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最近は、建材や内装材への化学物質の使用により、また、高気密建築の増加により建物内部に拡散する化学物質が増加していると言われます。
そのうち、人体に影響を及ぼす物質が様々な体調不良や病気の原因となることが報告されています。単一の物質だけによる影響というよりは、複合要因によるものと考えられ「シックハウス症候群」と名づけられました。
シックハウス症候群に見られる主な症状
(参考:横浜市保健所 シックハウス対策) |
厚生労働省では、ホルムアルデヒドをはじめとする次の13物質について、室内空気中濃度の指針値を示しています。
この指針値は、人がその化学物質の示された濃度以下の暴露を一生受けたとしても健康に有害な影響を受けないであろうと判断される濃度として設定されています(ただし、ホルムアルデヒドだけは短期間の暴露による健康への影響を指標としています)。
揮発性有機化合物等の室内濃度指針値
化学物質名 | 指針値 | 決定時期 | 含まれる建材等 |
ホルムアルデヒド | (0.08ppm) 100マイクログラム/m3 | 平成12年6月 | 合板・パーティクルボード |
トルエン | (0.07ppm) 260マイクログラム/m3 | 平成12年6月 | 集成材・油性ラッカー |
キシレン | (0.20ppm) 870マイクログラム/m3 | 平成12年6月 | 金属用接着剤 |
パラジクロロベンゼン | (0.04ppm) 240マイクログラム/m3 | 平成12年6月 | 芳香剤・防虫剤・トイレボール |
エチルベンゼン | (0.88ppm) 3800マイクログラム/m3 | 平成12年2月 | 油性ラッカー・油性ニス |
スチレン | (0.05ppm) 220マイクログラム/m3 | 平成12年2月 | 断熱材・スチレン畳 |
クロルピリホス 〃(小児の場合) |
(0.07ppb) 1マイクログラム/m3 (0.007ppb) 0.1マイクログラム/m3 |
平成12年2月 | シロアリ防蟻剤 |
フタル酸ジ?n?ブチル | (0.02ppm) 220マイクログラム/m3 | 平成12年2月 | ビニル壁紙の可塑剤 |
テトラデカン | (0.04ppm) 330マイクログラム/m3 | 平成13年7月 | 灯油・石油等 |
フタル酸ジ?2?エチルヘキシル | (7.6ppb) 120マイクログラム/m3 | 平成13年7月 | プラスチック可塑剤 |
ダイアジノン | (0.02ppb) 0.29マイクログラム/m3 | 平成13年7月 | 殺虫剤 |
アセトアルデヒド | (0.03ppm) 48マイクログラム/m3 | 平成14年2月 | 塩化ビニール・染料 |
フェノブカルブ | (3.8ppb) 33マイクログラム/m3 | 平成14年2月 | 殺虫剤・殺ダニ剤 |
寺院は、古来より人びとの生活の中で公益的な役割を果たしてきました。
寺院が公益法人として認知されていることは、これまでのこのような役割を受けてのことでしょう。 時代とともに、この公益性の意味は変化してきておりますが、なお、寺院には檀信徒を中心に不特定多数の一般利用者が出入りします。
寺院建築の観点からすると、基本的に床下が高く空間も広く確保されておりますので通気性も良い造りとなっています。本堂の床下に潜った際にも常にかなりの通風があることを感じます。
しかし、一昨年改修した客殿は、正座よりは椅子を希望される方も多くなっていることを受けて畳からコルク敷きに変えました。
建築工法の進展は断熱性に優れた空間を生み出してくれる半面、かつてあった通気性が損なわれてしまった面もあります。
したがって、寺院においても市町村の公共建物などに適用されているガイドラインを適用することが望ましいと考えます。
貞昌院版のガイドラインを作成してみました。
シックハウスというよりは、「シックテンプル」対策ですね。
公益施設としての寺院建築物シックハウス対策ガイドライン(貞昌院版) 第1 基本的な考え方 2 対象 3 位置づけ 第2 取組内容 (1) 使用建材等の配慮 (2) 工法の配慮と適正換気量の確保 (3) 工事施工者と十分に協議を行い、利用者等の安全に配慮します。 (4) 新たに机やいすなどの什器を購入する場合は、ホルムアルデヒド等の化学物質の放散量が少ない仕様のものを選定するよう配慮します。 2 施設管理、運営 (1) 化学物質の使用の配慮 ・身の回りの化学物質の使用に常に注意をはらう (2) 適正な換気量の確保 ・窓を2か所以上開けたり、換気扇や換気口を有効に利用することにより十分な換気を行う。 3 情報提供 補足 このガイドラインは平成21年2月3日に作成し、作成日より運用するものとします。 |
ということで以前このブログで取り上げた 公共的施設における受動喫煙防止条例 とともに運用していこうと考えています。
■関連リンク
シックハウス対策(厚生労働省医薬食品局化学物質安全対策室)
CompletIARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans (IARC)
すばらしい指針です。
和尚様の志、姿勢に拍手し、あらためて深く感謝し、合掌しています。
シックハウス症状、化学物質過敏症状に苦しむ子が増えていますが、その子らは、身をもって、今の時代の進み方に警鐘をならしてくれているのだと思います。
化学物質過敏症は、ある日ある濃度の化学物質を浴びると、その後、ふつうの人には何ともないほど濃度が低くても、あらゆる化学物質に体が反応してしまい、どこにいっても症状が出て(学校にもお寺にも行けない)、住む場所すらなくなってしまう、その人の幸せに生きる権利を奪ってしまう大変な問題で、これは他人事でなく、誰でも突然そうなる可能性があります。
すぐに症状がでなくて体に入ったことがわからなくても、アスベストのように何十年もたって癌を起こすものもありますし、「次の世代が健やかに生きられるか?」という視点を持つ責任も私たちにはあると思うのです。
使う必要の無いもの、影響が懸念されるものは使わないようにしたいものです。
それには、こうした「ガイドライン」を提示していただけるとわかりやすくて、人々が暮らし方を見直せます。
このブログが多くの方に読まれ、どこのお寺でも実施してくださることを切に願ってやみません。
本当にありがとうございました!
投稿者 ann | 2009年2月10日 09:43
annさん
化学物質が人体にどれほどの影響を与えるかということには常日頃から注意を払っておく必要がありそうですね。
必ずしも直ぐに影響が出るものではないということや、複合的な要因をもつ可能性もあるということもあり、一筋縄ではいかない問題だと思います。
少なくとも疑わしい物質を含むものは使用しないという心構えを持ちたいものです。
投稿者 kameno | 2009年2月10日 12:13