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貞昌院の鐘楼堂には、京浜急行大師線のレールが設置されています。
設置の経緯については こちらのブログ記事をご覧ください → 線路がやってきた
レールを設置したのは2011年。
すでに設置から12年経過し、鐘楼堂の屋根はあるとはいえ、風が強い雨天時には雨がモロに吹き込んできますので、レールは錆びで傷んでしまうのではないかと心配される方も多いのではないでしょうか。
しかし、レールのように厚さのある鉄(鋼材)は、錆には耐えられるものなのです。
現在のレールの様子を写真でご紹介します。
もしも薄い鉄板であれば、数年で赤さびが直ぐに侵食して穴が空いたりボロボロになったりすることでしょう。
しかし、レールのように厚さのある鉄は、表面に錆は発生するものの、このように錆が全体を覆い、内面を保護する役割を果たします。
メンテナンスらしいことと言えば、1年に1度、雑巾にクレ556を少し染み込ませてレール表面を拭いているくらいです。
さて、鉄の錆にはいくつか種類がありますが、通常、屋外に放置した鉄に発生するのは赤錆です。
空気中の酸素と鉄が化学反応をおこして酸化鉄になります。
レールも鉄鋼でできていますから、敷設した翌日には錆で覆われてきます。
電車の場合は、通電経路が車輪-レールであるため、錆があると電気抵抗が大きくなってしまいますが、一日に数本の電車が走りさえすれば通電経路は確保されるほどレールの表面はピカピカになります。
電車の頻度が低い場合には、時々メンテナンスのためにレール削正車を走らせて錆や傷などを削正していきます。
写真の中央に映っているのは軽便鉄道のレールです。
戦前、サイパンは日本統治にあり、島の周囲をシュガートレインが走っていました。
そのレールが、戦後、うっそうとしたジャングルの中で木の成長により持ちあげられている状態の写真です。
つまり、このレールは70年もの間、熱帯のジャングルの中で放置されていたものです。
錆を削正してゆがみを修正すればまだ使えそうです。
このように厚さがある鉄であれば、意外に大丈夫だったりするのです。
さらに腐食から守るために、(レールでは使われませんが)全体を黒錆で覆わせるという手法もあります。
黒錆で覆われると丈夫な酸化膜で覆われ内部に酸素が触れないようになり錆は進行することがありません。
鉄のフライパンややかんなどの鉄器はそのような性質を利用しています。
酸化鉄にはこのように幾つかの種類があり、
(1)酸化第一鉄 FeO
(2)酸化第二鉄 Fe2O3 =赤錆
(3)四酸化鉄 Fe3O4 =黒錆
があります。
鉄は酸素と結びついた酸化鉄の状態が一番安定しています。
私たちが鉄を鉄材として利用するときには、鉄の原料である酸化鉄から酸素を取り除き、炭素などの添加物を加えて鋼材にしますが、酸素が無い鉄の状態は、不安定なので、空気中の酸素と結びついて酸化鉄の状態に戻っていってしまいます。
これが錆びです。
そして、表面は錆びていても、鉄に厚さがあれば簡単には内部には浸食されないものなのです。