No.38 解説
表題の句は、法事などで皆様にも馴染みの深い﹃修証義︵しゅしょうぎ︶﹄﹁第一章総序﹂の冒頭の句です。道元禅師の書かれた、﹃正法眼蔵︵しょうぼうげんぞう︶﹄﹁諸悪莫作︵しゃくまくさ︶﹂の中の一節であります。 さて、﹁生﹂という語は、一般には﹁生きる﹂という意味に使いますがここでは、﹁生まれる﹂ことを指します。生まれるということは、場所も時間も性別も、何一つ自分の思い通りにはなりません。その意味で四苦の一つに数えられているのです。 さらにこの句では、﹁むじょう無常﹂が説かれていますが、﹁無常﹂というと、何かはかなげで、マイナスのイメージがありますが、本来はプラス・マイナス両方の意味があります。﹁全てのものは移り変わる﹂ということは、全てのものには固定的なものはなく、﹁どのようにも変化し得る﹂可能性を秘めている訳です。ですから、本文で説かれているように、無常の中に生きる現在の積極的な生き方が求められているのです。そして、世界に一つしかない命を、その尊厳をお互いに認め合い、守って行かなければならないのです。