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近隣寺院で会合があった際に、雑談の中でここ1,2年で「自宅葬」の割合が急速に増えた、という話題が出ました。
これまでは自宅で葬儀をあげる方は年々減少傾向にあると思われがちでした。
図・葬儀施行場所の割合(%)左H8年、右H13年
((社)全日本冠婚葬祭互助協会調査・平成8年度調査の回答=2,169件、平成13年度調査の回答=4,536件)
上の調査結果では平成8年から13年の間に、自宅で葬儀を行う割合が急速に減って、斎場での葬儀が増えていることがわかります。特に東京、南関東、中国、九州地方で顕著です。
統計上はまだ自宅葬が減少傾向にあるということしか見えてきません。
専門斎場が増加した理由を考えると、次のようなことが考えられます。
(1) 参列者に対応するためのスペースや、接客対応の人手、食事の用意、祭壇などを手配する手間が不要となる。
(2)地域コミュニティーの機能喪失、近所付き合いの減少、核家族化、少子高齢化などの社会的変化。
(3)葬儀社にとっては、自宅葬よりも自前の斎場のほうが利益が多いため、斎場を勧める傾向にある。
など。
では、最近「自宅葬」が増えているということはどういうことなのでしょうか。
地域コミュニティーの機能喪失、近所付き合いの減少、核家族化、少子高齢化などの社会的変化により、葬儀の規模自体が縮小傾向にあることは間違いありません。
もちろん、従来の通り多くの生前関係された皆様に見送っていただくという葬儀形式もありますが、一般に案内はせずに、家族やごく親しい身内のみだけで行なうという葬儀も増えています。一般焼香にいらっしゃる方が殆ど居ない葬儀です。
葬儀規模多様化の傾向はこれからも進んでいくでしょう。
家族葬を希望する場合には、葬儀社の専門斎場で行なうという理由が無くなってきます。
つまり、上で挙げた(1)の理由が無くなるということです。
家族葬であれば、自宅の一室で行なうことで充分なのです。
例えば、自宅(あるいはマンションなど)の一室で、ほぼ枕飾りに準じた簡単な祭壇を設けた中で行なう葬儀です。
規模は小さいのですが、きちんと菩提寺の僧侶が出向いて枕経、通夜、葬儀、出棺、火葬場でのご供養、初七日の法要・・・と、葬儀の規模の大小に関らず何ら変わらずに執り行います。
ところが、葬儀社の立場からすれば、基本的にはこのような自宅葬はあまり行いたくないというのが本音でしょう。
理由は(3)で挙げたとおり、自前の斎場で行なう葬儀のほうが葬儀業者としては利益を挙げることができるからです。
葬祭業者の葬儀費用一式への「葬儀費用明示化の流れ」は、ブラックボックス化された葬儀費用一式を明瞭にしていく試みの一つといえます。
今後、家族葬が増えていく中で、さらに自宅葬が増えていくことになれば、葬祭業者としては死活問題でしょう。実は、寺院の危機というよりは、葬祭業者の危機のほうが深刻なのだと考えています。
数年後に葬儀施行場所の調査結果が出れば、専門斎場から自宅葬への回帰の状況が結果として表れてくるはずですので、もう少し状況の推移に着目していきたいと思います。
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