赤は色落ちしやすい

暑い日が続きます。
貞昌院駐車場のノウゼンカズラは太陽の光をいっぱいに浴びて元気に育っています。
もう花のピークは終わりましたが、残りの花が鮮やかに輝いています。
空も抜けるような青さですね。
(なぜ空が青く見えるのか、その理由も今日の記事と関連性があります)

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太陽光のエネルギーはとても大きく、地表に降り注ぐ光エネルギーを電気に換算すると1m2当たり約1kwになります。 実に大きなエネルギーですね。

掲示板に張っておいた印刷物も1か月でご覧のとおり。駐車場に設置している屋外トイレの表示板もすっかり赤の部分が退色してしまっています。

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ここで、改めて「赤色」は退色しやすいということを実感します。
黒や青は残っていても、赤は消えやすい傾向にあります。

それには理由があります。

太陽が放出しているエネルギーは、波長と粒子両方の性質で構成される電磁波です。
その波長は下図のような連続スペクトルの構成となっていてこのうち、人間の目に見える領域(波長380nm~780nm)が可視光線領域と呼ばれる部分です。

solar_irradiance 
(図はWikiペディア「太陽光」項より)


可視光線領域は波長の長い順(下図の右から左方向)に赤・橙・黄・緑・青・藍・青紫となり、青紫よりも波長が短い領域が紫外線(UV)、波長が長い領域が赤外線となります。

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私たちが物を視覚的に認知するということは、(それ自身が光っているものを除いて)物体に光が当たって、その反射される光を認知するということになります。
物の性質によって反射される光の周波数が異なりますから様々な色調に見える訳です。
「赤く」見えるということは、その物体が赤い色を反射し、それ以外の波長、例えば紫や青の光を吸収する傾向にあるということです。

また、光は波長が短いほどエネルギーが大きくなります。
紫外線が強いエネルギーを持つというのはそのような理由です。逆に赤い光は波長が長くエネルギーが低い電磁波(光)です。


赤い物体は、エネルギーの低い電磁波を反射し、エネルギーの高い紫や青の電磁波を吸収する性質にあるために、その強いエネルギーのために分子構造が壊されてしまい、色が抜けてしまうというわけです。

赤が退色しやすいというのはそのような理由です。

オランダの国旗は、元来オランダのユニオンカラーである「オレンジ色」が使われていましたが、退色しやすく、日光に弱いためにより濃い赤に変更されました。
それだけシビアな問題なのです。

 

■蛇足ですが日本の国旗の「赤い丸」は過酷な環境でも比較的退色しにくいアゾ色素が利用されています。
CD-RやDVD-Rにもアゾ色素が使われていますね。
赤い色を使う際には、退色の影響を受けやすいということを考慮して用いることが必要となります。

 

■さらに蛇足

長く保存したい赤(朱色)といえば、印鑑の印影がありますね。
最近は染料インキをスポンジに染込ませたもので印鑑を押すことが多くなっていますが、今日の記事のとおり日光に曝すと印影が消えてしまうことがあります。
重要な書類などの場合は大問題です。

従って重要な書類や落款などには「朱肉」を用いるべきです。
朱肉の原料、辰砂は硫化水銀(HgS)からなる鉱物で、丹砂、朱砂、水銀朱などがあります。「丹(に)」とも呼ばれます。
古来は天然の辰砂を使っていましたが、現在では水銀と硫黄から合成した硫化水銀に松脂、櫨蠟、 ひまし油などを混合して朱肉が作られます。
朱肉の印影は重厚な味わいがあり、何万年もの経年変化も殆ど無い安定した性質があり、偽造される危険性も少なくなります。


■関連ブログ記事

結界をなす朱の意味

投稿者: kameno 日時: 2010年8月 4日 08:25

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