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貞昌院大施餓鬼会
『1000年悠久の調べ ?正倉院復元楽器(五弦琵琶・笙・横笛・拜簫・壎)?』演奏会のお知らせ
7月26日(土)貞昌院大施餓鬼会法要に際し、正倉院復元五弦琵琶ほか、正倉院に伝わる楽器および楽譜を再現した演奏会を開催いたします。
演奏されるのは、この楽器と楽譜を復元された 劉宏軍(リュウ・ホンジュン)氏と、中国琵琶奏者 邵容(シャオ・ロン)さんです。
貞昌院施餓鬼会法要特別演奏会
『1000年悠久の調べ』演奏会
日時 7月26日(土曜日) 午後1時30分より2時40分まで
場所 貞昌院本堂 横浜市港南区上永谷5?1?3 市営地下鉄上永谷徒歩5分
【演奏者】
■劉宏軍/リュウ・ホンジュン
中国遼寧省大連に生まれ。国立中国歌劇舞劇院管弦楽隊に入り、フルート首席奏者などを務める。1980年の来日以来、中国民族音楽の研究・演奏・作曲活動を行う。NHKテレビ「シルクロード遥かなる調べ」、映画「ラストエンペラー」の作曲・演奏を坂本龍一とともに担当。また、アジア諸国、太平洋諸島の民族音楽の調査・研究・復元に情熱を傾けている。単に作曲、演奏にとどまらず、深い文献、現地調査に労を費やしている。現在最も情熱を傾けているのは、文献に則り正倉院所蔵の多くの楽器を純正に復元するとともに、古代楽譜の訳譜を用いて、自身の主宰する「天平楽府」を率いて、遥かなるシルクロードの音楽、そして天平と平安の調べを現代に蘇らせる仕事である。また、西洋楽器を用いた作曲活動にも旺盛な意欲を見せている。第24回伝統文化ポーラ寅・国際賞を受賞。
■邵容/シャオ・ロン
上海市出身 国立北京中央音楽院卒業
人間国宝級の大家である劉徳海教授に師事。東京を拠点にアジアおよび欧米各地でコンサートや国際音楽祭での演奏など世界的に活躍する中国琵琶の若手女流奏者。 中国琵琶独特の輪指(りんし)と呼ばれる奏法を駆使したシャオ・ロンの繊細かつドラマチックな表現力と 緩急自在で華麗な演奏は世界中の人々を魅了している。劇団四季「マダム・バタフライ」公演に出演、注目を浴びる。「天平楽府」(奈良正倉院所蔵の国宝級古代楽器の復元楽器によるアンサンブル)のメンバーとして現存する1200年前の五絃琵琶(復元)奏者で活躍。以後、日本フィル、札幌交響楽団、ルーマニア交響楽団、大阪シンフォニカー、中国国立交響楽団と共演の他パシフィック・ミュージック・フェスティバル、サントリーホール主催「ミュージック・トゥデイ21?音楽の現在」に出演。東京を拠点に、アジア及び欧米各地で国際派中国琵琶奏者として活躍する一方、女子十二楽坊プラティアアカデミー中国古典楽器スクールの主任講師を務めるなど、後進の指導にも携わっている。
【五弦琵琶・ごげんびわ】
正倉院存庫の五弦琵琶は、現存するものとしては世界唯一のもの。四弦琵琶と比較して頭部が屈曲しないでまっすぐにのび、胴の幅が狭く、厚みがあるのが特徴。
表面の(ばち)があたる部分には亀甲が使われ、螺鈿(らでん)細工で西域の人物が駱駝にのり、四絃琵琶を奏でる図に、熱帯樹と五羽の飛鳥を配している。
背面の槽(そう)は紫檀(したん)で作られ螺鈿細工で上下二つの大宝相華文(だいほうそうげもん)と二羽の含綬鳥(がんじゅちょう)と飛雲を配した華麗な琵琶である。
【拜簫・はいしょう】
遥か西域、敦煌莫高窟の二二〇窟に初唐時代に描かれた「薬師浄土変相図」がある。
この浄土変相図の北側壁面部分に一三人の伎楽天が色々な楽器を奏でている姿が描かれている。その中に竹管を並列にした楽器を口元で吹いている人物像あり、これが拜簫という楽器といわれている。
古代中国の時代からこの拜簫にはさまざまな言い伝えがあり、その形は鳳凰の翼からとったものとされ、「簫韶九成せば、鳳凰来儀す」ともいわれ、神を祀る楽器とされていた。
また、古代の人が竹林に風が吹くと、折れた竹から音色が鳴り響いたのを聞き、考え出された楽器ともいう。
正倉院には、奈良時代に唐から渡って来たと思われる拜簫が、「甘竹簫」という名で献物帳に記載されている。
完全な形体ではないが保存されていて、研究の結果、吹き口をU字型に削り、一八本の竹管が長短、順序よく並列していたとされ、竹管の底には詰め物があり、簫の中でも底簫といわれる部類に属すると発表されている。
【壎・つちぶえ】
古代の土笛大地の「土」を源として音を醸す素朴な笛は、石器時代から縄文・弥生時代の日本の遺跡で散見されるほか、中国、古代ギリシャ、メソポタミア、南米ペルーやボリビアなど世界各地で出土している。
これらはケン、朝鮮ではフン 中国では クン、カンと呼ばれ、穴は1?6個で主に卵型をしている。中国や朝鮮で雅楽器として使われたものは下部が膨らんだ形状となっている。
そのほか 【笙】【シュン】【バーウ】などの楽器をご紹介いたします。
参考:東京都建設局のサイト
◆忘れられた人類の貴重な文化財『五弦琴譜」(五弦楽譜・重要文化財)
千何百年前の音楽の演奏譜である「五絃琵琶譜」が、京都右京区の陽明文庫に完全保存されているということは、現代の我々音楽に携わる者にとって非常に驚くべきことであり、またそれを先般実際に目にし得たということは、全く夢のような出来事でした。
この近衛家伝世の楽譜の内容はすべて古代の作品群で、平安時代に唐の古い楽譜より写本されたものと思われます。
書体の特徴は、世界に知られている五代(西暦970?960)頃の「敦煌琵琶譜」よりもっと古い書体と思われます。
この「五絃琵琶譜」は、当時の東アジアの各民族の音楽が多数含まれ非常に国際性に富んだ内容で全部で28曲を確認することができます。この膨大な曲集は現代の我々の感性に呼応する珠玉の名曲集と呼ぶにふさわしい貴重な宝物です。
これらの古代楽譜はいわば“天授の書”と言えますが、これら敦煌琵琶譜や五絃琵琶譜は今日の五線譜楽譜に比べみますと、いわば不完全な楽譜です。
従ってその演奏の為の五線譜への訳譜は至難の業となります。音の高さやリズムの決まり、演奏法のメモ等が克明には書かれてはいないのです。
笙や笛、拜簫などの古楽譜は指位譜と言いますが、リズムは別にしても音の高さの解読はできません。けれども、琵琶の楽譜は音楽の調性により調弦の方法も何種類かあり、考え方が自在で、多くの諸先輩、音楽史家、音楽家たちが、活発にこの解読に挑戦し、その幻とも言える音響世界の究明のために、たゆまぬ研究を行ってきました。
しかしながら、遠い音の演奏楽譜は算術学様式の結論を出すのはおそらく無理であろうし、多くの学説、論文が存在しますが、理想的と思われるような仕様は見つからず、これからもこの探求は続くものと思いますし、私もそのつもりでおります。林謙三先生、葉棟教授、何昌林教授の三人の先生方の研究成果を助言として捉え私の音楽解釈の中に生かし、おおいに参考にさせて頂きました。
古代楽譜の解読、訳譜は各学者によって自在でありますが、例えば七絃琴譜の解読は譜字の内容として演奏する指の順番、各種奏法、何番目の舷で演奏するか等、琵琶譜より細かく記載されていますが、リズムについての記載はなくその決まりは演奏家の感性で判断するしかありません。
それは“打譜”という解読法です。打譜、つまり実際に各楽器を使って演奏し試行錯誤のなかで自分の感性が納得するまで、掘り下げてみる方法です。
これは、私が作曲家であり、また同時に演奏家であるという意味で恵まれた立場から数多くの試奏を通じて、この打譜により古代楽譜の解釈、訳語の私なりのある体系を導きだし得たと思っております。
古楽譜資料の閲覧を快く叶えて下さった近衛家の人々に感謝の意を申し述べたいと思います。はるか千何百年の時空を通じて古代シルクロードに集まった各国、各民族の音楽家、専門家が残した大切な遺産や、なされた努力とその貢献に対し、音楽をなりわいとする者として、共感と深い感謝と敬意を表するものであります。劉宏軍・『王朝音楽のみやび』より抜粋