お釈迦様の誕生日と甘茶

今日4月8日はお釈迦さまの誕生日。釈尊降誕会(しゃくそんごうたんえ)です。
お釈迦さま(ゴータマ・シッダッタ)がこの日に生まれたという伝承に基づきます。

⇒なぜ今日がお釈迦様の誕生日なのかは こちらをご参照ください

釈尊降誕会には、この他に佛生会(ぶっしょうえ)、浴佛会(よくぶつえ)、龍華会(りゅうげえ)、花会式(はなえしき)、花祭り(はなまつり)など、様々な呼び名があります。

お釈迦さまが誕生された時、大自然が祝福し、天から龍が飛来して甘露の香湯を潅いだという故事に基づき、様々な草花で飾った花御堂(はなみどう)を作って、その中に灌仏桶を置き、甘茶を満たします。

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今日の記事は、この甘茶にテーマを絞って書いてみます。

甘茶とは、本州?九州にかけての山地に自生するユキノシタ科の落葉低木「アマチャ」から作られたお茶です。
初秋に枝葉を刈り取り、数日間天日にて乾かします。
さらに水を噴霧し発酵させた後、揉みながら乾燥するとこのようになります。

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貞昌院でも先日の花まつり法要の際に甘茶を皆さんにお飲みいただきました。
実に素朴な甘みがいたします。その奥にお茶らしい微かな苦味もあります。

砂糖などは一切使用していないのに何故こんなに甘いのか不思議ですね。
その秘密は甘茶に含まれる甘味成分の d-フィロズルチン です。
ちなみに微かな苦味成分は、発酵過程で d-フィロズルチン として加水分解しきれなかったフィロズルチン 8-グルコシドが少し残っていることとタンニンによるものです。


この d-フィロズルチン は、実に砂糖の数百倍?千倍もの甘さがあると言われていますが、消化吸収されることが殆どないため、カロリーオフの健康食品なのです。

「フィロズルチン」という名前の中に「ズルチン」という言葉が含まれています。
少し年配の方は人工甘味料のズルチンを想起するのではないでしょうか。
ズルチン は、戦後になってサッカリン同様、大量に使用された人工甘味料です。中毒事故や肝臓機能障害、発癌性が認められたために使用禁止となりました。

しかし、甘茶の d-フィロズルチン は天然の甘味成分であり、人工的に合成される ズルチン とは全く異なるものです。
化学式を比較してみましょう。




d-フィロズルチン (d-phyllodulcin)
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ズルチン (dulcin)
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甘茶は抗アレルギー作用、歯周病予防効果などもあり、また糖尿病の方でも安心して使用できる甘味料としても重宝されているのです。


今日一日、本堂の前にお釈迦様の誕生を祝う花御堂をお飾りしています。
境内は数日前から散り始めたソメイヨシノの花吹雪につつまれ、まさに誕生の日を大自然全体で祝福しているようであります。


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写真は昨日夕方、本堂脇のソメイヨシノから昇る月

投稿者: kameno 日時: 2009年4月 8日 11:20

コメント: お釈迦様の誕生日と甘茶

いつも貴重なトリビアネタをありがとうございますm(__)m

この着眼点と情報収集力に脱帽します。

投稿者 叢林@Net | 2009年4月 8日 21:50

年代的にサッカリンは知っていても、ズルチンは初耳でした!
フィロズルチンとズルチンは、化学式で見ると
まったく別物なのですね。とても興味深いです。

甘茶と甜茶の甘みは似ているようなので、ググって
みたところ、甜茶にはユキノシタ科の植物が含まれる
というところまでしか調べられませんでした。
甜茶の甘み成分はルブソシドということで、甘茶の
フィロズルチンとは別物か???

副住職のブログは、探究心をかきたてます(^^)。

投稿者 宝船 | 2009年4月 8日 22:39

叢林@Netさん
調べを進めることにより思わぬ発見があったり、楽しいです。

宝船さん
ズルチンは有名なところでは駄菓子屋で売られていたジュースの粉とか・・・一昔前の駄菓子にはチクロやサッカリンなどと同様必ずといっていいほど入っていた筈ですから知らないところで口にしていたりしたかも知れませんよ。

非糖質の天然甘味の主なものを列挙すると
 甘茶(アマチャ)・ユキノシタ科・d-フィロズルチン
 甘草(カンゾウ)・マメ科・グリチルリチン
 羅漢果(ラカンカ)・ウリ科・モグロシド
 甜茶(テンチャ)・バラ科・ルブソシド
 ステビア・キク科・ステビアサイド
 ソーマトコッカスダニエリ・クズウコン科・ソーマチン
(植物名・科・甘味成分の順)

甜茶のルブソシドはd-フィロズルチン よりはむしろステビアに含まれるステビアサイドに近い分子構造をとりますが、人により感じ方はちょっと違うのかも知れないですね?

投稿者 kameno | 2009年4月 9日 00:35

kameno様

 甘茶を掛ける様、微笑ましいですね!
甘茶は甘いけど、ちょっと苦味が飲みにくかったりします。冷めると特に苦味を強く感じます。
d-フィロズルチンが甘味 。苦味は発酵過程で分解しきれなかったフィロズルチン 8-グルコシドとタンニンなんですね。ヘぇーなるほど!私のところでは美味く甘茶を頂くために気を付けている事があります。?毎年新しい甘茶を買う?甘茶を沸かしてポットに入れ温かい甘茶を頂く
そうすることによって、苦みが少ない飲みやすい甘茶となります。  粉ジュース懐かしいですね。(*^_^*)

投稿者 ゼラニウム | 2009年4月 9日 08:28

ゼラニウムさん
甘茶の苦味を抑える工夫を有難うございます。
暖かい甘茶はいいですよね。飲料メーカーで商品化すればいいのにとつくづく思います。
渡○ジュースの素とか、懐かしい味ですね。記憶の片隅に刻み込まれています。きっと今味わったら懐かしい記憶と共に蘇ってくることでしょう。

投稿者 kameno | 2009年4月 9日 10:51

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