、頭を北に、顔を西に向け、右手を枕にされて寝ておられます。
としたほうが判りやすいように感じます。
補足
※日本ではナツツバキ(夏椿、学名:Stewartia pseudocamellia)が娑羅双樹の代わりにされていますがフタバガキ科のサラソウジュ(沙羅双樹、娑羅双樹、さらそうじゅ、しゃらそうじゅ、学名:Shorea robusta)とは全く別の木です。