エネルギー供給構造高度化法と燃料電池

今月1日、衆議院本会議にて太陽光発電余剰電力を現在の2倍程度で買い取る制度などが盛り込まれた法案が通過しました。

その名も

「エネルギー供給構造高度化法」

これにより、本年度内で買い取り価格の上乗せが実施されるはずです。

太陽光発電の国ニッポンの復権を で主張してきたことが具体的に動き出してきました。


この法案は2倍買い取りによる太陽光発電設備の普及促進がクローズアップされていますが、主たる目的は「エネルギー供給事業者」に対する「非化石エネルギー源の利用の義務付け」です。

つまり、非化石エネルギー源への転換を行うためにエネルギー供給事業者に対する義務付けを行わせる法案です。


1.特定エネルギー供給事業者特定エネルギー供給事業者(エネルギー供給事業者のうち、非化石エネルギー源の利用が技術的及び経済的に可能であり、かつ、その促進が特に必要であるものとして政令で定める事業を行うもの)に対し、非化石エネルギー源の利用を義務付ける。
<例>
・電気事業者に対する2020 年までの50%以上の非化石電源の利用拡大
・電気事業者に対する家庭用太陽光発電の余剰電力の適正価格での買取り ←これが太陽光発電電力の2倍買い取りの部分
・石油事業者やガス事業者に対するバイオ燃料やバイオガスの利用の義務付け
など

2.一定規摸以上の特定エネルギー供給事業者に対しては、
燃料製品供給事業者に対する化石エネルギー原料の有効利用の義務付け
・石油事業者やガス事業者に対する原油や天然ガスの有効な利用の義務付け

が定められています。
この法案が成立することにより新エネルギーへの転換が進んでいくことでしょう。


さて、貞昌院では、平成15年より太陽光発電設備を設置しています。
設置から6年が経過し、順調に運用を続けているところです。

実は、ここ数年でもう一段階目のステップに進むことを計画しています。
それは燃料電池の導入です。

太陽光発電は昼には余剰電力が発生しますので電力会社に買い取っていただき(下図の水色の部分)、夜間など発電しない時間帯は逆に電力を購入(下図のオレンジ色の部分)しています。
トータルすると貞昌院で使用する9割程度の電力量を太陽光発電設備でまかなっていることとなります。
<オレンジ色+黄色)と(黄色+水色)の面積がほとんど同じとなっている>

図:一日の発電量、電力消費のイメージ
20070530-02.jpg

この発電量の変動を埋める(上図のオレンジ色の部分を埋める)仕組みとしての燃料電池は非常に有効な働きをすると考えます。

燃料電池はここ数年でようやく実証段階から実用段階へと進んできました。
燃料電池は、エネルギーの元である「水素」と、空気中の「酸素」が化学反応を起こし、「水」になる際に発生するエネルギーを元に電気と熱を発生させる装置です。
したがって、燃料電池の燃料は「水素」です。

しかし、家庭では水素をそのままボンベに入れて使用するわけにはいかないので、水素が含まれる化合物から水素を取り出す方法がとられています。
現在発売されている燃料電池の共通ブランドは「エネファーム」です。

エネファームには
・都市ガス
・LPガス
・灯油
などによる種類があります。

都市ガスの成分は、1個の炭素原子に4個の水素原子が結合した最も単純な炭化水素であるメタン CH4 ですから、水素が比較的取りだしやすい。
最初に実用化され普及に力を入れているエネファームも都市ガスのものでした。
しかし、残念ながら貞昌院は都市ガスのエリアではありません。

次にLPガスですが、これは主成分がプロパンですので C3H8。
都市ガスほどではないものの、水素の取り出しは比較的容易です。
貞昌院に直ぐに導入するのならこのタイプでしょう。
しかし、プロパンガスはコストが高いのが難点です。


最後に灯油。
こちらの主成分は炭素量がずっと増えて(そのために常温で液体となります)、ウンデカン C11H24 、ドデカン C12H26、トリデカン C13H28、テトラデカン C14H30などなど。
炭素量が多い分、水素の取り出しと灯油に含まれる硫黄分の脱硫に高度な技術を要します。
※メタン系炭化水素(アルカン)の名前は特徴的で、覚えやすいですね?


ここ数週間でエネファーム製造会社の方と具体的にお話しする機会を得ました。
その中での結論。

貞昌院には灯油のエネファームを導入いたします。
理由はランニングコストとインフラ整備のしやすさです。
なお、灯油の燃料電池は来年、若しくは再来年ということですので、それまで他の燃料電池の動向と併せて推移を見守っていきたいと思います。


燃料電池はエネルギー効率が極めて高いことも特徴の一つです。

pi.gif
(図はエネファームのサイトより)

例えば火力発電所の発電効率は約40%程度であり、送電ロスを併せると3割程度の効率となってしまいます。

対し、燃料電池であれば発電効率は飛躍的に高まります。
太陽光発電+燃料電池を導入すれば、電力会社からの購入電力は殆ど無くなることでしょう。

貞昌院に繋がっている電力線が逆潮流(貞昌院→電力会社)のみに使用される日もまもなくです。

投稿者: kameno 日時: 2009年7月 5日 10:53

コメント: エネルギー供給構造高度化法と燃料電池

おはようございます。ただいま好調の巨人です。茅野さんからの提供で読ませていただきましたが、実に素晴らしい。
 うちはまだ太陽光の段階ですが、また色々と教えて下さい。それにしても電力会社の発電効率の悪さには驚きました。

投稿者 巨人 | 2009年7月 6日 09:22

おはようございます
庫裏の屋根にソーラーパネルが輝く日も近いですか?
日照条件はバッチリですので発電効率はかなり良さそうですね。
発電所は何百キロも離れたところにあったりしますからなおさら効率が落ちますね。ほとんど棄ててしまっているようなものです。

投稿者 kameno | 2009年7月 6日 09:57

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