放射性物質蓄積量データ公表

文部科学省は、5月6日、福島第一原子力発電所から80kmの範囲内の地表面から1mの高さの空間線量率、及び地表面に沈着した放射性物質の汚染状況データを公表しました。
文部科学省及びDOE航空機による航空機モニタリングの詳細

○測定実施日:4月6日以降
※準備状況、天候によって実施日の変更あり。
○航空機:
1.文部科学省(財団法人原子力安全技術センター)
・民間ヘリコプター(BELL412)
2.米国DOE
・小型機(C-12)
・ヘリコプター(UH-1)
○対象項目:福島第一原子力発電所から80kmの範囲内の地表面から1mの高さの空間線量率、及び地表面に沈着した放射性物質の汚染状況
※米国DOEにおいては福島第一原子力発電所から60kmの範囲内、文部科学省においては60~80kmの範囲内についてモニタリングを実施。
○公表方法:DOEのモニタリング結果と併せて文部科学省より公表。

 

公表された線量測定マップはこちらです(文部科学省のページにリンク)


そのうちの、地表面への蓄積量データはこちらです。
201100506-01

ようやく公表されたデータ・・・・・その深刻さに改めて驚かされます。

赤色のエリアが 3,000,000-14,700,0000 Bq/m2
黄色いエリアが 1,000,000-3,000,000 Bq/m2
緑色のエリアが 600,000-1,000,000 Bq/m2
水色のエリアが 300,000 - 600,000 Bq/m2
青色のエリアが 300,000 Bq/m2 以下
という測定結果でした。

参考までに、チェルノブイリ原子力発電所事故での汚染マップも併せて比較してみます。

201100506-02
(ウィキペディア「チェルノブイリ原子力発電所事故」項より引用)

上図を見ると、

チェルノブイリ原子力発電所事故での汚染マップでは
40 Ci/km2 以上の区域が Confiscated Closed Zone (強制隔離区域)
15-40 Ci/km2 が Permanent control zone(永久管理区域)
5-15 Ci /km2 が Periodic control zone (定期管理区域)

とされています。

単位が Ci/km2 ですから、これを Bq/m2 に変換すると、

1Ci=3.7×10の10乗Bq=37GBq ですから

Confiscated Closed Zone (強制隔離区域)は 1,480,000 Bq/m2 以上の区域
Permanent control zone(永久管理区域)は 555,000~1,480,000 Bq/m2 の区域
Periodic control zone (定期管理区域)は 185,000~555,000 Bq/m2 の区域

ということになるでしょう。

これを元に、改めて福島第一原子力発電所事故による地表面への蓄積量データを見てみましょう。
数値を比較すると、おおむね 赤色+黄色のエリアが「強制隔離区域」、緑色のエリが「永久管理区域」に相当するとみてよいのではないでしょうか。
(あくまでも簡易的な単位変換に基づく計算上の数値です)

今後、政府により強制隔離区域、永久管理区域が設定されるはずですが、これだけの広大な地域が設定されることも現実的になってしまいました。
本当に残念なことです。


ソ連政府は、チェルノブイリ原子力発電所事故発生から36時間後には住民の避難を開始、1週間で半径30km以内に居住する全ての人間(約11万6000人)を移住させました。
対し、日本政府は、これだけ深刻な汚染が3月半ばに発生しているにも係らず、「ただちに健康に影響は無い」として、データを公表せず、強制移住させるまでに一ヶ月以上も要しています。

チェルノブイリでは、放射性物質の影響は要素は半減期が8日の放射性ヨウ素から、時間の経過により影響は段々半減期の長いストロンチウム90やセシウム137によるものへと変化しています。
このうち、特に半減期が長く(30年)現在最も高いレベルのセシウム137は土壌表層にあるため、継続的に植物や昆虫、キノコ類に吸収されていることが調査でわかっています。
1997年頃の調査では、汚染区域内の植物中のセシウム137の濃度は上昇しており、汚染が地下の帯水層や、湖や池のような閉じた水系に移行していく傾向が見られます。

福島第一原子力発電所周辺でも同じような経過を辿るのでしょうか。

目を背けたいことですが、現実に起こっていることです。



追記

先日のブログ記事 原発周辺警戒区域を の図は、その場所に一年間居た場合どれだけの放射線の影響を受けるのか という図です。
今回の図は、その放射線の原因となっている放射性物質が土壌に蓄積された量の図という違いがあります。

投稿者: kameno 日時: 2011年5月 7日 17:59

コメント: 放射性物質蓄積量データ公表

冷静に受け止めなくてはならない現実ですね。

以前は、自分や家族を安心させるための情報収集をしていましたが、これからは今ある現実にどう対応していくかという意識に切り替え、そのために必要な情報収集に専念します。

今回の記事はチェルノブイリとの比較が参照できたので非常に有益でした。

しかしながら......日々葛藤の連続です。

投稿者 叢林@Net | 2011年5月 8日 02:24

叢林@Netさま
かなり厳しい観測結果ですが、現状を踏まえ効果的な対策を「早期」にとっていくことが必要だと思います。
チェルノブイリでの事故発生から25年に至っている経験を元に、国を挙げて一丸となり立ち向かっていくことで、たとえ事故発生当初の汚染状況は似たような状況であっても、25年後にはきっとチェルノブイリよりも格段に良い結果になっているはずです。
そして、これは決して福島だけの問題では無いと思います。

投稿者 kameno | 2011年5月 8日 08:57

今日、少し話題になったのでお聞きしたいのですが・・・。

今日集いし関係者は、今回掲載して頂いた線量マップの「薄青色」「青色」地域の方々だったのですが、取り敢えず日常生活で気を付けるべきことは何かということが話題になりました。

初歩的なことでいいので、チェルノブイリの事例と比較をして何か良いアドバイスがあったらお願いします(一日○○時間以上の外出を控える、子どもたちに砂遊びはさせない等etc.)。

不用意な一言で風評の源にしたくもないもので・・・。

投稿者 叢林@Net | 2011年5月11日 01:16

叢林@Net さま

図の青い部分、では、基本的に国や福島県のモニタリングに常に留意して線量が毎時数マイクロシーベルトのオーダーであれば、それほど神経質になる必要はないと思います。

しかしながら、実際問題としてに地域にいらっしゃる方、特に小さいお子さんをお持ちの方にとっては不安なことも多いと存じます。
放射線に関する問い合わせ窓口が福島県により設置されておりますので、きっと適切なアドバイスがいただけるはずです。

電話:024-521-8127(受付時間:午前8時30分から午後9時まで(土日祝日含む))

なお、福島県以外の機関においても問い合わせ窓口が開設されています。
健康相談ホットライン(放射線に関する健康相談)(日本原子力研究開発機構原子力緊急時支援・研修センター等)
電話:0120-755-199(受付時間:午前9時から午後9時まで)

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実際には25年前に発生したチェルノブイリを経ても、微量の放射線を長期間受けた場合に人体にどのような影響を及ぼすのかということは判っていませんし、専門家による意見もバラバラです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85#.E5.BD.B1.E9.9F.BF

投稿者 kameno | 2011年5月11日 02:59

情報、ありがとうございます。

実は、県の窓口の評判がちょっと・・・。

ですので、詳細は県外のホットラインの方に聞いてみたいと思います。

なんか、当事者の感覚としては、日々賞味期限の切れた食べ物を子どもたちに提供しているような感覚です。

確かにただちに健康に影響はないのでしょうが・・・やはり子どもには賞味期限の切れてない食べ物を食べさせてあげたいです。

さすがにマップの赤色&黄色エリアは、某焼き肉店のユッケ並みの危険数値なのでしょうが(汗)

投稿者 叢林@Net | 2011年5月11日 22:45

叢林@Net さま

>実は、県の窓口の評判がちょっと・・・。

それは良くないことですね。
地域に密着した情報提供者こそ、きちんとした情報提供をしないといけないはずです。
放射線が人体に及ぼす影響は、直ちに影響があるほど高い線量についてはある程度わかっているのですが、「直ちに影響が出ない」低い線量ではどのような影響があるのか、誰もわかっていないということも厄介です。
また、汚染度も一様ではなく、数メートル単位で詳細に計測すると局所的に高い場所もあるでしょうし低い場所もあります。
人によって影響の出方も異なるでしょう。
何処までが安全で何処からが危険かという一定の見解が出せないというジレンマがありますね。


>さすがにマップの赤色&黄色エリアは、某焼き肉店のユッケ並みの危険数値なのでしょうが(汗)


チェルノブイリでは放射性物質の汚染状況が同じ場所では25年経った今でも立ち入りが制限されているという事実があります。
ただ、初期段階での対処次第では、福島では状況を変えることは出来ると思います。

投稿者 kameno | 2011年5月12日 04:40

少しだけ言葉を補足させて下さい(汗)

>実は、県の窓口の評判がちょっと・・・。

一時期、問い合わせが多くて繋がりにくいということが主たる理由です。
誤解を招く表現だったと思います。
もちろん担当する方にもよるのでしょうが、担当者の方も不特定多数の県民の方を相手にするので大変だろうと感じています。

投稿者 叢林@Net | 2011年5月12日 11:36

叢林@Netさま
>一時期、問い合わせが多くて繋がりにくいということが主たる理由です。

それだけ不安に思っている方が多いということなのでしょうね。
神奈川でも農作物、水産物などから放射線が検出されていますので、福島のみならず広い範囲が当事者といえます。

投稿者 kameno | 2011年5月13日 12:54

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