中国の歴史教科書が書かないこと

中国・上海(AP) 中国の歴史教科書には書いてないことがいくつかある。

たとえば1989年の民主化運動。あるいは中国共産党の失敗がもたらした飢饉(ききん)で死亡した数百万人のこと。あるいは中国が攻撃を開始した中印紛争や中越戦争のこと。

中国政府と、中国で反日デモに参加する市民は口々に、日本政府が検定で合格させた新しい歴史教科書が従軍慰安婦問題など旧日本軍の悪行を隠蔽していると批判している。一方で、中国で使われている歴史教科書は、共産党体制下の自国の歴史や周辺国との関係について、相当部分を省略している。
米メリーランド・アナポリスの海軍士官学校で歴史を教えるマオチュン・ユ教授は、「中国でナショナリズムが高まる中、ナショナリズムの要請に応じて歴史を書き直し修正する動きが、国中でさかんになっている」と指摘する。

中国の歴史教科書の主題は、中国人民がいかに日本など諸外国にひどい目に遭わされたかという国家的被害者意識を強調すると主に、1949年に政権を握った中国共産党を礼賛し、反政府の声を一切切り捨てることだという見方をする専門家は多い。

中国の教科書は、抗日戦線など日本をはじめ諸外国との戦いで死んでいった者のことを、国のために「崇高な犠牲をはらった」者として称えている。
教科書には、中国人が外国の侵略者に抵抗する姿などを描いたプロパガンダ画が使われている。教科書に掲載されているこの図とよく似た姿で、反日デモに参加した若者たちは日本大使館や総領事館などに投石していた。

中国随一の国際都市・上海で使われている8年生の歴史教科書は、日本人のことを繰り返し「日本鬼子」という蔑称で呼んでいる。
この教科書は日本軍による残虐行為に焦点をあて、1937?45年の日中戦争で中国人3500万人が犠牲になったという中国政府の公式見解を繰り返している。
教科書には、「日本軍は行く先々で放火し殺害し盗み略奪した。連中が行わない悪行などなかった」と記述している。
この教科書はさらに、中国はとりわけ1949年の共産党政権発足以来、侵略者では決してなかったというイメージを強調するため、重要な歴史上の事件を省略している。
たとえば教科書には、1962年に中国人民解放軍の攻撃で始まった中印国境紛争についての記述がない。中国政府と友好関係にあったカンボジアにベトナムが侵攻し、ポル・ポト政権を崩壊させたことへの懲罰的意味も込めて、中国軍が1979年にベトナムを攻撃した中越戦争についても、何も触れていない。

このほか、中国の歴史教科書には──
・1989年の民主化運動と天安門事件。
・1958?61年に農工業の大増産政策として毛沢東政権が導入した「大躍進政策」。経済混乱と飢饉につながり、中国国内の3000万人が餓死したとされている。
──の記述がない。

また歴史教科書は、朝鮮戦争の開戦のきっかけについて、中国の友好国・北朝鮮が1950年6月に38度線を越境して南側に侵攻した事実に触れず、単に「内戦が始まった」と書くにとどまっている。また、米国が中国領土を侵略しようとしたため、中国はやむなく介入せざるを得なかったという説明をしている。
7年生の歴史教科書では、朝鮮戦争で米軍が生物兵器を使用したと断定。これは中国や北朝鮮、旧ソ連政府が一貫して主張したことだが、立証はされていない。
英オックスフォード大学の中国専門家シンミン・ショー氏は、日本の教科書が歴史を歪めているのは、自分たちの恥を受け入れたくないからのように見えるが、中国による歴史の改ざんは共産党体制の維持が目的のようだと指摘。「(中国にとって)過去を認めないのは、計算された政策だ」とショー氏は話している。
(CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200504180011.html


17日の日中外相会談に続き、唐国務委員との会談でも、日中両国の議論は平行線に終わりました。 日本の常任理事国入りを何が何でも阻止し、共産党体制の維持したいという中国の立場からすれば分かりきった反応ですが、それにしても予想以上の強行な反応で驚かされます。

会談で唐氏は「中国では反日教育は存在していない。日本の教科書は中国人民の感情を傷つけている」と述べ、デモの原因は日本にあるとしています。
教科書問題で内政干渉してくるのも問題外ですが、さらに、中国側の歴史認識、教科書の記述はどうなっているのかを棚に上げての発言。

一度、日本と中国の歴史教科書・教材を同列に展示して、全世界の方々に客観的に判断してもらってはいかがでしょうか。

末筆として日中共同声明を掲載しておきます。


日中共同声明(日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明)


 日本国内閣総理大臣田中角栄は,中華人民共和国国務院総理周恩来の招きにより,1972年9月25日から9月30日まで,中華人民共和国を訪問した。田中総理大臣には大平正芳外務大臣,二階堂進内閣官房長官及びその他の政府職員が随行した。
 毛沢東主席は9月27日に田中角栄総理大臣と会見した。双方は,真剣かつ友好的な話合いを行なつた。
 田中総理大臣及び大平外務大臣と周恩来総理及び姫鵬飛外交部長は,日中両国間の国交正常化問題をはじめとする両国間の諸問題及び双方が関心を有するその他の諸問題について,終始,友好的な雰囲気のなかで真剣かつ卒直に意見を交換し,次の両政府の共同声明を発出することに合意した。
 日中両国は,一衣帯水の間にある隣国であり,長い伝統的友好の歴史を有する。両国国民は,両国間にこれまで存在していた不正常な状態に終止符を打つことを切望している。戦争状態の終結と日中国交の正常化という両国国民の願望の実現は,両国関係の歴史に新たな一頁を開くこととなろう。
 日本側は,過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し,深く反省する。また,日本側は,中華人民共和国政府が提起した「復交三原則」を十分理解する立場に立つて国交正常化の実現をはかるという見解を再確認する。中国側は,これを歓迎するものである。
 日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず,両国は,平和友好関係を樹立すべきであり,また,樹立することが可能である。両国間の国交を正常化し,相互に善隣友好関係を発展させることは,両国国民の利益に合致するところであり,また,アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである。

1 日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は,この共同声明が発出される日に終了する。
2 日本国政府は,中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
3 中華人民共和国政府は,台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は,この中華人民共和国政府の立場を十分理解し,尊重し,ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。
4 日本国政府及び中華人民共和国政府は,1972年9月29日から外交関係を樹立することを決定した。両政府は,国際法及び国際慣行に従い,それぞれの首都における他方の大使館の設置及びその任務遂行のために必要なすべての措置をとり,また,できるだけすみやかに大使を交換することを決定した。
5 中華人民共和国政府は,中日両国国民の友好のために,日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。
6 日本国政府及び中華人民共和国政府は,主権及び領土保全の相互尊重,相互不可侵,内政に対する相互不干渉,平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。
 両政府は,右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき,日本国及び中国が,相互の関係において,すべての紛争を平和的手段により解決し,武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。
7 日中両国間の国交正常化は,第三国に対するものではない。両国のいずれも,アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく,このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。
8 日本国政府及び中華人民共和国政府は,両国間の平和友好関係を強固にし,発展させるため,平和友好条約の締結を目的として,交渉を行なうことに合意した。
9 日本国政府及び中華人民共和国政府は,両国間の関係を一層発展させ,人的往来を拡大するため,必要に応じ,また,既存の民間取決めをも考慮しつつ,貿易,海運,航空,漁業等の事項に関する協定の締結を目的として,交渉を行なうことに合意した。

1972年9月29日に北京で
日本国内閣総理大臣    田中角栄(署名)
日本国外務大臣      大平正芳(署名)
中華人民共和国国務院総理 周 恩来(署名)
中華人民共和国外交部長  姫 鵬飛(署名)

投稿者: kameno 日時: 2005年4月19日 02:30

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