三仏忌の「忌」は、果たして適切か

以前書いたトピックス ブッダもキリストも誕生日は分からない で話題になりました「三仏忌の表現」につきましては、さまざまな方からご意見を戴きました。 そのご意見などを元に、関連文献を時系列に並べてみると、その理由が見えてきした。

※なお、あくまでも結論は宗門の決定見解ではありませんので予めお断りしておきます。

涅槃会・降誕会・成道会に関する記述のまとめ

三仏会という表現は見られない
『入衆須知』
1263 「仏三節」と表現
『校定清規』
1274 「仏涅槃・仏生辰・仏成道」とあり、その法要の中に「並同仏忌」とある
⇒三仏忌の混同の一因?
『備用清規』
1311 仏涅槃・仏生日・仏成道とあり、三つの法要を総称する語は見られない
『幻住庵清規』 1317 同上
『勅規』 1335 仏降誕日・仏成道日・仏涅槃日と呼称
『大鑑清規』 清拙正澄 三仏忌の呼称は見られない
三仏忌という表現が現れる
『普済寺日用清規』 1527 達磨忌・永平忌・東洲忌を「三忌」と呼称する (仏忌ではないが言い回しの参考)
『諸回向清規式』 1566 「三仏忌疏語回向文」の項目あり
三仏忌という表現が広まる
『椙樹林清規』 1674 「二祖三仏忌献粥、並びに五大尊献粥諷経」等「三仏忌」の呼称が散見
『禅林象器箋』  1741 無着道忠 誕生会(降誕会)と成道会は忌日ではない
三仏忌という表現の混用の原典
『洞上僧堂清規考訂別録』巻八 面山瑞方 三仏二祖忌の表現が散見。
「三仏は、誕生仏と、涅槃仏と、成道仏」とされるのみで、「忌」「会」に関する考察はない
『小叢林清規』   「三仏及諸祖忌」「仏祖忌及楞嚴會」という表現
三仏忌という表現の混用の進行
『永平寺小清規』 1803 玄透即中禅師 「三仏会」「三仏及諸祖忌」
『明治校訂 洞上行持規範』 1889 「三仏会」
『昭和改訂 曹洞宗行持規範』 1952 「三仏会」と「三仏忌」が混同
『昭和訂補 曹洞宗行持規範』 1967 混同状態。「二祖三仏忌」の記述


[参考]
二祖三仏忌考 伊藤 俊彦  宗学研究 第11・14号
三仏忌について  尾崎 正善
tenjin95さんの投稿

導き出される結論

■三仏忌は三仏二祖忌という短縮形で呼称したものが混用されたものである。

■ 本義ならば「三仏会」または「三仏節」が適当である。

                   ・・・・・かも。
投稿者: kameno 日時: 2005年2月22日 14:12

コメント: 三仏忌の「忌」は、果たして適切か

トラックバックありがとうございました。
たいへん勉強になりました。
私も「忌」という表現には以前から疑問を抱いておりましたが、
こちらで勉強させていただき、まさに目からウロコが落ちました。
これからもこちらにうかがわせていただきます。
よろしくお願いいたします。

投稿者 蘊恥庵庵主 | 2005年2月22日 18:09

図表化お疲れ様でした。
多少はお役に立ちましたでしょうか。

ところで、前のコメントで、拙僧の名前というか名字が晒されてしまいまして……分かるようにしてはいるのですが、一応申し上げます。合掌。

投稿者 tenjin95 | 2005年2月22日 19:17

蘊恥庵庵主さん
コメント有難うございます。
ささいな疑問だったのですが、答えらしきものが見えてきて私自身もとても勉強になりました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

tenjin95さん
コメントの件は修正しました。
一応時系列にまとめてみました。
行持規範でもずいぶん変化してきている様子が分かります。

投稿者 kameno | 2005年2月22日 19:44

> kameno先生

拙僧の件は、早速のお聞き届けありがとうございます。

しかし思うのは、どこまでも典拠があるかと思っても案外最近のことって有るものです。三仏忌なんて、けっこう大事だと思っておりましたが。。。

投稿者 tenjin95 | 2005年2月22日 20:47

古くからの慣習と思われていることでも、歴史が浅いという事例はいくらでもありますよね。

ただ、三仏忌については、呼び名が異なっているだけであって、仏祖祖師を敬う心はまったく変わらないと思います。

投稿者 kameno | 2005年2月22日 20:55

kamenoさん、トラックバックありがとうございました。
私も記事を書きながら、何故「忌」という字を使うのか、と考えておりました。
何事においても、疑問はそのままにしておいてはいけないものなのですね。
今回は、たいへん勉強になりました。
またよろしくお願いいたします。

投稿者 lapis | 2005年2月22日 21:21

lapisさん、コメント有難うございます。
いろいろと関連情報を調べて検索するうちに貴サイトにたどり着きました。よろしくお願いいたします。

投稿者 kameno | 2005年2月22日 23:22

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