阪神大震災から15年

阪神大震災発生から15年目を迎えました。
犠牲となられた6434人の方に心より哀悼の意を捧げます。

震災の記憶を失うことなく、その原点を確認し、今後の震災対策を充分に行なうことが大切でしょう。

日本のみならず、世界各地でも毎年のように大震災が発生しています。
何時何処で発生しても不思議ではありません。


先日大地震に見舞われた中米・ハイチではようやく各国の救援活動が本格化し始めました。
日本からの医療チームもまもなく現地入りするそうです。
しかし首都直下を襲った地震により建物、交通インフラに大きな被害が出たため、救援活動は難航しています。
治安悪化も大きな問題です。
犠牲となられた方には弔意を表します。被災された方々には一日も早い復興を願い、救援活動が効果的に進みますことを祈念いたします。


日本を振り返ると、防災関連の予算が大幅に削減されつつあるということが懸念されます。
その一例として公立学校の耐震工事予算では、中国・四川大地震の際に小中学校で大きな被害が出たことから、文部科学省は2008年に各自治体に学校の耐震診断結果の公表を義務化し、耐震への補助金の割合を引き上げていました。学校施設の耐震化率は2009年4月現在で67%。これから工事が必要な学校施設は実に約2万5000棟にも上ります。
しかし、昨年、政権交代が行なわれ、2010年度に着工予定であった公立小中学校5000棟の耐震化工事関連予算が大幅に削減されてしまいました。
とても残念なことです。


公立小中学校など2800棟、耐震化工事先送り 来年度 高校無償化で予算削減

大地震で倒壊の恐れがあるとして、全国の自治体が来年度中に着工予定だった公立小中学校など約5000棟の耐震化工事について、文部科学省の関連予算が約63%削減されたことがわかった。
2800棟に相当する規模という。学校の耐震化は国が最大3分の2を補助してきたが、鳩山政権が掲げた「高校授業料の実質無償化」で約3933億円の予算が必要となり、しわ寄せを受ける形になった。
(2009年12月28日 読売新聞)


小中学校の耐震化工事は、子どもたちの安全を守ると同時に、地域の防災拠点の確保としても重要な意味があります。
是非、現政権にはこのような予算の割振りの根本的な考えを見直していただきたいものです。
 

各市町村には学校や公園などに一時避難場所、広域避難場所、避難所が定められています。
一時避難場所は一時的に集合する場所、広域避難場所は地域住民の避難場所。避難所は、家を失ったり、二次災害の恐れのある人々が一時的に避難・宿泊する施設です。

ところが、殿避難場所は地域住民全員分の容量があるわけでなく、阪神大震災では、応急の避難所となった学校などに収容できたのは、被災者の僅か12%程度であったといいます。

残りの9割弱は電気、水道、ガス、電話のインフラがストップした自宅内や車、公園、グラウンドで生活をしなければなりませんでした。

問題となるのは大災害時の避難場所の収容能力です。
どの市町村も概ね十数%程度しかないのです。
従って、各自宅での対策が最低限必要となりますし、そして公立小中学校の建物は避難所として重要な役割を果たします。

同様に、公共の避難所以外にも寺社のような場所が果たすべき役割も大きいともいえます。

阪神淡路大震災から12年の記事中で、阪神・淡路大震災ボランティア緊急救援活動の軌跡として、いかに寺院、僧侶が緊急救援活動にかかわったかをまとめています。

このように神社・仏閣は歴史的・文化財的な価値が高いだけでなく、被災時には地域の拠点として避難所の役割も期待されます。
それゆえ、社寺建築の地震対策が急がれます。
公立学校の耐震対策が国や市町村の重要な事業であるならば、寺社の耐震対策は寺院、神社の重要な事業であります。


しかしながら、寺社の建築物には耐震に対する配慮が必要とはいえ、なかなか簡単には行きません。
既存建築物に免震工法を後から付加するにしても、現在の建築物を一度持ち上げるなど大掛かりとなり、費用の面でも莫大な資金が必要となります。

これまでの事例から、倒壊した寺社のうち、瓦葺、古い木造構造の建物が多いということが判りました。
寺社は屋根重量が構造に対して過剰に大きいという木造伝統工法の顕著な例であるため、揺れによる被害をまともに受けやすいのです。

耐震対策の際の構造計算も困難です。
木造住宅の耐震検討に適用される「壁量規定」、すなわち筋交、耐震用合板などを建物の規定割合以上に設置するということが必要となるわけですが、寺院、特に本堂では規定量の壁を設けることが難しいことがあります。
そこで、近年は構造計算自体を、構造それぞれの変形能力、地震エネルギーの吸収能力を評価し、最大変形がどの程度なのかを評価する「限界耐力計算」による評価が行なわれるようになってきました。


その中で、限られた予算の中で効果的な耐震工事はどうあるべきかを建築物ごとに評価し、対処療法的に行なっていくことが現実的で最も効果的な対策であるかと思います。


地震災害に強い構造物があって初めて地域の防災拠点となりうるということであり、併せて定期的に防災訓練を行い、日常から災害時の対策を整える ということが大切なことといえましょう。


■関連リンク記事


阪神・淡路大震災ボランティア緊急救援活動の軌跡よろずかわら版縮刷版 (SVA(曹洞宗国際ボランティア会=当時)神戸事務所)
阪神・淡路大震災フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
阪神・淡路大震災に関するデータベース

投稿者: kameno 日時: 2010年1月17日 08:42

コメント: 阪神大震災から15年

お寺の場合、山の根っこに伽藍があるケースが多いので、地震や火災以外にも土砂崩れをはじめとする風雨雪災害にも配慮しなければなりませんね。

投稿者 天真 | 2010年1月22日 00:29

天真さま
仰るとおりで、裏山に近接した寺院も多いでしょう。建物の災害対策と併せて、境内地及びその近傍の状況を考慮した対策が必要となりますね。

投稿者 kameno | 2010年1月22日 01:17

コメントを送る