列車の遅延運休から学ぶこと

ダイヤ乱れ、遅延運休5200件 JR発足後最悪

 鉄道のダイヤの乱れが年々ひどくなっている。05年度に起きた列車運休や30分以上の遅れ(輸送障害)は5201件で、JRが発足した87年度以降で最悪を更新した。時刻表が複雑・過密化して乱れやすくなったことに加え、鉄道各社の過度のコストダウンが原因との指摘もある。ダイヤが乱れた結果起きる事故も絶えず、専門家は「障害の中身を分析し、対策をもっと練るべきだ」と警告する。
 鉄道会社は輸送障害の内容や原因を地方運輸局に報告する義務がある。国土交通省によると、05年度の報告件数は前年度より396件(8%)増で、90年代前半のほぼ2倍の水準になった。
 中でも、自殺や災害によらない、鉄道会社の設備・車両の故障や人的ミスによる「部内原因」の障害が目立つ。05年度は前年比で27%増。今年9月28日に起きたJR東京駅地下の変電所火災では、JR京葉線が8時間以上止まる事態となった。
 国交省鉄道局は「なぜダイヤの乱れが増えたのか、理由はわからない」とする。だが、関西のある鉄道会社の担当者は、05年度の増加については「05年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故以来、何かトラブルが起きた場合の運転再開に慎重になり、結果的に遅れが増えたのでは」とみる。
 JRグループ7社の輸送障害発生率は私鉄よりもはるかに高い。走行100万キロあたりの発生件数は、JR(在来線)が6.0件に対し、私鉄・地下鉄は2.1件だ。
 JR各社は「私鉄に比べて電車の運転系統が複雑で、運転本数も増やしてきた影響が大きい」と説明する。例えばJR西日本は民営化後、京阪神を結ぶ京都・神戸線と、宝塚、学研都市線や関西空港線を直通する電車を増やしてきた。乗客には便利だが、余裕が乏しくモザイクのようなダイヤが生まれ、いったんどこかでトラブルが起きると影響が広範囲に及ぶことになる。
 また、各鉄道会社が人口減少に備えて進める要員削減などの効率化が、輸送障害を深刻化させているとの見方もある。昨年7月と今年2月に関東で起きた地震では、線路を点検するJR東日本の作業員の手配が追いつかず、復旧が遅れた。大雪が続いた昨冬は、除雪に手が回らず、運休が長引いた例も多かった。
 鉄道各社は「輸送障害を減らす努力は常にしてきた」と強調する。宝塚線事故を起こしたJR西日本は安全関係の投資を大幅に増額し、故障に備えた予備車両の配置や老朽設備の更新を進める。今年3月には所要時間を延ばすダイヤ改定をし、遅れが出にくくした。
 線路の陥没や信号故障などが続くJR東日本は7月、復旧要員の増員など総額70億円の緊急対策を決めた。
 輸送障害の発生率が主要各社で最も高いJR北海道は雪による故障が主因とみて、車両構造の強化に取り組む。
 大手私鉄で最も発生率が高かった阪神電鉄は、故障が多かった車両機器の一斉点検を実施した。
 鉄道関係者は「ダイヤ通り走る時が最も安全。乱れた時は焦りや勘違いから、さらに大きなミスを犯しやすい」と言う。鳥取県のJR伯備線で今年1月、踏切トラブルなどでダイヤが乱れ、単線の作業現場を通る特急の順序が変更になったのを現場責任者が勘違いした。その結果、保線作業員3人が特急にはねられて死亡する大惨事につながった。

(朝日新聞 2006年11月21日)



私事ですが、2年間勤務した宗務庁を12月6日付で契約期間満了にて退任することとなりました。
たいへんお世話になりました。

・・・・という堅苦しい挨拶は置いておいて、毎日の通勤に電車を利用していると、以前(役所に勤めていた頃)に比べて随分遅延が多くなっているように感じます。
といっても、私の利用している京浜急行はまだマシで、JR中央線や京浜東北線を利用している仲間などは、かなり頻繁に遅延の影響を受けておりました。
そのあおりで、京浜急行は、JRの全面振替輸送を請け負っていたりして、その際の混雑たるや、乗車もままならないほどです。

利用者の様々な利便性を考えて、複雑かつ緻密なダイヤ編成をしているのだと思いますが、それが原因で定刻どおりに到着できなかったり、安全性が失われるようでは本末転倒です。
朝日新聞の記事に、鉄道別の輸送障害の表が乗っていましたので、データ化してみました。

主な鉄道別の輸送障害(05年度、国交省調べ)

発生件数
走行100万キロ当の件数
JRグループ7社
3870(1440)
6.02 (2.24〉
JR北海道
350(151)
8.99 (3.88)
JR東日本
1389(556)
6.03 (2.41)
JR東海
232 (66)
4.93 (1.40)
JR西日本
1239(339)
7.49 (2.05)
JR四国
53 (16)
2.46 (0.74)
JR九州
242 (92)
3.71 (1.41)
JR貨物
365(220)
4.90 (2.96)
大手私鉄15杜
349(139)
1.08 (0.43)
東武鉄道
52 (17)
1.31 (0.43)
西武鉄道
34 (6)
1.59 (0.28)
京成電鉄
6 (2)
0.49 (0.16)
京王電鉄
8 (0)
0.56 (0)
小田急電鉄
34 (20)
1.65 (0.97)
東京急行電鉄
15 (7)
0.92 (0.43)
京浜急行電鉄
2 (1)
0.12 (0.06)
相模鉄道
4 (3)
0.76 (0.57)
近畿日本鉄道
59 (30)
0.91 (0.47)
阪急電鉄
16 (8)
0.71 (0.36)
阪神電鉄
17 (10)
2.33 (1.37)
公営地下鉄など10社
113(45)
1.15 (0.46)
東京メトロ
43 (11)
1.37 (0.35)

JRグループは在来線のみ。カッコ内は件数のうち部内原因

 

発生件数をとって見るとJRグループがやはり断トツに多いことがわかります。
まあ、営業距離数が多いから仕方ないとして・・・・しかしながら、走行100万キロ当りの件数で比較してみても、やはりJRの輸送障害件数は私鉄に比べて際立って多いです。

不思議なのは、JRの場合、例えばある路線(例えば京浜東北線とする)の一箇所の信号障害があったとして、それが京浜東北線のみならず、全体的に波及することです。
一点の障害が面的に広がってしまい、それがなかなか回復しないんですね。

これは、システム上の欠陥としか言い様が無いのではないでしょうか。

表を見ると、やはり体感どおり、京浜急行はほとんど輸送障害が発生していません。
エクセルでグラフを作成してみました。

主な鉄道別の輸送障害(05年度、国交省調べ)
走行100万キロ当の件数
tetsudoshogai.gif

 一目瞭然ですな。
ダイヤの緻密さと複雑さでは、快特・特急・急行・普通のパターン、増結と切り離しの繰り返し、都営や京成の乗り入れといったこともあり、京浜東北線などよりずっと高度ではないかと思うのですが、2005年度の輸送障害発生件数2件というのは見事です。
だから、借力には、京浜急行の「噂」として下記のように書かれてしまうんですね?
 そこが京急の魅力でもありますが。

しかし、引用していて気づきました。ほとんど運行障害が起きず、起きたとしても直ぐに回復できる訳が。
それは、この引用の最後にある部分(太字にしてあります)です。

つまり、 「運行管理を手作業でやっている」ということではないかと。

確かにコンピューター任せの制御というのは正確で効率的かもしれません。
しかし、それはあくまで予測通りに動いている場合であって、不測の事態の際に対応できるのは、あくまで人間だけだということです。

コンピューターに頼りきった社会は、意外に脆弱なものです。
そして、効率性を求めるあまり、余裕(=遊び)の無いシステムを作ってしまうと、それは重大な障害を引き起こしてしまう原因になるということを心しておかなければならないでしょう。

振替輸送を受けた満員電車に揺られながら、そんなことを考えてきた2年間でした。

■関連トピックス
コンピュータに頼り切る危険性


以下、借力からの部分引用

京浜急行の噂
JRの品川から横浜付近までの電車が止まると、必ず京急も遅れる
JRの客を京急で乗せるため
この時、JRの品川・蒲田・横浜等々の駅の窓口は苦情で凄いことになっている。
てか京急、信号故障とかで止まってるとこ見たことないぞ。これぞ京急
最近も信号故障の原因で止まったぞ、停電事故とかさ
横須賀線が台風で止まろうとも、京急は平然と営業を続ける。
京急が台風で止まるなら関東すべての電車が止まっている
http://wiki.chakuriki.net/index.php/%E4%BA%AC%E6%B5%9C%E6%80%A5%E8%A1%8C%E9%9B%BB%E9%89%84

京急の特異性に関する噂

京急線は人を6人轢かなければ止まらないといわれる。
人身事故でもものの15分もあれば復旧するが、片づけが杜撰なため、再開直後の電車に乗ったら飛んだ人のスニーカーが線路に落ちているのを見たことがある。
警察とかで15分じゃ再開しないでしょ
営業列車を走らせながら警察に現場検証させていた。検証になっていたかどうかは不明。
労使交渉なども真っ先に解決し、ストライキはまずない。
信号扱いの大部分をいまだに手作業でやっている。JR東日本で運行管理システムのトラブルが連発した時、日経が驚いて記事にしたことがあった。
だから逝っとけダイヤなんて曲芸ですら何事もなかったようにやってのける。
信号扱いはATSなんだから自動。手作業でやっているのはどこ行きの電車がどの駅をいつ発車したかの運行管理。コンピュータ処理の場合は「CTC」。もともと京急は指定席車もなければワンマン運転区間もないからこれを導入しても恩恵が薄い。
個々の信号機の制御のことをいっているのなら、「自動閉塞方式」かな。ATSはあくまで列車の保安装置だから。今は連動装置があるから、「信号扱い」=「てこ扱い」でも問題ないと思うけど。

http://wiki.chakuriki.net/index.php/%E4%BA%AC%E6%80%A5%E3%81%AE%E7%89%B9%E7%95%B0%E6%80%A7

投稿者: kameno 日時: 2006年12月 3日 22:05

コメント: 列車の遅延運休から学ぶこと

あまり面白いので、つい全文を読んでしまいました。

それより先に公務を任期満了で退任されるとの事、誠にお疲れ様でした。

老師のような優秀な方にこそ、宗門の中枢で頑張っていただきたいものです。いずれ又、課長クラスで戻られるのでしょうか?

その際には、是非とも少数精鋭で組織改革に取り組んでいただきたいものです。特に級階査定については、実態に沿った査定が出来るようご尽力願いたいと思います。そのためには、寺の出納帳(勿論責任役員等に承認された正確なもの)の提出も求めるべきと考えます。

投稿者 usagi | 2006年12月 4日 05:54

> kameno先生

お勤めお疲れ様でした(笑)ホント、緻密な作業で大変だったと思います。

さて、今日の記事ですが、

> 不思議なのは、JRの場合、例えばある路線(例えば京浜東北線とする)の一箇所の信号障害があったとして、それが京浜東北線のみならず、全体的に波及することです。一点の障害が面的に広がってしまい、それがなかなか回復しないんですね。これは、システム上の欠陥としか言い様が無いのではないでしょうか。

本当に、不思議な話です。先日も、全然別の場所でのトラブルで山手線が止まってしまい、しかも急停車したため、車内で若い女性の方が吹っ飛んでいました。まぁ、何かにつかまってなかった方が悪いんでしょうけれども・・・

それにしても、JRは止まることが多すぎます。相互に乗り入れているわけでもないわけですから、この辺は改善を期待したいです。

投稿者 tenjin95 | 2006年12月 4日 08:59

usagi様
ありがとうございます。
しばらくは外から宗門を眺めることにします。
宗務庁優先でやってきた2年間ですが、そのためにできなかったこと、やるべき事がたくさんありますので、そちらもやらないといけないし。
宗費賦課のあり方については、引き続き研究させていただきます。

tenjin95さん
そうなんですよね。
なぜ影響が広がってしまうのか、回復が遅いのか。
根本的に解決しなければならない問題が多すぎますね。
それにしても、吹っ飛んだ女性、大丈夫だったのでしょうか。
災難もいいところです。

投稿者 kameno | 2006年12月 5日 00:20

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