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神奈川県の伝統仏教寺院で構成される神奈川県仏教会主催による釈尊成道会、講演会が開催されました。
神奈川県仏教会成道会
平成21年12月20日
於 西有寺
差定(次第)
1、一同昇堂
1、導師献香
1、表白文
1、三帰礼文
1、開経偈
1、読経 観音普門品偈
1、回向
1、一同礼拝
1、黙祷
1、一同退堂
記念講演
『現代の葬儀を考える』
慶応技術大学文学部講師 正木晃先生
以下はkamenoメモです。
■寺院の公益性について
自公政権が交代となり、さらに政府の財政難により公益法人への課税を強化する方向にある。
公益法人税制改革がすすみ、あと5年以内に公益認証を受けない寺院は課税対象となるだろう。
そうなった場合、全国に7万ある寺院のうち半数は潰れてしまうのではないか。
従って、寺院の公益性についてきちんと定義し、明確化しておくことが不可欠となる。
・一般感覚として、客観的に判断して公益性があるといえる寺院は、現状数パーセント程度ではないだろうか。
・そのほかの寺院は、公益性に関して何らかの改善が必要である。
・檀家と寺院の関係は公益性を持つものか。私益とみなされるものか。
・公益性を担保できる制度を寺院の中に設けなければならない。
・寺院の運営の中に檀信徒が入り、会計の透明性を持たすことができないといけない。
・寺院の存在自体が公益性を持つということを主張する。
(伝統的に寺院が存在していることが地域の平穏に寄与しているということが、寺院の公益性であるという論議を確固たるものにしなければならない)
ただし、伝統的な仏教、神道を頭から否定する層も多いことを念頭におかなければならない。
■葬儀について
都市部を中心に広がっている葬儀形態、直葬。
葬儀が不要と考える層の増加
・葬儀にお金をかけたくない=葬儀、法事に金がかかりすぎると考える層。
・過去から考えて当然と思われる金額が、「高い」と考えられるようになる。
・宗教に対する無関心、反発
葬式仏教の由来
江戸時代の檀家制度
明治維新政府の政策 仏教は先祖崇拝+葬儀執行。
江戸時代は仏教が優遇→廃仏棄釈
葬式仏教は地方で30年、都市部で20年程度で無くなるかもしれない。
死者の高齢化は伝統的な価値観の崩壊をもたらす。経済的な問題、家族の問題。
臨終の場所は8割は病院となった。
都市部においては葬儀は50%の人が不要と考える。(日経新聞)
常識外の請求=事例は少ないだろうけれど、一件でもあればそれが広がってしまう。
葬儀不要論=高額な費用、宗教に対する無関心、反発。
■日本人の死生観
ブータン、チベット、スリランカでは輪廻転生。今世において良い業を積まなければ来世の保証がない。
対し、日本人は「いのちのつながり」を輪廻転生ではなく、先祖供養により実践してきた。
出羽三山を一例にとると、人は亡くなるいと始めは一番低い清水山、次に金峰山、最後に月山に登り昇華され、そこから田の神として降りて来てまた生まれ変わる。
生活仏教←→教義仏教
生活仏教の内実=日本仏教の現実
本尊としての「仏」
死霊としての「ホトケ」
両者を習合化、重層化した「ほとけ」
「蕃神化」いのちのつながりを先祖供養により実践してきた日本仏教。
このような葬送文化の喪失は、日本の伝統文化の消失ともいえる。
■世間に及ぼす影響度
清め塩の例
浄土真宗が盛んに清め塩不要論を訴えたが、10年経っても状況が変わらなかった。ところが細木数子が一言テレビで発言しただけで清め塩が一気に減少した。
その影響力の差は何か。
伝統仏教は、ある程度スピリチュアルの面を利用するという意気込みが必要。
■寺院への提言
現代人は帰属する場所を求めている。
葬儀、年回法要が遺族を一番癒すものである。(浄土宗研究所)
葬式仏教を見直す
⇒葬式をきちんと行わないことは宅配業者が代金を受け取って品物を届けないということと一緒である。
葬儀の際に、会葬者が何らかの参加をする仕組みを考えるべき。題目、念仏など。
⇒特に若い世代の参列者ほど葬儀・法事がが手抜きかどうかということに敏感。
団塊の世代は唯物論。しかし、その世代が伝統的な日本の宗教感を学びたいという事例が多くなった。
宗教意識の変化が確実に見られる。
・富士登山や伊勢神宮参拝に若い世代が多く見られるようになった。
仏教を判りやすく
⇒曼荼羅を曼荼羅として提示しても伝わらない。
そこで色をつけて解説を簡略化することにより鬱病対策、認知症対策各方面で利用されるようになった。
伝統的仏教の教えを現代的に咀嚼し、利用できるようにして行くことが必要。
■元気な寺院のつくり方
(1)葬儀がきちんと立派に行われているか否か。日本の葬式は霊魂実在論で良い。
(2)葬儀の費用は妥当か否か。法外な要求は言語道断。
(3)月参りをきちんと行なっているか。檀家との深い交流が寺院の使命。
(4)地域性を考えているか。地域との交流をはかる。
(5)檀家の相談にきちんと乗っているか。
(6)僧侶としてのけじめは付けているか。修行は一度では終わらない。
(7)祈祷をするなら堂々と行う姿勢、スピリチュアルブームも強かに利用する。
(8)他宗派の様相を学び使える要素は遠慮なく行う。批判に終始しない。
(9)老若問わず寺で楽しい宗教体験を。
(10)子供たちを寺に集める工夫を。寺子屋の復活。
(11)心理学、精神医学関係の資格をとる
(12)まず僧侶自身が学ぶ姿勢を持つ。教学にとどまらず、歴史を学ぶ、社会問題を学ぶ。
■最後に
本山、宗派が奨学制度などを設けてカウンセリングなどの有資格者を育成する、そのような活動が公益性を担保するということの証明となる、
とにかく誰にもわかる言葉で実践を!
講師プロフィール
正木晃正木 晃(まさき あきら、1953年 - )は、宗教学者。神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程単位取得満期退学。国際日本文化研究センター客員助教授、中京女子大学助教授、純真短期大学教授をへて、慶應義塾大学文学部・立正大学仏教学部非常勤講師。日本密教・チベット密教を研究し、宗教図像学(マンダラ研究)を主な研究課題とする。宮崎駿のアニメの密教的読解の本も多い
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
寺院の公益性、葬儀法事などについてはこのブログでも考えてきたことであり、今回の講演でも得ることが多くありました。
今後も個別テーマごとに記事にしていきたいと考えています。
■教区成道会のお知らせ
今度の日曜日、曹洞宗近隣寺院合同による「成道会」「摂心坐禅会」が開催されます。
日時 平成21年11月22日(日) 午後2時30分より
会場 観音寺 (横浜市泉区新橋町1157 交通:相鉄線・弥生台駅よりタクシーまたは徒歩15分)
内容 坐禅・成道会法要(佛祖禮)・法話
貞昌院からは午後1時30分に集合、出発いたします。
まだ若干の余裕がございますので参加希望の方は kameno@teishoin.net までご連絡ください。