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発達した低気圧の通過に伴い、ここ横浜は一昨日一日中降り続いた雨模様から一転、昨日は冬晴れの天気と、目まぐるしく変わっています。
私は、個人的には雨の日の落ち着いた雰囲気が大好きです。
境内の花々も雨粒を纏い、生き生きと、そしてきらきらと輝いています。
撮影した1秒後に落下していきました。
年間を通して坐禅をしていると、季節の変化、天候の変化をとても敏感に感じるようになりますが、雨の日の坐禅は特に心地よいものです。
軒先から落ちる雨だれの音が絶え間なく、しっとりとした堂内に響き渡ります。
雨だれといえば、ショパンの名曲 Prelude Op.28-15 (Raindrop)が思い浮かびますが、彼がこの作品を生み出したときに一緒に生活をしていたジョルジュ・サンドは、次のように記録しています。
あの朝、具合の良かった彼を置いて私は逗留生活に必要な品物を買いに出かけました。雨が降り出し急流が氾濫し、12キロの道を6時間かけて洪水の中を帰りました。御者に置き去りにされ、今までに聞いたこともないような危険を通り抜け、夜遅くなって裸足で帰宅したのです。私は病人が心配するのではないかと急ぎました。かくて、病人はひどく心配していたのです。彼は涙を流しながらすばらしいプレリュードを弾いていました。その夜の彼の作品は、修道院のよく響く瓦の上に落ちる雨の音に満ちていましたが、その雨の雫は彼の想像と音楽の中では、天から彼の胸の上に落ちる涙に変わっていたのです。Histoire de ma vie わが生涯の歴史 (George Sand ,1855)
病気を患い、療養中だったショパンの抱えていた大きな不安が、途中の嬰ハ短調の重々しい旋律として表れているようですが、そのとき修道院に降り注いでいた雨というのは、こんな感じだったのでしょうか。
(修道院ではなく、貞昌院の境内の写真ですけどね)
嬰ハ短調の旋律のような、どうしようもない不安に包まれる時期は、きっと誰にでも訪れます。
大本山に修行に行っていた頃を思い返すと、上山したての頃は、右も左も分からず、何ともいえない不安な毎日を送っていました。
初めて経験した摂心期間は雨がずーっと降り続き、函櫃(僧堂内の箪笥のようなもの)の中の蒲団は湿っぽく、カビすら浮いてくるような状況。
そんな中で行じた坐禅や、カビ臭い蒲団に包まって聞いた雨だれの響きは嬰ハ短調の雨だれとして記憶に残っています。
Prelude Op.28-15 は、最後に再び変ニ長調の旋律へと変わっていきます。
かすかな希望が、だんだんとはっきりと見えてくるように。
修行での生活も、日を追うごとに、不安がぬぐわれていくことが分かりました。
雨の日の坐禅が心地よく感じられるようになったのは、半年以上過ぎてからです。
誰にでも訪れる、どうしようもない不安に包まれた時期の後には、きっと雲一つ無い晴天の日が待ち受けているのではないでしょうか。
降り止まない雨なんて無いのですから。
ジョルジュ・サンドの記録も感動的なら、老師の本山時代に重ね合わせて嬰ハ短調の旋律の不安感を見事に表現しておられます。思わず手元のCDに手が伸びました。
投稿者 usagi | 2007年1月 8日 08:10
usagi様
音や匂いがその時の感覚を想起させることってありますが、ショパンの雨だれは、私にとって修行に入りたてのころの感覚と結びついています。
周りの人より7年くらい回り道をしてから、いきなり道場に入って、最初の頃は何も分からず、失敗ばかりでした。
そんなことも、今となってはとても良い思い出です。
投稿者 kameno | 2007年1月 8日 09:21
再びこんにちは。
赤いお花は侘助ですか?雨に濡れてしっとりとあざやか。
私、椿なら侘助が好きなんですよ。
寒い季節にけなげに咲いているのがいじらしい感じ。
紅のべにつけたちいさな唇みたい。
投稿者 ゆが | 2007年1月 8日 12:46
侘助の一種です。
他に白もありますよ。
雨粒は、花の美しさを引き立てますね。
投稿者 kameno | 2007年1月 8日 16:21
冬の雨・・といえば病気で仕事を休職してからというものはずっと雨が降り続いているようなものでした。
冷たい冬に降る雨はことさら心につらかった・・・
kamenoさんの言葉は心にしみすぎてはじめ読んだ時はただただ、ぼうぜんとするばかりでした。
みんなつらい時があるんですよね。
私の好きな歌の中にこんな和歌があります。
群雲の絶え間より漏る月影は
清かに照りて心を晴らす
だいぶ前に習ったもので作者は忘れてしまいましたが、今でも
胸に残っています。
そうですよね、止まない雨なんてないんですものね。
・・・がんばります!
投稿者 ゆが | 2007年1月 8日 21:35
ゆがさん
むら雲の・・・・
これって誰の作でしたっけ?
いい和歌ですね。
人それぞれ思うことは違うかもしれませんが、後になって、こういう時があったからこそ、今の自分があるんだって思える時がきっと来ると思います。
投稿者 kameno | 2007年1月 8日 23:05