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現在、魚屋やスーパーなどで売られている「子持ちししゃも」のほとんどは、カラフトシシャモ(カペリン:Capelin)という輸入代用品です。
「子持ち」という名の通り、輸入代用ししゃもは主にメスを食します。
けれども、本来のししゃもは、輸入代用品のカラフトシシャモとは似ているようでまったく違うものです。
本来のししゃもは、サケ目キュウリウオ科シシャモ属であり、サケ目というだけあって、秋に海から川を遡上して産卵する性質があります。
(カラフトシシャモは川を遡上しません)
ししゃもは、漢字では「柳葉魚」と表記します。
そこにはアイヌと切っても切れない関係が見られます。
神様の贈り物(柳の葉に命を与えたのは神様)
天の上に住むカンナカムイ(雷神)の妹は、ひまをもてあまし、沙流川と鵡川の水源地、シシリムカ カムイヌプリにおりたちました。
ところが、川下のどのコタン(集落)の家々からも、煙が立ちのぼる様子はありません。
不思議に思ったカンナカムイの妹は、人々の話に耳をかたむけました。
「飢饉で食べるものがない。どうしよう。」途方に暮れている人々を救おうと、雷神の妹は、天に向かって大声で助けを求めました。
天上のススランペッの畔にある、神の集落ではおおいに驚き、フクロウの女神が柳の枝を杖にして、魂を背負い地上に舞い降りました。
柳の枝を、どの川に流そうかと、フクロウの女神は神々と話し合い、「沙流川の水はきれいだが、男川で気が荒いから、女川の鵡川に下ろした方がよいだろう」ということになったのです。
魂を入れた柳の葉を、鵡川に流したところ、みるみるススハム(柳の葉の魚)になりました。
(むかわ町商工会のサイトより)
上の物語にある「ススハム」が、ししゃもの語源となり、ししゃもを柳葉魚と表記する由縁もみることができます。
鵡川(むかわ)と沙流川(さるがわ)の位置関係はこのような感じです。
かつては、秋になると川の底が真っ黒の魚たちによって見えなくなるほど、たくさんのししゃもが遡上した鵡川も、近年の乱獲と護岸工事、河川改修による産卵場所の減少によって遡上するししゃもはめっきり少なくなってしまいました。
ししゃもは、むかわ町の特産として、かつての漁獲高ではありませんが、決められた漁獲量の範囲で収獲され、販売されています。
上写真は生干しししゃも。
右側のオスのほうが美味しいそうです。
また、この時期のみ、生ししゃもをネタにした寿司を味わうことができます。
淡白な味わいでありますが、口の中に甘みとコクが広がります。
ししゃもに限らず、普段口にする魚介類が、実は本来のものと全く異なる種類であった、ということが当たり前の時代になってしまいました。
残念なことです。