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アメリカ軍により広島に原子爆弾が投下されてから78年目の「広島原爆の日」を迎えます。
あらためて原子爆弾によって犠牲となられた多くの方々に弔意を表します。
広島原爆の日にあたり、改めて世界各地の惨禍によって命を落とされたすべての方がたへ、衷心より深く哀悼の誠を奉げ、大切な家族や友人を失った方、自ら負傷された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
すべての生きとし生けるものにとって、命は等しく尊く、かけがえのないものであります。国の威厳や国益、主義主張など、いかなる理由によっても「殺してもよい命」や「殺されてもかまわない命」は存在しません。また、誰一人として平穏な生活が奪われ、家や財産を失い、居住する場所を追われることも許容されません。
写真は以前訪れた時に撮影した平和公園越しに眺める原爆ドーム(広島県産業奨励館)
ここ数年、特に世界情勢の変化が著しい年になりました。その状況は現在も続いています。
年月の経過により、戦争があったことや、各都市に空襲があったこと、広島・長崎に原子爆弾が投下されたことの記憶が風化つつあります。
次世代に受継いでいくために、伝えていくことが大切であると感じます。
そして、広島・長崎の地から発信される平和宣言が世界恒久平和の実現に向け大きな原動力になることを願います。
「核抑止論からの脱却を」平和宣言で広島市長訴え 被爆78年 原爆の日
広島の街に米軍が原爆を投下して78年となった6日、広島市は平和記念公園(中区)で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。松井一実市長は平和宣言で、各国の為政者に対し、「核による威嚇を直ちに停止し、信頼関係に基づく安全保障体制の構築へ一歩を」と強く求めた。
5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)後では初めて迎える原爆の日。各地の被爆者や遺族、岸田文雄首相、海外代表たちが参列した。
平和宣言では、サミットの核軍縮文書「広島ビジョン」に触れ「全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界」の実現や核抑止の堅持に触れた文言を紹介。その上で「しかし、核による威嚇を行う為政者がいる現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻していると直視し、具体的な取り組みを早急に始める必要がある」として、市民が核抑止論からの脱却を促す重要性を訴えた。
ロシアによるウクライナ侵攻などを踏まえ、非暴力・不服従を掲げたインドのマハトマ・ガンジーの「非暴力は人間に与えられた最大の武器」との言葉を引用。あらゆる暴力を否定する「平和文化」を世界に根付かせる取り組みも促す。
式典は午前8時に始まり、この一年に死亡が確認された広島の被爆者5320人を書き足した原爆死没者名簿を松井市長と遺族代表2人が原爆慰霊碑に奉納した。名簿は「氏名不詳者 多数」と記した1冊を含め125冊計33万9227人分になった。
原爆投下時刻の8時15分に遺族代表の主婦角田礼奈さん(41)=南区=とこども代表の戸坂城山小6年田中湊都(みなと)さん(12)=東区=が「平和の鐘」を突き、全員で黙とうした。
新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが「5類」に移行したのを受け、市は参列席を昨年の2倍の約7千席に増やした。厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ人は3月末時点で11万3649人、平均年齢は85・01歳となっている。
(Yahoo!ニュース2023/8/6配信)
■平和宣言全文
78年前の原爆投下の日を、まるで生き地獄のようだったと振り返る当時8歳の被爆者は、「核兵器を保持する国の指導者たちは、広島、長崎の地を訪ね、自らの目で、耳で、被爆の実相を知る努力をしていただきたい。あの日、熱線で灼(や)かれ、瞬時に失われた命、誰からも看取(みと)られず、やけどや放射能症で苦しみながら失われていった命。こうして失われた数え切れない多数の人々の命の重さを、この地で感じてもらいたい」と訴えています。
本年5月のG7広島サミットで各国首脳が平和記念資料館の視察や被爆者との対話を経て記帳された芳名録は、こうした被爆者の願いが各国首脳の心に届いていることの証しになると思います。また、慰霊碑を参拝された各国首脳に私から直接お伝えした碑文に込められた思い、すなわち、過去の悲しみに耐え、憎しみを乗り越えて、全人類の共存と繁栄を願い、真の世界平和を祈念する「ヒロシマの心」は、皆さんの心に深く刻まれているものと思います。こうした中、G7で初めて「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が独立の文書としてまとめられ、全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界の実現が究極の目標であることが再確認されました。それとともに、各国は、核兵器が存在する限りにおいて、それを防衛目的に役立てるべきであるとの前提で安全保障政策をとっているとの考えが示されました。
しかし、核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻(はたん)しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取り組みを早急に始める必要があるのではないでしょうか。市民社会においては、一人一人が、被爆者の「こんな思いは他の誰にもさせてはならない」というメッセージに込められた人類愛や寛容の精神を共有するとともに、個人の尊厳や安全が損なわれない平和な世界の実現に向け、為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要になっています。
かつて祖国インドの独立を達成するための活動において非暴力を貫いたガンジーは、「非暴力は人間に与えられた最大の武器であり、人間が発明した最強の武器よりも強い力を持つ」との言葉を残しています。また、国連総会では、平和に焦点を当てた国連文書として「平和の文化に関する行動計画」が採択されています。今、起こっている戦争を一刻も早く終結させるためには、世界中の為政者が、こうした言葉や行動計画を踏まえて行動するとともに、私たちもそれに呼応して立ち上がる必要があります。
そのため、例えば、私たちが日常生活の中で言葉や国籍、信条や性別を超えて感動を分かち合える音楽や美術、スポーツなどに接し、あるいは参加して「夢や希望がある」といった気持ちになれるような社会環境を整えることが重要となります。皆さん、そうした社会環境を整えるために、世界中に「平和文化」を根付かせる取り組みを広めていきましょう。そうすれば、市民の支持を必要とする為政者は、必ずや市民と共に平和な世界に向けて行動するようになると確信しています。
広島市は、世界166カ国・地域の8200を超える平和首長会議の加盟都市と共に、市民レベルでの交流を通して「平和文化」を世界中に広めます。そして、平和を願う私たちの総意が為政者の心に届き、武力によらず平和を維持する国際社会が実現する環境を作ることを目指しています。また、被爆者の平和への思いを世界中の若者に知ってもらい、国境を越えて広め、次世代に引き継げるようにするために、被爆の実相に関する本市の取り組みをさらに拡充していきます。
各国の為政者には、G7広島サミットに訪れた各国首脳に続き、広島を訪れ、平和への思いを発信していただきたい。その上で、市民社会が求める理想の実現に向け、核による威嚇を直ちに停止し、対話を通じた信頼関係に基づく安全保障体制の構築に向けて一歩を踏み出すことを強く求めます。
日本政府には、被爆者を始めとする平和を願う国民の思いをしっかりと受け止め、核保有国と非核保有国との間で現に生じている分断を解消する橋渡し役を果たしていただきたい。そして、一刻も早く核兵器禁止条約の締約国となり、核兵器廃絶に向けた議論の共通基盤の形成に尽力するために、まずは本年11月に開催される第2回締約国会議にオブザーバー参加していただきたい。また、平均年齢が85歳を超え、心身に悪影響を及ぼす放射線により、生活面で様々な苦しみを抱える多くの被爆者の苦悩に寄り添い、被爆者支援策を充実することを強く求めます。
本日、被爆78周年の平和記念式典に当たり、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げるとともに、核兵器廃絶とその先にある世界恒久平和の実現に向け、被爆地長崎、そして思いを同じくする世界の人々と共に力を尽くすことを誓います。
令和5年(2023年)8月6日
広島市長 松井一実