No.36 解説
道元禅師はその生涯の中で多くの書物を著しました。そして主著としては﹃正法眼蔵﹄九十五巻が知られています。ここに引用した﹁家常﹂の巻もその中の一巻です。 さて﹁家常﹂とは、日常のもの・日頃の行為という意味です。道元はこの巻の中で、仏道︵仏の教えの実践︶とは、ことさら特別のものではなく、日常の生活を仏の行いとして徹することが重要なのだ、と説いておられるのです。 ﹁喫茶喫飯﹂という禅語があります。これは茶に逢ったら茶を飲み、飯に逢ったら飯を喫するだけで特別な仏の真理があるのではない、という譬えです。しかし、自分の好きなものだけ飲み食いして、それが仏道だといっているのではないことは、このリーフレットをお読みになればお分かり頂けると思います。 日常生活を如何に充実したものとし、それぞれの仕事を究め、さらには仏道の境涯にまで高めて行けるかは、我々一人ひとりに課せられた大きな課題であるといえるのです。