クロマグロ国際取引の禁止を

今月22日開かれる欧州連合(EU)漁業相理事会において地中海と大西洋のクロマグロについて国際取引の禁止についての合意がなされる見通しとなりました。
クロマグロの国際取引禁止は昨年モナコが提案していましたが、スペインやギリシャ、フランス、イタリアなど漁業国の反対で否決。
ところが、今回はフランス、イタリアが支持に回ったことで、ヨーロッパ諸国の多くは取引禁止の流れとなりそうです。
EUでの取引禁止が決れば、来月カタールで開かれるワシントン条約締約国会議でクロマグロについて審議・採決されることになるはずです。


ここで、日本はどのような対応をとるのでしょうか。
恐らく、「国際取引の禁止」に強硬に反対していくことでしょう。


しかし、果たしてそれが得策なのかを考えるに、寧ろ、逆にここで日本は一旦引いて「クロマグロの国際取引禁止」に賛成し、むしろ提起主導して欲しいと思っています。


では、なぜ「国際取引の禁止」が日本にとって得策だと思うのか。
その理由を列記してみます。


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マグロの日本国内における消費は実に年に50万トン以上となります。
日本は世界の総漁獲量のほぼ25%を消費しており、うち輸入量は30万トンとなっています。
特に、クロマグロは8割近く、ミナミマグロに至っては、ほぼ全量が日本で消費されています。

例えば、東大西洋クロマグロは、漁獲可能量が約2万tに削減されたにも拘わらず、実際は違法・無報告・無規制を含めて5万t以上が漁獲されています。
もちろん、その殆どが日本向けに輸出されています。
つまり、資源の枯渇をまねく上に、地中海諸国の違法漁業者の私腹を肥やすことになっています。


また、地中海における畜養も問題です。畜養とは若いマグロを捕まえて、生簀で成長させてから輸出することです。
比較的価格が安くなるため、一皿○○円といった回転寿司やスーパーの刺身でクロマグロがあるとすれば、ほとんど輸入の畜養マグロでしょう。
この蓄養マグロが、マグロのロンダリングに利用されているという状況もあります。


ここ十数年、マグロの小売価格は上がるどころか急激に下がっています。
マグロが日本の伝統食という話がありますが、そもそもマグロはそれほど気軽に食べられる食材ではなかったはずです。
少なくとも誰もが回転寿司で気軽に腹一杯食べられるということは、ほんの最近の現象です。


マグロ小売価格の低下は、消費者にとっては一見嬉しいことのように感じますが、日本の漁業関係者にとってみれば死活問題です。
さらに原油価格高騰が加われば、廃業に追い込まれてしまいます。

実際に、これまで水産庁は国際的な漁獲規制を受け、国内マグロ延縄漁船の減船を実施してきました。
漁獲量が減ればマグロの値段は上がり、マグロ漁業会社の経営も好転するように思えますが、実際は輸入マグロの増加で魚価は下がり、原油価格の高騰が加わり漁業会社の経営環境が相当厳しさを増しています。

さて、理由がほぼ出揃ったところで話を戻します。
日本は今回は「クロマグロの国際取引の禁止」に反対するべきではないと考えます。

 

・フランス、イタリア、スペイン、ギリシャの漁業、畜養業者はかなりの数が立ち行かなくなり、廃業に追い込まれるでしょう。結局、地中海の一部の国は反対を明確に打出せるでしょうが、ほとんどの国は、自国の漁師や畜養業者の権益を守るために、そして貴重な輸出資源を失いたくないために結局賛成できない国が大多数ではないかと想像します。


・仮にクロマグロの国際取引が禁止されたとします。その場合、自国の漁師や畜養業者の不満の矛先はEU内の国々に向けられ、自ずと「クロマグロの国際取引の禁止」の「撤廃」を求めてくることでしょう。

日本はそれを傍観していれば良いのです。
 

・日本にとってはクロマグロの輸入が出来なくなることによって、クロマグロは身近な食材でなくなるかもしれません。しかし、クロマグロは高級食材で良いのです。元元そうでしたから。日本の漁業会社にとっては追い風になるでしょう。


・国際取引を禁止するからには、それを厳格に適用することを国際的に求める必要があります。中国などの新興国でマグロの需要が高まっているからといって、それらの国への違法輸入がなされないようにしていくことが大切です。


・また、クロマグロの日本沿岸での畜養、ひいては卵からの完全養殖など海洋資源の自給自足のための取組みを強化していくことが将来に向けて必要です。特に完全養殖は日本独自の技術です。
これだけのビジネスチャンスはありません。
 

一旦このように引いてみることによって、数年後にマグロを取り巻く環境がまた変ってくることでしょう。
強硬に日本の理論を貫いて国際世論から孤立することも得策ではありません。


(※右上のグラフは河北新報作成のものを引用しました。)


 
日本をとりまく捕鯨環境もかなり厳しい状況にあります。
そのような中、昨年2009年のIWC総会では、議長より日本と反捕鯨国双方に譲歩を求める次のような妥協案が検討されました。

・日本の沿岸捕鯨に関しては、向こう5年間に和歌山県太地町、北海道網走市、宮城県石巻市、千葉県南房総市の4カ所の捕鯨基地からの小型沿岸捕鯨に限り、地域内での鯨肉消費という条件付きで認める。
・南極海での調査捕鯨に関しては向こう5年間で段階的に縮小、あるいは捕獲枠を定めた上で継続。

この案を日本政府は受け入れませんでした。
けれども、日本の伝統文化としての捕鯨を継続するということ、外交上の軋轢を無くすことという面では、個人的にはこの提案を受け入れるべきであったと感じます。


日本の主張するように鯨が順調に増え続けているのなら、数年経過すればそれがハッキリします。
また、鯨の数が増えればオキアミなどが鯨により消費されかえって資源が枯渇化するのだという日本の主張も明示できるでしょう。

「捕鯨のための」調査捕鯨を続けているという現状と比較して、上記妥協案のほうがどれだけ日本の国益に寄与するか計り知れません。


補足ですが、環境テロ団体シー・シェパードの行為は断じて許される話ではありません。これはこれでまた次元の異なった話です。
なお、シーシェパードはは、現在行なっている反捕鯨キャンペーンの後、地中海のクロマグロ漁妨害を行うそうです。
世界のクロマグロのほとんどを消費する日本を再度標的にするということです。やれやれ。



さらに蛇足ですが、「日本の」北方領土からの「ロシア産」の「蟹」についても同様です。
日本は輸入を止めるくらいの強行策をとってもよいのではないかと思います。

北方領土沿岸からの蟹を輸入している限り、北方領土は帰ってこないでしょう。
日本割当の漁業枠も不要です。

投稿者: kameno 日時: 2010年2月21日 01:00

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