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沖縄・泡瀬干潟埋め立て開始…「暴挙」と抗議集会も
南西諸島最大の干潟とされる沖縄県沖縄市の泡瀬(あわせ)干潟(約290ヘクタール)の埋め立て事業は15日、第1区域(約96ヘクタール)の本格的な工事が始まった。
那覇地裁は昨年11月、泡瀬干潟公金支出差し止め訴訟で、県と沖縄市に将来の支出差し止めを命じ、県と市は控訴した。原告団メンバーは「埋め立ては地裁判決を無視した暴挙」と干潟近くの岸壁で抗議集会を開いた。
埋め立ては国と県が担当し、事業費は約490億円。第1区域と未着工の第2区域(約91ヘクタール)があり、埋め立て地の大部分を県と市が購入し、ホテルや商業施設を誘致して地域活性化を図る計画。
第1区域の工事は2002年に着工。希少生物の保護措置や反対住民の阻止行動で、工事は断続的に中断し、護岸整備しかできていなかった。12年度に工事完了予定で、当初計画は「第1、第2区域とも09年度完工」としていた。
この日は午前9時前に工事が始まった。干潟の北東3キロの中城湾港新港内で採取した土砂を運搬船に載せ、埋め立て地に搬送。午後からは護岸で土砂をダンプカーに積み替え、海に投じる。今後も毎年4?7月は、埋め立て地周辺で絶滅危惧(きぐ)種・トカゲハゼが産卵するため作業を中断する。
県港湾課の平良和雄・港湾開発監は「裁判は継続中で、埋め立て工事の進展に問題はない」と語った。沖縄市の東門美津子市長は「具体的な土地利用計画を早い時期に策定し、経済的合理性を説明していくことが市長としての責務と考えている」とのコメントを出した。
(2009年1月15日16時25分 読売新聞)
南西諸島最大の干潟、沖縄の泡瀬干潟の埋立て工事がついに始まってしまいました。
つい2ヶ月前に那覇地裁が泡瀬干潟公金支出差し止め訴訟で県と沖縄市に将来の支出差し止めの命令を出したばかりなのに、です。
その理由が「裁判は継続中で、埋め立て工事の進展に問題はない・・・・・・」
(これって工事強行の理由になるのでしょうか?)
「具体的な土地利用計画を早い時期に策定し・・・・・」
(まだ土地利用計画が策定されていないのでしょうか)
泡瀬干潟は下の航空写真のように沖縄本島東側沿岸にある珊瑚礁に囲まれた貴重な干潟です。
その面積は干潟が290ha、藻場が112ha。
赤土の流入も少ないため、白色の美しい干潟です。このように珊瑚礁により形成される干潟は珍しく、その海域にしかいない希少種も多数生息しています。
実は、そのすぐ北側には川田干潟もあったのですが、既に「新港地区埋立事業」により消滅してしまいました。
そればかりではありません。
川田干潟、泡瀬干潟の他にも、普天間基地の移転先候補の名護市辺野古など沖縄の自然海岸はどんどん失われつつあります。
泡瀬干潟の埋め立て計画は、コザ市と美里村が合併したところまでさかのぼる。
海のないコザ市は海を求めて合併したといっても過言ではない。
計画が現実味を帯びだしたのは、1984年に起工した新港地区埋立事業に端を発する。この事業では、埋立地に特別自由貿易地域が設置され、港湾には4万トン級の船舶が入港できるようにするため、航路を水深13mまで浚渫する計画となっている。その浚渫残土の処分が課題となり、1986年に残土処理策として泡瀬干潟の埋立構想が現実のものとなり始めた。
当初の構想では、陸続きで219haから340haの海域を埋め立てるものだったが、1989年に泡瀬復興期成会など地元の団体から海岸線と砂州を保全する要望が出て、後に埋立地を沖に出し、人工島を作る形(出島方式)での185haの埋め立てに変更される。
計画では、まず、ほとんど国がその費用を負担するかたちで埋立地が作られる(国が175ha、沖縄県が10ha分を負担)。そして埋立地のうち90haを沖縄市が購入する義務を負い、「マリンシティー泡瀬」として開発する。マリンシティー泡瀬では、ホテルやシュッピング街、情報教育の拠点、住宅地などを民間に分譲する予定になっている。
(Wikipediaより引用)
中城湾港(なかぐすくわんこう)泡瀬地区(あわせちく)埋立事業
マリンシティー泡瀬は、地元沖縄市が30年かけて計画してきた中部圏域東海岸の振興・活性化の起爆剤となるプロジェクトです。
新港地区の港湾整備から発生する土砂を有効活用して出来た人工島を、国際交流や海洋レクリエーションの拠点、地域における情報・教育・文化の拠点とすることで、新たな雇用機会の創出、活力ある地域造りなど、中部圏域の発展に寄与することが期待されています。
(内閣府)
まず、「沖縄にしかない、沖縄ならでは」の観光資源である珊瑚礁の干潟を潰して、事業採算性の全く見込みの無い「マリンシティー」を計画し、それを強行に進める国と県、そして市の姿勢に驚きを感じざるをえません。
自然環境を活かした地域の経済的発展の方向性はいくらでもあるはずです。
エコツーリズムという解決策もあります。
私がもしも計画責任者だったら、間違いなくこの方向性を打ち出すと思います。
エコツーリズムとは環境大臣を議長とした「エコツーリズム推進会議」(平成15年?平成16年)ではエコツーリズムの概念を「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた」としました。
「エコツーリズム推進法」(平成19年法律第105号)においては、「自然環境の保全」「観光振興」「地域振興」「環境教育の場としての活用」を基本理念としています。エコツーリズムとは、地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指していく仕組みです。
観光客に地域の資源を伝えることによって、地域の住民も自分たちの資源の価値を再認識し、地域の観光のオリジナリティが高まり、活性化させるだけでなく、地域のこのような一連の取り組みによって地域社会そのものが活性化されていくと考えられます。(環境省のサイトより)
一度計画決定された事業を差し止めるという勇断を行うことができない日本の公共事業制度にはつくづく情けない思いがします。
平成不況やここ数年の企業業績の悪化により、このマリンシティーに進出する企業自体がほとんど無い(数パーセント)状態です。
そもそも、この計画が頓挫した場合、責任を取るものが誰もいないということも問題です。
豊かな干潟を埋め、希少生物を壊し、観光資源を失い、そして広大な遊休地・空地を生み出す事業に合理性はまったく認められません。
これは沖縄地裁の判決の通りです。
この埋立事業の抜本的な見直しと、中城湾港泡瀬地区埋立事業の事業中止により、ふたたび豊かな干潟が回復することを切に望んでやみません。
■関連ブログ記事
失われてしまった広大な干潟
初めまして。
私は,沖縄本島に住んで生きもの写真家です。
今夜,自分のブログを更新するために必要な情報を探していて
ここへたどり着きました。
内地に住んでおられる方が真剣に沖縄の問題を取り上げている
ことに深く感激しました。
ありがたいことです。
とても心が暖かくなりました。感謝。
投稿者 とんとんみー通信 | 2009年4月 9日 22:12
とんとんみー通信さま
コメントありがとうございます。
美しい写真がたくさんあるサイトですね。写真のもつ説得力は大きいです。
豊かな海が不必要な事業により失われることが本当に残念でなりません。
うちなーも内地も関係なく、草の根的に声を広げていくしかないのでしょう。これからもよろしくお願いいたします。
投稿者 kameno | 2009年4月10日 06:04