チベットが消される

フォトジャーナリスト・竹内正右氏が20年余りに亘り取材してきた撮影写真とビデオ映像による現状報告会が開催されました。



【講演者紹介】
竹内正右氏(フォトジャーナリスト)
1945年 旧満州吉林生まれ、1970年 早稲田大学卒業
1973?75年 ラオス、ベトナム、カンボジアに滞在
1975年 ビエンチャン陥落の瞬間を取材
1975?82年 西側最後のジャーナリストとしてラオスを取材 1989年より米国のモン秘密部隊とその家族を追う
著書 『ラオスは戦場だった』(めこん、2004)、『モンの悲劇』 (毎日新聞社、1999)、
『ドキュメント1975.4.30 ベトナム戦争の記録から』(共著、パルコ出版、 1976)、
『20世紀の瞬間 紛争のない世界を子どもたちへ』 (共著、共同通信社、1999)等


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報告会は昼過ぎから夜までたっぷり時間をかけて、報道では伝わってこない、報道統制により封印された現地の状況が生々しく伝えられました。
竹内氏による生々しい写真はここでご紹介できないのが残念ですが、配布された資料などを元に内容をご紹介いたします。



講演内容

1970年からインドシナ戦争を取材し、ラオスのビエンチャン陥落の歴史的瞬間を記録。
その後もスリランカ暴動(1983年)、ベトナム軍のカンボジアからの第一次撤退(1983年)、フィリピンのアキノ暗殺(1983年)、マルコス政権崩壊(1986年)、ビルマ・クーデター(1988年)など一貫してアジアの現場を追い続ける竹内正右氏が、中国の天安門事件(1989年)、戒厳令下のチベット(1990年、1999年)から、ダライ・ラマを追った台湾(1997年)、インドのダラムサラの取材(199年、2000年)等、20年間チベットを追い見続けたことを報告。

【上映映像】
ラサ蜂起記念集会、パンチェン・ラマ11世ニマ少年釈放要求デモ、チベット内での犠牲者追悼、抗議集会(2000年3月)、僧侶、児童らの描くチベット人間地図、カルマパ17世脱出(チベット内よりダラムマサラへ)(2000年1月)

【上映スライド】
天安門事件(北京、成都)(1989年)、戒厳令下のチベット、ラサ、ツェタン(1990年)、ダライ・ラマ14世初の台湾入り(1997年)、ラサ蜂起39周年集会(1998年)、チベット自治区内の破壊された寺々(1999年)、パンチェン・ラマ11世(中国政府擁立のノルブ少年 西部シガツェ)、「小北京」化するラサの街、盗伐される高山の木材、チベット最大のダプチ収容所、カルマパ17世(カギュー派)脱出       

1950年10月、中国人民解放軍はチベットに侵攻します。
その際に、武器や食料、弾薬などをミグ19などを動員して支援したのが旧ソビエト空軍でした。スターリンと毛沢東との密約によるものです。
この空爆や掃討により、チベット軍及びその家族は何度も大量虐殺の対象となりました。
1959年からの「民主改革」、そして、1966年から10年余続いた「文化大革命」は、チベット全土を人民公社化し、チベット人を「社会主義民族」化させてしまいました。
その際に破壊された寺院は実に6000余に及び、持ち去られた黄金仏像は、中国本土に運ばれて金塊と化します。
チベット人の主食である大麦までもが強制徴収されたため、30万人が飢餓のため死亡しています。
1950年10月のチベット侵攻から1966-76年の文化大革命の間に犠牲となったチベット人は実に120万人に及びます。

チベット人の犠牲者数(1950-1965年:出典『Tibetan Nation』)
処刑 156,758人
餓死 342,970人
戦死 432.705人
拷問死 92,731人
自殺   9,002人
労改内死173,221人
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総数 1,207,387人
 

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写真は『Life』 1959年4月号より。3枚目の写真のように崖の無数の穴に8000人もの僧侶が修行生活を送っていたが、華人入植者に追いやられ、ほとんどが還俗させられた。


それから60年経過した2008年3月14日。
まだ記憶に新しいですが、平和的にデモを行った僧侶たち、市民たちは中国人民軍により武力鎮圧されました。
200人以上が亡くなり、6000人を超える人々が拘束され、ダプチ収容所を初め、チベット内に点在する「労改-強制労働収容所」へと送られています。
 

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ダライ・ラマ14世法王の額が破壊された様子・ 2008年4月初旬 Kirti 寺にて・savetibet.orgより)
出典詳細記事はこちら

ダライ・ラマ14世法王が「文化的虐殺」と訴えるように、チベット全土で、「愛国教育」の元、再び寺院が破壊され始めました。
まさに「第二次文革」と呼ぶに値する暴挙が進められているのです。


チベット全土(旧チベットの範囲を含む)の労改-強制労働収容所に収容されているチベット人の数はどれほどでしょうか。
数万人でしょうか、数十万人でしょうか。
さらに、中国人民軍の核兵器およびそれに付随する施設も点在しています。
チベットには450ある核兵器の1/4が集中しています。
先の四川大地震において、数日間外部からの人道的支援や報道陣をシャットアウトしたというのは、放射能漏れ調査と、労改-強制労働収容所からの脱出者がいないかどうかの調査の意味もあるといわれています。


<ラサ近郊の刑務所群を、地図とGoogleMapsで確認下さい>
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大きな地図で見る
 


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チベットの中国軍侵攻と、1951年の南ベトナム、ラオス開放とは密接な関係があります。
ラオス北部になぜクラスター爆弾が大量に投下されたのか、少数民族モン族がなぜ中国から追いやられたのか、そのあたりの東南アジア史は、日本においてはこれまであまり関心が向けられることがありませんでした。
インド・ダラムサラ近辺でインド軍エスタブリッシュメント21として国境を守っているのは、まぎれもないチベット族の方々です。


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『ラオスは戦場だった』より。 2枚目の写真:マルクス・レーニン主義を叩き込まれる僧侶たち。


1950年10月の中国軍によるチベット侵攻以前には60万人を超えるチベット人僧侶、尼僧たちが居ました。
50年後の2001年には、その数は公式には3万人に激減してしまいます。チベット全土で破壊された寺院は6,524か寺にも及びます。
愛国教育、反宗教運動がより強化された現在は、その数はさらに減少してしまっていました。
寺院には軍人が常住し、中国国旗を強制的に掲揚させられています。それに反対すれば即収容所行きです。
数年内には、チベット人僧侶、尼僧は収容所でしか見ることができない日が来るのかもしれません。


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インタビュー
 宮崎哲弥「誤った道を行こうとする友」
 中沢新一「なぜ今、チベット仏教か」
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 平野聡「チベットで、何が起きていたか」
 ダライ・ラマ「成田会見の全発言(日英対照)」

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・チベットの僧院生活
・カイラスへ続く道
・ジョカン寺巡礼

特集記事 第一部「チベット仏教の現在」
・チベット・インド・台湾 アジアの中のチベット仏教
チベット仏教はいま/ジョカン寺と巡礼路/セラ寺の問答/地方寺院の現状
・インドで受け継がれる僧院生活
ムンゴットのラマ・キャンプ/ゴマン学堂の僧院生活
・台湾でチベット仏教
台湾の主婦、チベット仏教で出家/台湾人の転生ラマ/チベット仏教と中国仏教のかけはしに

特集記事 第二部「激動のチベット ダライ・ラマ13世と二人の日本人」
グレート・ゲームの中のチベット/ダライ・ラマ13世と西本願寺/
ラサをめざして/スノー・ライオン チベット独立の闘い


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記事

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連載 名宿の知恵 鹿児島県出水市「しののめ」 文・写真/森枝卓士
連載 梯實圓「摂取して捨てず」
連載 森達也の社会時評「チベット巡礼者射殺ビデオを見て」
連載 妙好人伝説 川西蘭(文)/しりあがり寿(絵)「物種吉兵衛」
連載 高史明「暗闇の遥かなる明かり」
連載 福祉施設の現場から「ビハーラ本願寺」 文・写真/落合千恵子
連載 南こうせつ「友の唄が聴こえる」
連載 C・Wニコル「ナチュラルな食卓 タラの芽」
連載 庭を「読む」 「英国式庭園と公園、そして芝生」 野地秩嘉
連載 美酒巡礼 「天の戸」(秋田・浅舞酒造) 文・写真/山同敦子


■これまでに書いた主なブログ記事

ダライ・ラマ法王講演録
柔らかい手の感触
中国当局による武力介入
中国のインターネットネットを試してみた
抱くことば
中国、亡命チベット人を銃撃か


■関連リンク

International Campaign for Tibet

チベットNOW@ルンタ ダラムサラ通信

投稿者: kameno 日時: June 29, 2008 11:24 AM

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