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ペット供養は収益事業 寺院への課税認めるペット供養は「収益事業」に当たるとして課税されたのは不当として、愛知県春日井市の寺院「慈妙院」が、税務署に計約670万円の課税処分取り消しを求めた訴訟の判決で、名古屋地裁の加藤幸雄裁判長は24日、原告の請求を棄却した。
原告側弁護士によると、ペット供養で課税をめぐる判決は初めて。
判決理由で加藤裁判長は、ペット供養の依頼者は宗教的意義を求め、供養は人の葬祭の形式を踏んでいると認定したが、「原告は料金表などを定めて支払いを受けており、民間業者と料金システムが類似。依頼者と原告は、料金の対価としてサービスを受ける関係にある」と述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050324-00000068-kyodo-soci
さて、まず、基礎的な面からみていきましょう。
公益法人としての宗教法人が行う収益事業の考え方は、次のとおりとなっています。
■公益法人等とは、財団法人、社団法人、宗教法人、学校法人など、特別法により設立された法人のことです。つまり、宗教法人は、宗教法人法により設立されている法人です。
■公益法人等の収入は、
非課税とされる「非収益事業」「宗教活動」「公益事業」
課税対象となる「収益事業」
とに分類され、収益事業に対して課税されます。
■収益事業の範囲は、次に示された33の事業をいいます。
収益事業とは、次の33の事業(付随して営まれるものを含む)で、継続して事業場を設けて営まれるものをいう(法人税法第2条、施行令5条1項)、としています。
1.物品販売業 2.不動産販売業 3.金銭貸付業 4.物品貸付業 5.不動産貸付業 6.製造業 7.通信業 8.運送業 9.倉庫業 10.請負業 11.印刷業 12.出版業 13.写真業 14.席貸業 15.旅館業 16.料理店業その他の飲食業 17.周旋業 18.代理業 19.仲立業 20.問屋業 21.鉱業 22.土石採取業 23.浴場業 24.理容業 25.美容業 26.興行業 27.遊技所業 28.遊覧所業 29.医療保険業 30.洋裁 和裁 着物着付け 編物 手芸 料理 理容 美容 茶道 生花 演劇 園芸 舞踊 舞踏 音楽 絵画 書道 写真 工芸 デザイン 自動車操縦若しくは小型船舶の操縦(以下 技芸という)の教授 31. 駐車場業 32.信用保証業 33.その他工業所有権その他の技術に関する権利又は著作権の譲渡又は提供を行う事業
■公益法人の収益事業については 25%、平成14年4月1日以後開始した事業年度については 22% の税率が適用されます。
■公益法人等の寄附金の損金算入限度額は、収益事業から生ずる所得の 20%とされます。
収益事業部門から非収益部門への支出は、寄附金とみなす(みなし寄附金)ことになっています。
■収益事業を営まなくても、住職や従業員等に支払われる給与には源泉徴収義務が生じます。
今回の司法判断は、ペット供養が宗教活動ではなく、収益事業と認められたということで、一見、きわめて意外な判断のように見えます。
古来から、日本人は動物や樹木などの生物に限らず、石や地面、水など無生物のものに対しても崇拝の対象としてきました。
ましてやペットについては家族同様に暮らしてきたわけですから、丁重に供養したいという要望はあるのでしょう。
ただし、今回の司法判断の重要なところは、
☆料金表などを定めていた
☆したがって、依頼者と寺院は、料金の対価としてサービスを受ける関係にあった
というところです。
葬儀や法要の費用は通常、布施ですから、お気持ちで…としか言いようがありません。
目安を…と聞かれても、それは、やはりお気持ちで…ということになるのでしょう。
逆に明確な定価を表示すると、それは宗教活動から離れてしまい、料金の対価と判断されてしまうわけです。
ですから、法要の際に御寺院さんへお布施を封筒に入れる際は、「読経料」ではなく、あくまでも「御布施」としていただいたほうがよろしいと思います。
さて、名古屋地方裁判所は、ペット霊園について収益事業と判断しました。
であるならば、寺院運営の面からみれば、ペット霊園にかかわる人件費、火葬炉の原価償却義、燃料費、その他諸々の経費を切り分けして、収益事業会計で独立させればそれで済む話です。
むしろ損金が多数発生して収益事業会計の利益はほとんど無くなるかもしれません。非課税事業として処理するよりは、収益事業として処理したほうが、寺院会計にとって健全な方向に向かうかもしれません。
ただ一点、家族同様にすごしてきたペットに対する供養が、宗教活動ではないと判断される点、この点だけは、宗教者としてとても残念な判断です。
これが拡大解釈されていき、あらゆる供養が費用の対価とみなされてしまうことです。
では地鎮祭は?ご神木の供養は?人形供養は?
宗教活動と収益事業の区分けは明確に出来ない部分が多いからです。
> kameno 先生
早速の解説記事、とても参考になります。勝手に拙僧のブログで、このページにリンクを張らせていただきましたが、不都合な点がありましたら、ご連絡下さい。
なお、ここで言われた「ペット」をそのまま「人」へ置き換えると・・・ちょっと怖い判決ではありますね。
投稿者 tenjin95 | 2005年3月24日 15:29
こんにちは。
宗教者としては、自分の中で納得するまでに時間を要するやも知れませんが、原則として活動のすべてに課税される時期が来てもよいのではないかと、私は考えます。
もちろん、完全な営利事業とは異なりますから、税率は『普通の会社』などより低くする必要がありますが。
『お金』は、そんなに汚いモノではありません。
もうそろそろ、日本人は、『適正なお金を受け取る』事にすら感じてしまう、後ろめたさの様なものを脱ぎ捨てても良いのではないでしょうか。
お金の原則は、誰かを幸せにした対価です。
お寺だって、同じように対価として頂戴する訳です。
そのお金で、お寺が運営され、一年間で収支を計り、結果として利が出たのであれば、その内の何割かを社会に還元(税金)すれば良いのではないのでしょうか?
『読経料』か、『御布施』か、どちらにしようという、いらぬ悩みもなくなりますもの…。
投稿者 あさひ素材 | 2005年3月24日 17:04
tenjin95さん、コメントありがとうございました。
同じ時期に同じ記事についてブログに掲載されたのですね。違った視点のものの見方があってとても参考になります。
この問題については、また追って考えていきたいと思います。
(ブログを始めてから、ネタが続くかな??とか危惧していましたが、そんなこと無いですね。ネタは次から次へとやってくる!)
あさひ素材さん、コメントありがとうございます。
確かにそういう考えがありますし、公益法人に対する税制の見直しも行われています。
宗教行事も収益事業!と割り切ってしまうのも一つの論理ですが、宗教活動としてのコアの部分だけは残していただきたいという思いもあります。
まあ、このところはもう少しじっくりと考えてみます。
投稿者 kameno | 2005年3月24日 22:27
tenjin95 さんの blog でこちらの blog を知り、興味深い内容でしたので、早速ですがトラックバックさせていただきました。
また訪問させていただきます。よろしくお願いいたします。
投稿者 Westie | 2005年3月25日 12:41
Westie さん、TBありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
投稿者 kameno | 2005年3月25日 20:09
今回はペット供養が収益事業のいづれに該当するかという解釈論上の問題でしたが、
司法が指摘した課税適格性の問題はまだ残っていますね。
普通法人の英会話教室は課税だが、NPO法人の英会話教室は非課税。
医療法人の社会福祉事業は課税だが、社会福祉法人の社会福祉事業は非課税。
などなど
これらは立法論上の問題ですから司法は不関与ですが、
司法が指摘する課税適格性の見地からは依然問題が残ります。
投稿者 やまもと | 2005年11月11日 19:09
京都に住んでいた頃、関西地区で就職して京阪神地区で住居を構えようとした事がありますが、大阪のある曹洞宗の寺院は石材店と提携して檀家の獲得に必死になっていました。年に4回お布施として1回5000円納めてくださいというのが条件との事でした。寺院と業者が結託して儲けの方向に走るケースが他の寺院でも見受けます。残念ながら金儲けに走るお寺さんがあるのは事実です。お寺の場合は社会に貢献する事で法人税が減額されるケースがありますし、実際に無報酬で保護司や民生委員をする和尚さんもいます。お坊さんも生活がありますから金儲けに走るなとはいえませんが、社会に貢献する役目を持っている事を自覚して欲しいと思います。尚、創価学会のように財務と呼ばれるお布施の使途が不明で週刊誌に叩かれる事のないように適正な課税、節税は必要ですし、お寺の収支のディスクロージャーは必要です。
投稿者 ikuo | 2005年11月11日 22:52
創価学会の財務も「料金」は決まっていないようですが…
払わない人も多いようですし。
投稿者 中々 | 2006年6月29日 00:44
初めてコメントさせて頂きます。古い記事に対するコメントで申し訳ありません。当方霊園関係者でして、感銘するところも多くその他の記事を興味深く読ませて頂きました。
坊主丸儲けと言いますが、古くは社会福祉活動の一環を担ってきたのがお寺だったと思います。我がお寺も今も事業とは別の慈善活動を行っておりますが、宗教法人が行う福祉団体への寄付も損金として経費として落とせないのが現状でして、慈善活動もままならないのが昨今です。
かといって公然と社会福祉活動を行うお国が税金に見合う福祉を行っているのかも些か疑問です。
適正価格の価値観というのも些か揺らいでいる感じがします。
ところで、
>>寺院運営の面からみれば、ペット霊園にかかわる人件費、火葬炉の原価償却義、燃料費、その他諸々の経費を切り分けして、収益事業会計で独立させればそれで済む話です。
むしろ損金が多数発生して収益事業会計の利益はほとんど無くなるかもしれません。非課税事業として処理するよりは、収益事業として処理したほうが、寺院会計にとって健全な方向に向かうかもしれません。>>
と書かれてますが、収益事業に損金をすべて振り分けても、按配計算で非収益部門の収入がある以上、経費として100%落ちることにはならないと思います。
つまり、宗教法人がペット供養を行うことは民間の法人が行う供養より明らかに課税額が多くなるのでやらなくなる宗教法人が多くなるだろうと思います。
経費として落ちない慈善団体への寄付をしなくなると同じように・・・。
ともあれ、脱税趣向の高まりは国への信頼の崩壊、価値観の揺らぎだと痛感しております・・・。
お寺が地域通貨でも発行し、福祉全般を担う時代が来たかとも思えてきます☆
投稿者 困り人 | 2009年12月27日 17:41
困り人さま
ご丁寧なコメントありがとうございます。
現在の宗教法人に関する税制で問題があるとすれば、巨大な利益を得ている宗教団体にとって税制の隠れ蓑となっていること、「中小の」「地方」寺院にとって必ずしも優しい税制となっていないことが挙げられます。
ご指摘の通り、慈善事業としての活動が思ったとおりに経費計上できないということも問題の一つです。
私がこの記事で寺院会計にとって健全な方向に・・・と書いたのは、ペット供養に関しては、課税額が多くなってしまうとしてもペット供養部門を別法人として切り離し、割り切って株式会社化したほうが事業の内容が明確になり会計の透明化が図れるのではないかという指摘でもあります。
最近は株式会社の寺院も出てきており、そこには供養ごとのメニューが「お品書き」のように並べられています。こちらは行き過ぎのようにも感じますが、現実としてそのようなものも出てきているのです。
今後さらに会計面から見た寺院運営のあり方をより精査していく必要があると思います。
地域通過については、全国7万もの寺院、関連業者が連携して運用できる体制が整ったら、それこそ影響力の大きい通貨となることでしょう。
http://teishoin.net/blog/001160.html
http://teishoin.net/blog/001270.html
↑こちらにも少し書いてみました。
投稿者 kameno | 2009年12月27日 19:04
仙台には、僧侶派遣を銘打ち、
料金表を掲げて、
葬儀への僧侶のあっせんを行っている
寺院(某伝統教団大本山別院)があります。
今回の判決に基づくと、
これはもう、宗教の範疇から逸脱している、
ということになりますね。
まあ、今回の判決を持ち出すまでもないですが。
投稿者 from ITABASHI | 2009年12月30日 09:25
from ITABASHI 様
ここ数年でインターネット上にも「僧侶派遣」のサイトは爆発的に増えています。そして、そのほとんどが「明朗会計」の名の下に供養料の料金提示をしています。
ご指摘のように、定価付けは、一見明朗会計のように見えますが、弊害も多分にあります。
そのあたりを当ブログでももう少し具合的に考えていきたいと思います。
投稿者 kameno | 2009年12月30日 14:54