健康食に、流行は、不要かもしれない。

テレビや雑誌の特集では、「健康」をテーマにした特集がよく組まれます。
バラエティー番組では、ネタに詰った時には、温泉、グルメ、ペット、健康をテーマにすれば間違いないとも言われているようです。

視聴者や読者が健康に関心を持たれるのは当然のことですが、それをいいことに、強大な影響力をもつマスメディアで「特定の」食品だけが健康に良いという紹介の仕方には反感を感じます。
ココア、かんてん、アスパラ、納豆…その一つひとつが紹介されるたびに、スーパーでは特定の商品だけが品切れになります。
これは最近に限った傾向ではなく、古くは紅茶キノコ、自家製ヨーグルト…例を挙げればキリがありません。
ついにはいかに健康にプラスになるかというデータさえ捏造するようになりました。
 ⇒関連記事 情報の見方・読み方・読み取り方

このように、食や健康にまつわる流行は次から次へと移り変わっています。

表題のことばは、今日の全国紙全面広告に使われていたコピーです。
広告主はSUNTORY。


20080528-01.jpg eiheiji-suntry.jpg
(c)SUNTORY


某健康補助食品の広告です。

禅の修行道場での朝食が「ど?ん」と掲載されています。
なかなかインパクトのある写真なのでご紹介させていただきました。
新聞をお取りの方は、実際の広告写真をご覧下さい。

流行の変遷により、流されやすい食品、特に健康食品分野で、伝統的に重んじられてきた「ごま」の重要性を説き、一時期の流行ではなく、永く付き合っていける健康食品ですよ、ということを意図しているのでしょう。
広告ではありますが、禅寺での食事がどのようなものであるのか、広く紹介いただいたという点、そして流行に左右されずに只管古来からの作法を守り伝統を重んじてきたことに着目くださったということに関してはとても嬉しい広告であります。

広告文より一部引用、紹介させていただきます。


760年間、欠かすことなく ごまを食べ継いできた

日本の精進料理が体系化されたのは、永平寺の開祖として知られる道元禅師が、『典座教訓・てんぞきょうくん』という書物で、日々の食事の大切さを説いて以来といわれています。
私たちサントリーがその書物を知ったのは、ごまの食文化を調べていたのがきっかけでした。
永平寺ではいまも道元禅師の教えに基づき、修行僧たちは次のような食事を、毎日の糧としています。

朝食=おかゆ・ごま塩・漬物。
昼食=麦めし・味噌汁・漬物・おかず一品。
夕食=麦めし・味噌汁・漬物・おかず二品。

なかでも朝食のおかゆとごま塩は、道元禅師の昔から約760年間、欠かすことなく、今日まで食べ継がれています。
(SUNTORY新聞広告2008/5/28より引用)




修行僧たちがこのような食事で健康を維持できるということは、決まった時間に決まった量の食事をとるということにポイントがあります。

諸々の飲食(おんじき)を受けては当(まさ)に薬を服するがごとくすべし。好(よ)きにおいても悪しきにおいても増減を生ずること莫(なか)れ。わずかに身を支うることを得て以て飢渇(きかつ)を(と)除け 『仏遺教経』


当に良薬(りょうやく)を事とするは 形枯(ぎょうこ)を療(りょう)ぜんがためなり 『五観の偈(食事作法)』

私たちが良くお読みする『仏遺教経』や、食事の前にお唱えする『五観の偈』にも共通のことが説かれています。

食事は、ただ単に満腹感を求めるという欲求を満たすものではなく、身体をささえてくれる良薬です。
ですから、さまざまな飲物や、食物の施しを受けた際には、あたかも薬を服用するように、大切にいただかなければなりません。
好きだからたくさん食べたり、嫌いだからといって食べなかったり、そのような食べ方はしてはいけません。
身体をささえるだけの適度な食事をとることにより、飢え、渇きをしのぐのです。


広告写真の、修行僧たちのいただいている朝食、どのように感じられましたでしょうか。
こんなものでは物足りないと感じられましたか?


そしてもう一つのポイント。
単なるお粥、漬物、ごま塩のように見えますが、そこには、食事をいただく修行僧たちを慮る、さまざまな「こころ」が込められています。
修行道場では、食事を作る係を「典座(てんぞ)」といい、特に重要な役職とされています。
道元禅師は、『典座教訓(てんぞきょうくん)』という書物を著し(これは先にご紹介した広告文にも紹介されていますね)、食事係の重要性、食事を作るのも・食事を頂くのも修行であると述べられました。
その中で、「喜心(きしん)」「老心(ろうしん)」「大心(だいしん)」の三つの心「三心」を、典座職の心構えとして、食事を作るとき、食事をするものに接するときの心得として説かれています。
簡単に言うと

 「喜心」= 喜びの心を持って接する。
 「老心」= 父母のような慈悲の心で接する。
 「大心」= 偏りのない大きな心で接する。

ということです。
そのような「こころ」が込められているからこそ、毎日のように同じメニューであっても何百年もその伝統が受継がれているのだといえるでしょう。

結論としてはっきりと断言します。

健康食に、流行は、不要です。


追記


本年は、永平寺第三代の徹通義介(てっつうぎかい)禅師の七百回大遠忌の年に当たります。
徹通義介禅師は、道元禅師の孫弟子です。
道元禅師が病気の治療のため京都に旅立たれたとき、永平寺を護るようにと後を任され、さらに總持寺を開いた瑩山禅師のお師匠さんあたる方で、初期の曹洞宗の発展に重要な役を担われた方です。
『典座教訓』の「三心」を実践された方でもありました。
6月15日(日)に、永平寺主催・文化講演会が駒澤大学にて開催されます。
SOTO禅インターナショナルでも協力を行います。


文化講演会
「いただきます ごちそうさま」 禅の教えに学ぶ「食育」

日時  平成20年6月15日(日) 午後1時開場 

午後1時30分開演?午後4時終了予定
会場  駒澤大学記念講堂(〒154-8525 世田谷区駒沢1-23-1) 東急田園都市線「駒沢大学」駅下車。「公園口」の出口を出て、徒歩約10分。

【プログラム】 
第一部  基調講演 服部幸應  服部学園理事長・校長・医学博士
第二部  ビデオによる「永平寺の食事作法」
第三部  パネル・ディスカッション 服部幸應 千住 明(作曲家)  若山慧子(前・NHKチーフディレクター)
【主催】  大本山永平寺
【協賛】  駒澤大学/駒沢女子大学・映像コミュニケーション学科


参加無料

投稿者: kameno 日時: 2008年5月28日 09:48

コメントを送る