モンゴルに日本の核処分場計画

モンゴル核処分場計画:廃虚の村に原発の夢...現地ルポ

日本と米国がモンゴルに国際的な核廃棄物の貯蔵・処分場を初めて建設する極秘計画が明らかになった。モンゴルは「核のゴミ」を引き受ける見返りに、日米による技術支援で原子力発電所の建設などももくろむ。地下資源が豊富なモンゴルが原子力を必要とする理由は何か。モンゴルが国内初の原発を建設したいと切望する最有力候補地、中部ゴビスンブル県バヤンタル(豊かな草原の意味)村を訪ねた。
◇見返りに技術支援
首都ウランバートルから東南に約200キロ。中国国境に向かう鉄道沿いに、蜃気楼(しんきろう)のようにたたずむ廃虚のビル群が姿を現した。
群青の空の下、乾いた風以外は物音ひとつしない広漠の大地。その中にポツンと、90年代初めまで駐留した旧ソ連空軍部隊が残した5階建て士官宿舎が10棟。住民がひとつの建物に住む以外は、どのビルも窓ガラスなどが持ち去られた廃虚だ。
日米がモンゴルで核廃棄物処分場の建設計画に乗り出した昨年9月、その「見返り」としての原発立地に、モンゴル原子力開発計画トップで物理技術研究所のチャドラー所長が、ここを「最適地」に選んだ。ソ連軍が残した舗装道路、鉄道、電線などがあるからで、原子炉冷却用の「豊富な地下水や大きな河川も近くにある」という。
しかし、さらに北東40キロの第2候補地バヤンジャルガン村や第3候補地ダルハン村周辺は、乾燥しきった大地。地図には湖があるが、枯れていた。これでは原子炉を冷やす大量の水が期待できない。
モンゴルの国土は日本の約4倍、人口は大阪市とほぼ同じ約250万人、1人当たりの国民所得は日本の30分の1だが、石炭、金、銅、ウラン、レアアースなどの鉱物資源が眠る。
中でも世界最大とも言われるウランを産出、活用すれば「石油や天然ガスで潤う中東諸国のような豊かな国になれる」(経済産業省幹部)との夢がある。
チャドラー所長も「レーニンの言葉を借りれば、ソ連はエネルギーで16もの衛星国を支配した。モンゴルの原子力開発に協力した国は、この国で強い影響力を発揮することができる」と語り、日本の技術支援に強い期待感を示した。
◇中露排し発展模索
モンゴルが原子力技術を求めるのは、旧宗主国の中国とロシアにはさまれた内陸国であるためだ。
モンゴルには豊富な石炭が埋蔵しているが、モンゴル南部で開発予定の巨大炭鉱から中国天津港まで鉄道で1100キロ、ロシア極東ナホトカ港まで3000キロもある。大量輸送が可能な豪州炭、南アフリカ炭などとの価格競争には勝てない。
「石炭は結局、中露両国から安く買いたたかれるだろう。これからは、原子力燃料製造など高付加価値産業を育てなければ、豊かな国は永遠に実現しない」(モンゴル政府関係者)との危機感が強い。
国営原子力会社モンアトムのバダムダムディン会長兼最高経営責任者は2020年にはモンゴル産ウランを原料とした核燃料加工を始める目標を示し、「技術力のある東芝と協力したい」との構想を語った。さらに「民主化直後の92年から無償援助を続けた日本の人々の気持ちは、モンゴル国民の心に届いている」と強調した。
しかし、東京電力福島第1原発事故を機に、モンゴルでも原発の安全性への懸念が高まった。モンゴル国営モンツァメ通信のアディヤソレン記者(政治担当)は「計画が事実ならば極めて危険な話。国民の健康と安全を損なう恐れがある」と警戒感を隠さなかった。
それでも原発推進派は「モンゴル国民は日本に強い親しみを感じている。日本の原発なら受け入れる素地がある」(チャドラー所長)との期待がある。
(毎日新聞2011/5/9)


原子力発電計画を進めるためには、最終的に核廃棄物をどのように処理するのかが問題となります。
日本国内には、処分する場所が無いために、福島第一原子力発電所では原子炉の上に使用済み核燃料プールが配置されるという設計になっており、これが今回の事故被害を拡大させる原因となりました。

そんな中、モンゴルで計画されている核処分場についての報道です。
日本にとっては核処分場を得られ、ウランやレアメタル資源が確保できる、原子力技術を輸出できる・・・・モンゴルには原子力発電所の技術の支援や資金提供が得られる・・・・双方の利益にかなったものとされます。

処分場の候補地は、
・バヤンタル村
・バヤンジャルガン村
・ダルハン村
などなど。
第三候補の ダルハン は、一昨年訪問したことがある製鉄の町です。一面の豊かな草原と、その北部に広がる針葉樹森林が印象的な場所でした。

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モンゴルでは、電力の大部分を石炭による火力発電所によって賄っています。
必ずしも安定的な供給がなされているとはいえません。
首都、ウランバートルでは、モクモクと煙を上げる発電所を目の当たりにしました。
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ウランバートル市内の石炭火力発電所

経済成長に電力は欠かせません。
その中で、ウラン資源を有するモンゴルにとっては「クリーン」とされ電力の安定供給が期待できる原子力発電所は欲しい施設なのでしょう。
しかし、幸せって何だろう » の記事で書いたように、本当にそのような生活が幸せをもたらすかどうかは疑問です。
福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、これまで以上に私たちはよくよく考えていくことが大切だろうと思います。

 

 

東日本大震災に対して、モンゴルでは、震災報道直後全ての公務員を対象に給料1日分の募金が呼びかけられ、さらに一般国民や企業の自発的な募金運動に発展し、震災発生2週間以内に1億2500万円以上の義援金が寄せられました
親日国モンゴルに心から感謝します。

「モンゴル国民は日本に強い親しみを感じている。日本の原発なら受け入れる素地がある」・・・
モンゴルにも、日本にも不幸をもたらすことの無いよう、考えていきたい見逃すことができない重要なニュースでした。



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投稿者: kameno 日時: 2011年5月 9日 08:09

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