捕鯨と鯨羊羹

給食に鯨復活 横浜

横浜市内の小学校で21日、鯨肉の献立が復活した。学校給食週間にあわせた特別献立だが、市内の全小学校で実施されるのは26年ぶり。普段はなじみが薄いメニューにも、子どもたちは「おいしいー」と元気よく食べていた。
今回メニューは「くじらのごまみそあえ」。調査捕鯨の鯨肉約10トンを仕入れ、市内の各小学校で3日間に分かれて提供。21日には87校の給食で出された。
同市内にある小学校4年生のクラスでは、この日の献立を見た子どもたちが「くじらだってー」「丸ごと?」とちょっと興奮気味。味の方も好評で、田沢**さん(10)は「初めて食べた。豚肉みたいだったけど、おいしかった」と話していた。
市教育委員会によると、81年まで鯨肉の給食があったが、82年に商業捕鯨の禁止が決まった後に廃止された。日本鯨類研究所などから調査捕鯨の鯨肉を給食で使わないかと働きかけがあり、開港150周年をひかえる横浜市は、開港の背景に米国の捕鯨があった歴史を改めて理解するため、今回取り入れたという。
(朝日新聞)



横浜市の学校給食で一斉に鯨肉が出されるのは1981年以降、実に26年ぶりとのことということが驚きです。

私が子どものころは、当たり前のように「クジラのノルウェー煮」「クジラの竜田揚げ」などがメニューにあり、とても美味しく食べた想い出があります。
給食に鯨肉が用いられるようになったのは、戦後GHQが国民の食糧事情を改善するために、大量かつ安価に確保できる蛋白源として鯨を推奨したことが要因となっています。 
ウイふり調査団のサイトを見ると、鯨肉は全国的にポピュラーな給食のメニューであったことが分かります。

しかしながら、乱獲による鯨の減少を理由に、1937年セミクジラ、1947年コククジラ、1966年ザトウクジラ・シロナガスクジラが禁漁になるなど、次々と捕鯨禁止が国際的に決められるようになりました。
1970年代にはすべての鯨を禁猟にする捕鯨反対の声が高まり、1988年には日本は調査捕鯨以外の商業捕鯨を行わないことになってしまいます。

古来から日本人は、鯨を残すところがない程無駄なく大切に利用してきました。
鯨油のみを取って残りを捨ててしまう他国とは全く異なる文化を育んでいます。
頑なに捕鯨禁止を叫ぶより、いかに日本人が鯨と密接に関わってきたのかを振り返ってみることも必要でしょう。
学校給食として復活したことは大きな意味があるといえます。

その豊かな文化を象徴する和菓子をご紹介します。
尾道銘菓『鯨羊羹』
今日の貞昌院・お茶の教室で出されたものを戴く前に撮影しました。
日本人と鯨の関係をよく表わしている、鯨の皮を模した羊羹です。

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尾道銘菓 『鯨羊羹』

古来より海洋資源に恵まれていた日本人は、地球上最大の動物である「鯨」も例外ではなく、肉・脂・表皮はもとより、「鯨尺」の名があるようにその材料として「ひげ」までも無駄なく大切に利用してきました。現在では高価な食材となった鯨ですが、古くからの港町・尾道でも肉とともに、「おばけ」又は「おばいけ」といって、表皮の黒い部分とその下の「白皮」とよばれる脂肪層を薄く切って熱湯をかけ、流水でよく晒して酢味噌で食べる「さらし鯨」は極く一般的なたべものでした。
「鯨羊羹」は元は「鯨餅」といって、黒と白の二層の蒸し羊羹として江戸時代に記録が残っています。寒天の発見後、十八世紀後半頃より現在の羊羹に似たものが造られてきますが、「鯨羊羹」もそれに後れて現在の様になったと思われます。いずれにしましても、鯨の皮を意匠に取り入れ菓子にして愉しむ、私たち日本の先人達の美意識の高さと生活を豊かにする姿勢に頭が下がります。


■ちょこっと関連ニュース

スカシカシパン、1月29日よりローソンで発売

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参考画像:<左>ローソンのプレスリリースより <右>国土交通省九州地方整備局のサイトより

投稿者: kameno 日時: 2008年1月31日 12:27

コメント: 捕鯨と鯨羊羹

尾道の鯨羊羹には、ご縁がなく知りませんでした。当地では老舗菓子店に夏菓子として鯨餅があります。見たところ、尾道の鯨羊羹と同じです。ネットで調べていたら北前船の寄港地にはこの鯨羊羹を天満宮に献上していたそうです。現に今でも天満宮の神事には欠かせない献上物となっているそうです。なるほど、、、。もしかして、貞昌院様のお供物だったのかな?
スカシカシパン子供がテレビで見たそうです。鯨とスカシカシパンどちらも今度一度食べてみたいですね。

投稿者 ゼラニウム | 2008年1月31日 20:58

ゼラニウムさん
調べてみると鯨羊羹は尾道だけでなく、宮崎にもあるようです。鯨餅はゼラニウムさんの地方にもあるのですね。天満宮との関わりも不思議な縁だと思います。
ブログで紹介した鯨羊羹は京都大徳寺のお茶会でも出されました。
鯨羊羹のできるきっかけは、スカシカシパンのそれと似たようなものだったりするかもしれませんね。

投稿者 kameno | 2008年2月 1日 20:38

昨年の暮れから今年の正月にかけて鯨の刺身を頂く機会がありました。鯨肉は栄養があるから給食のメニューに登場していたかも知れませんね。
話は変わりますが、数年前から鹿が増えているそうです。食料が不足しているため森林が鹿に食べられる被害が出ているため鹿を捕獲して、鹿肉を食そうという動きもあるようです。

投稿者 天真 | 2008年2月 2日 23:39

天真さん
鯨肉は日本人にとっての貴重な蛋白源でした。これから食料事情も変わっていくことでしょう。鹿肉が食卓に当たり前のように出される日も来るかもしれませんね。

投稿者 kameno | 2008年2月 3日 06:02

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