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ほっと一息。さんの地図のお話に関連した話題です。
【地図の問題】
(1)日本の海岸線の長さは何Kmでしょうか。
(2)都道府県で一番海岸線が長いのはどこでしょうか。
その答えは後ほどとして、こんな逸話があります。
20世紀初め、スペインとポルトガルが、国境線の長さをそれぞれ測量しました。
その結果
スペインの測量では 987km。
ポルトガルの測量では 1,214km。
実に200km以上の差が生じています。
この原因はなんだろう・・・ということを研究したのが、イギリスの気象学者、リチャードソンでした。
国境線にしても海岸線にしても、遠くから見る分には、単純な曲線のように見えますが、それを拡大してみた時には、だんだんと複雑に入り組んだ曲線が見えてきます。
このように、どれだけ細かい単位で測量を行ったのかにより、長さの測量結果が異なってしまうのです。
理論的には精度を極限まで上げれば、長さは無限大となってしまいます。
つまり、ポルトガルのほうが細かい精度で測定していたということになります。
リチャードソンは、この精度と得られる長さに、法則を見い出します。
例えば海岸線を r という精度で測量し、r よりも小さい入り組みの部分は無視すると、その測量された線分の長さL(r)は
L(r) = rN(r)
ここで、実際に様々な精度で測定した長さを両対数プロットすると、直線状に乗ることを発見しました。
プロットの直線の傾きを-Dfとすると
-Df=logL(r)/logr
のような法則があるのです。
(Df は、フラクタル次元)
フラクタルは、フランスの数学者ブノワ・マンデルブロが導入した幾何学の概念です。
フラクタル図形は自己相似性をもつ訳ですが、海岸線は、完全な自己相似性を持っているとはいえません。
どういうことかというと、例えば、三浦半島の海岸線を拡大しても、完全に三浦半島と同じ形は見えてこない、というように、コッホ曲線のような完全な相似形が、国境線や海岸線には見い出せないからです。
ただし、海岸線も国境線も、縮尺を変えても、曲線の特徴は、あまり変わらないため、海岸線なら海岸線の、海岸線らしい曲線であるという特徴は持っています。
完全な自己相似形ではないけれども、自己相似に近い性質を持っているということは言えそうです。
自然界の草木や、雪の結晶なども、完全な自己相似ではないけれども自己相似に近い性質をもっているということです。
つづきはこちらなどをご覧ください。
http://kamakura.ryoma.co.jp/~aoki/paradigm/furactal.htm
さて、冒頭の答えです。
(1)の答え・・・・・・
29,751 km (米国CIA)
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9400.html
35,00 km
http://www.surfrider.jp/info/info.asp?no=46
約3万5,000 km(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/kowan/coast/12/-123_bunseki.htm
34,000 km(日本財団)
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2000/01293/contents/011.htm
34,000 km (建設コンサルタンツ協会)
http://www.jcca.or.jp/invitation/sihon/page2.html
34,810?(アジア太平洋地域インフラデータベース)
http://www.ap-infra.org/cgi-local/inter/country_top.pl?fnm=japan-j.htm
34,390km
http://www.ne.jp/asahi/outback/buokaburra/column/statistics01.html
約2.4万 km (北東アジア環境情報広場)
http://www.npec.or.jp/northeast_asia/social/page02.html
33,889 km
http://www.tanihama.jorne.ed.jp/area/u_about.html
ああ、やっぱりバラバラでした。
(2)の答えも、北海道とするもの、長崎県とするものがあります。
上記、どの答えも正解です。
測量精度により答えが一義的に決められないからです。
面白くてすっかり前のめりで読んでしまいました(笑!
TBありがとうございます
具体的な数字を事前に知っていたとしても、もし自分がその海岸線の先っちょに立っていても、そういう線のことを同時に俯瞰できないし、そしたら今度は遠近の距離そのものもイメージできなさそうでとか、素朴な疑問がいっぱいで首をかしげるばかりでしたが、ほかにも測量の方法(?)がこんなにあるということなのですね(驚)
しかし答えがばらばらになってても良いのだというあたりが、かえって妙なスッキリ感はあるように思えてなりません。フラクタル(は人名かと思っていました(汗))の音への応用云々というところは、本当に興味のつきないところなのですが、「知の領域」そのものがこんなに多彩なのだと思うと、いろんなことがどうでもよくなってきます。地図そのものも、上下逆だったり中央にどこがきているかでは全然感じが違って本当に面白いです。
「雪の結晶」のところは今まで、読んでも別になんとも思わなかったけど、なんかいろんな回り道していたら、こんな感動的な話とは思いませんでした・・・!
投稿者 ほっと一息。 | 2006年9月14日 16:15
ほっと一息。さん、フラクタルの話は、とても奥が深くてここにご紹介できないこともたくさんあるので、後ほどご紹介できればと思います。
海岸線の先っちょに立っているとします。
すると、その足元には岩場であれば、岩のごつごつが、砂浜であれば、砂の粒が見えたりするでしょう。
そこまでの尺度で考えるのなら、岩の複雑な外形や砂の粒の外周も考慮しなければなりません。
また、さらに細かく見ていくと、分子、原子レベル・・・・といったように際限がありません。
どこのレベルで切り上げるか、ということによって答えは変わってしまうのですね。
雪の結晶の話も、本当に興味深いですね。
投稿者 kameno | 2006年9月18日 21:51