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1月2日に発生した日本航空JL516便と海上保安庁の航空機の衝突事故において、被災地への物資輸送を担った海上保安庁職員5名が残念ながら犠牲となってしまいました。心より哀悼の意を表します。
炎に包まれる航空機の様子が生中継され、日本航空機の乗員乗客の安否も心配されましたが、乗客乗員の適切かつ冷静な対応により379人全員が脱出できたことは何よりのニュースでありました。
滑走路上に同時に2機が存在してしまうという、あってはならない事象が発生したわけですが、何故そうなってしまったのか、その原因について客観的かつ詳細な報告書がまとめられるはずですので待ちたいと思います。
その上で、今後の安全性確保の観点から感じたことを、当ブログ記事で書いてみたいと思います。
それは着陸体制に入っている航空機に「滑走路誤進入」検知情報を確実に伝えるシステムが何故無いのかということです。
日航パイロット「直前に違和感」 着陸やり直しの余裕なく羽田空港C滑走路で日航機と海上保安庁の航空機が衝突して炎上し、海保機の乗員5人が死亡した事故で、日航機のパイロットが「衝突直前に一瞬何かが見えた。違和感があった」と説明していることが4日、日航への取材で分かった。「海保機を視認できなかった」とも説明。滑走路上の海保機に気付かず、着陸をやり直す余裕もなかったとみて、運輸安全委員会や警視庁が詳しい経緯を調べる。
安全委は4日、日航乗務員への聞き取りを開始。海保機の認識などを確認するとみられる。警視庁も現場検証を続けた。
日航によると、パイロットは何かがすっと通るような違和感を覚え、直後に衝撃があったとしており、着陸のやり直しを試みることはなかった。当時の交信記録に管制官がやり直しを指示した形跡はなく、管制官と日航機の双方が海保機の存在を認識していなかったとみられる。
(Yahoo!ニュース 2024/1/4配信)
着陸体制にはいっている航空機がある滑走路に、離陸しようとする別の航空機が侵入したことを、それぞれのパイロット、複数いるはずの管制官が誰も気づいていないということがなぜ起こってしまったのでしょうか。
例えば、羽田空港には4本の滑走路があります。これを15人の担当管制官が運用を担っており、それぞれの滑走路1本ごとに管制官2人が割り当てられているということです。
それでも、誤侵入の状況を見いだせませんでした。
管制からの指示や滑走路状態表示灯(RWSL:Runway Status Lights)などで誤侵入を「防ぐ」ことも必要ですが、それと並行して「ヒューマンエラー=人は間違いを起こす」ということを前提とした「滑走路誤進入」が「発生」してしてしまったことを検知するセンサーが必要だと思いますし、何故それが運用されていないかが疑問です。
日本において「滑走路誤進入」は、2007年から22年までの16年間で32件も発生しているということです。
うち、2010年代に中・大型民間機が絡む主なものは以下7件が発生しています。
これほどまでに発生しているということは、現行のシステムに改善の余地があるという事でしょう。
●19年7月21日 那覇空港で日本トランスオーシャン航空機(ボーイング737-800)が着陸予定の滑走路にアシアナ航空機171便(エアバスA321)が誤進入
●17年2月14日 成田空港でタイ・エアアジアX607便(エアバスA330)が誘導路停止線を越えてチャイナエアライン機(エアバスA330)が着陸予定の滑走路に進入●13年9月10日 関西国際空港でANA141便(ボーイング767)への着陸許可が出ていた滑走路に朝日航洋のベル430型ヘリコプターが進入
●12年7月8日 福岡空港で日本エアコミューター3635便(ボンバルディアDHC-8型)が、セスナ172型機が着陸予定の滑走路に誤進入
●12年7月5日 那覇空港で中国東方航空2046便(エアバスA319)が滑走路手前の待機線を越え、試験運行中のエアアジア・ジャパンのエアバスA320が進入中の滑走路へ進出
●11年10月12日 関西国際空港を離陸予定のハワイアン航空450便(ボーイング767)が、管制官の待機指示を誤認してANA貨物便(ボーイング767)への着陸許可が出ていた滑走路に進入
●10年12月26日 福岡空港でエアプサン141便(ボーイング737-400)が滑走路待機指示を誤認し、JAL3530便(JALエクスプレス所属ボーイング737-400)への着陸許可が出ていた滑走路に進入
いずれの事例でも、出発機側の滑走路進入に気づいた管制官が着陸機に着陸をやり直す「着陸復行」(ゴーアラウンド)を指示し、衝突は回避されている。出発機が誘導路を越えて滑走路に入った経緯は報告書で分析されているが、いずれも交信の過程でのヒューマンエラーによるものと指摘されている。発生時間帯は昼間のものが多いものの、17年2月14日の成田空港と、11年10月12日の関西国際空港の事例のように夜間帯でも起きている。
(出典:「滑走路誤進入」過去事例を分析 大半はヒューマンエラーで発生...衝突防いだ最後のとりでは「ゴーアラウンド」)
空港への着陸時に滑走路に支障がある障害物があるかどうかを知らせる「鉄道の踏切に採用されている発障害物検知装置」のようなシステムを導入するだけでも、誤侵入の発見を客観的かつ正確に行えるのではないかと思います。
鉄道踏切の場合は、障害物が検知された場合、運転士にそれが直ちに伝わり、運転士は非常ブレーキをかけます。
【鉄道の発障害物検知装置の例=JR西日本のサイトより引用】
これと同様に、
①着陸体制に入っている航空機がある この①②の条件が重なった際に、滑走路の表示灯を赤点滅させ、管制室にアラートが鳴り、直ちにゴーアラウンドへ移行させる |
ことにより、滑走路上での衝突事故のリスクはかなり低減されるはずです。
それほどコストもかからないような発障害物検知を着陸体制の航空機に知らせるシステムが大空港の滑走路に整備されることは安全性向上の上で必要なことと感じます。
是非検討していただきたいことです。