青線を無くす闘い

今日の話題は青線についてです。
といっても、戦後GHQによる公娼廃止指令後にあった非合法の売春地域のことではありません。


上永谷地域は、かつて田畑の耕作地が広がっており、その周囲に畦道や小川がたくさん広がっていました。また、段差に設けられた法面もあったことと思います。
明治維新後、明治6(1873)年の地租改正作業により、一筆地測量がなされ、それぞれに地券が発行され、所有者と面積が付与されていきました。
(この際の求積がとてもいいかげんで、貞昌院の裏山は10倍もの縄伸びがありました)

翌明治7(1874)年の「地所名称区別改定」に基づき、官民の区分けがなされていった際に、道路、水路、畦畔、堤などのうち、民有地認定されなかったものが、地番も付与されず官有の公共用地として認定されることとなります。

地租改正の一連の作業は後に土地台帳として整備され、こうした中で、土地台帳附属地図(旧公図)において、里道は赤く塗られ、官有水路、畦畔、水路、堤などは青く着色され表示されることとなりました。

これが、赤線、青線の語源であります。

貞昌院の境内内、周囲にも赤線と青線が存在しています。
公図とGoogleの航空写真を合成すると、どこが赤線、青線となっているかが判ります。
(公図はかなりゆがんでいるため、位置あわせに苦労しました)
aosen-01.jpg aosen-02.jpg
右が山門付近を拡大したものです。青線が境内に入り込んでいますね。


貞昌院境内周囲の境界確定作業は終了していて、隣接地との境や境内地としての使用には何ら問題はないのですが、特に境内地内に青線が存在することは、気持ちの良いものではありません。
なお、赤線部分は参道及び墓参道としての部分ですので、このままでも良いと考えます。

青線は、明治時代の、地所名称区分による区分では官有地第3種に編入されていたもののはずですが、貞昌院に保存されている社寺明細図には民有地第一種と明示されており、なぜ、この部分が青線となってしまっているかを推測するに、やはり段差のある土地の法面であった部分であると考えるのが妥当でしょう。


このことを10年ほど前に大蔵省(現財務省)に資料を持参して問い合わせを行ないましたが、当時は手続きが半端でなく大変とのことで、お墨付きを一筆いただくに留めておりました。

ここ数年、青線の時効取得の判例も増えてきたため、この際ですから、青線の取得に挑戦してみることにしました。
払い下げのように「時価買取」は馬鹿馬鹿しいので、あくまでも無償による「時効取得」でなければ意味がありません。


公共用財産の時効取得の要件は

・長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置されたこと
・公共用財産としての形態、機能を全く喪失していること
・その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続ていること
・公の目的が害されるようなこともないこと
・もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなったこと


であります。
(最高裁判所判例 昭和51年12月24日)

このあたりの資料を揃えるだけ揃えて、財務省との協議を重ねてきました。

併せて、時効取得の要件を説明する沿革説明書の作成がポイントとなりますね。

(1)いつ、誰が、どのように占有を開始したか
(2)いつ、誰が、どのように占有形態を変更したか
(3)どのように継承がされたか
(4)現在は、誰が、どのように占有しているのか
(5)代理占有している場合は、いつから、誰が占有代理人となって、どのようにしているのか、また、畦畔を含めて、本番土地とともに代理占有しているか 

などなどについて、客観的に判断できる資料・証拠を纏めて提出していきます。
それにしてもメンドクサイ><

20090908-03.jpg


昨日ようやく財務省による実地調査の段階まできました。
これで時効取得が具体的に進みそうです。

投稿者: kameno 日時: 2009年9月 8日 12:47

コメント: 青線を無くす闘い

亀野さん、こんばんは
これは 一般に「青地」と言われている土地の事ですね。矢張り、幅もあり、面積のある土地の事ですから、「青線」よりも「青地」の方が聞こえも良いと思います。如何でしょうか?

投稿者 ちのしんいち | 2009年9月 9日 00:21

ちの様
いつもお世話になっております。
さて、国や地方自治体、不動産業界、裁判所などでは青地・青道(あおどう)よりも青線を使います。
http://www.pref.niigata.lg.jp/kouhou/1198774857122.html
また、いわゆる売春地帯の俗語「青線」の方が流布してしまったために、青線の聞こえが悪くなってしまっていることも、残念ながら確かです。

だからこそ用語は正しく使っていきたいと考えております。

投稿者 kameno | 2009年9月 9日 05:09

う?む。。。

勉強になります! というより、今まであまりにも私自身が無関心過ぎました(汗)

そのチャレンジ精神には頭が下がりますm(__)m

投稿者 叢林@Net | 2009年9月11日 10:41

叢林@Netさま
登記を伴う権利関係の名義変更はとても煩雑で大変だということを実感しています。
今回の件は、ようやく最終段階にはいりましたけれども、それにしても長かったです。
大変な分、実際にやってみるといろいろと勉強になることも多いです。

投稿者 kameno | 2009年9月12日 09:51

国有地、市有地といって守られるのは、その土地が公共の目的に供されている行政財産であるからであって、明示または黙示の公用廃止があれば普通財産となる。行政財産、普通財産というのは国有財産法や地方自治法に定められている行政用語。
従前より、司法並びに行政は行政財産は取得時効の対象にならないとしている。それは、公益を守る立場から当然である。いわゆる旧赤線旧青線は明治の地租改正の当時、公図が作成された当時は行政財産であったことに相違はないであろう。地域集落の共有財産であったに違いない。
しかしながら、いつの時か、時代が流れ、社会情勢も大きな変化を遂げながら現在に至るまでの間に、その当時の「公の目的」に社会情勢が合致しなくなって、当時の里道、水路はその機能も形態も喪失してしまっている。
この態様は明らかに行政財産の用件を備えておらず、であるならば普通財産として国あるいは市町村はこれを処理するべきである。
行政財産は、行政目的に沿って、行政執行に直接的に供されるものであるので、これを処分したり、行政の執行に支障を及ぼすような運用をすることは適当でないので、原則として私権の対象とすることが許されない。これに対し、普通財産は直接に行政目的を帯びないもので、その経済的価値の発揮によって行政に貢献する公有財産すぎないので、原則として私法の規定が適用されてしかるべき。
であるから、当然に取得時効は認められるべき

投稿者 青森 赤史 | 2012年9月11日 18:26

青森様
コメント有難うございます。
行政側で普通財産として扱ってくれればよいのですが、中々簡単には行かない場合がほとんどです。
どうにかならないでしょうか。

投稿者 kameno | 2012年9月12日 18:23

大変勉強になりました。
財務省の実地検査を受けるには どのような努力をされましたか。
青線等の実地検査を受け入れられるための注意点なふぉ教えてくださいませ。

投稿者 ニシムラ善徳 | 2015年11月 9日 08:14

ニシムラ善徳さま
コメントありがとうございます。
財務省の実地検査は、実質最終段階です。
そこまで行くのが長い道のりでした。
とにかく、コツコツと客観的かつ合理的な「時効取得の要件を説明する沿革説明書」のための資料を集めることから始める必要があります。
あとは、財務省(地方支所)の窓口にこまめに足を運ぶことでしょうか。
土地家屋調査士等に相談されることもお勧めいたします。

投稿者 kameno | 2015年11月 9日 21:59

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