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海藻からバイオエタノール、日本海で生産構想
地球温暖化対策で注目されているバイオエタノールを、海藻のホンダワラ類からつくる計画が進んでいる。養殖や製造の基礎技術がほぼ確立したことを受け、日本海に巨大養殖場を設ける構想。日本のガソリン販売量のほぼ3分の1に相当する量になるという。バイオエタノールの原料となる穀物の高騰が問題となっているが、ほとんど食用にならないホンダワラ類が解決策の主役になる可能性が出てきた。
研究を進めるのは、三菱総合研究所や京都府立海洋センター、東京海洋大などのグループ。3月12日に東京都内で開くシンポジウムで詳細な研究報告を行い、実現に向けた検討をする。
竹野功璽(こうじ)・京都府立海洋センター主任研究員らは01年から日本海で、ホンダワラの養殖実験を開始。ロープに付着させた30センチの苗が半年で1?3メートルに成長することを確認した。一方、海藻のアオサ類を使った三菱総研などの実験で、乾燥重量100グラムあたり約30ミリリットルのエタノールが製造できるとわかった。ホンダワラ類にも応用でき、バイオエタノールの量産化に道が開けたという。
構想では、日本海沖合で比較的浅い「大和堆(やまとたい)」の水深約400メートルを中心とした海域に養殖場をつくる。ホンダワラ類を植え付ける太さ約3センチのロープを100本前後組み合わせた養殖ユニット(100メートル四方)を四国の半分強の広さにあたる約1万平方キロに並べる。沖合を活用するため、沿岸の生態系を守れる特長がある。
年間に乾燥重量で約6500万トンの収穫が見込まれ、約2000万キロリットルのバイオエタノールを製造できる計算になる。
(朝日新聞2008年2月27日)
今月15日、農林水産省は政府が民間に売り渡す4-9月の輸入小麦価格を30%値上げすると発表しました。
輸入小麦価格はこれまでも段階的に引き上げられており、食品全体の大幅な値上げは避けられないでしょう。
この一因として、原油価格の高騰と、穀物からのバイオ燃料生産の増加が挙げられます。
バイオ燃料として、これまで飼料として生産されていたトウモロコシなどが流用されると、その代替に小麦が使用されて小麦の需要は増加します。
EU全体では2010年までに自動車の約6%程度をバイオ燃料とする計画であり、日本でも政府主導でバイオ燃料の導入が積極的になされています。
以前、バイオ燃料の功罪 という記事において、バイオ燃料の欠点として
(1)化石燃料よりもエネルギー密度が低いため、収集にコストがかかる
(2)穀物利用の場合、食糧と競合する場合がある
(3)持続的な利用をしなければ熱帯雨林の破壊や農地の圧迫などの問題がある。
という指摘をし、さらに
(1)バイオ燃料生産のために、熱帯雨林などの森林開発を行うのは本末転倒。
(2)既にある農地を転用して、バイオ燃料の原料となる植物を植えるべきではない。
(3)バイオ燃料の原料として、人間や家畜などの食料となりうる部分を用いるのは、たとえコストが低くても行うべきではない。
という三点を主張しました。
環境に優しいはずのバイオ燃料が、結果的に地球全体の環境を悪化させるという悪循環に陥る構図がみられるからです。
しかし、バイオ燃料もその生産方法によっては本来の(地球環境をまもる)目的に沿った形で生産することが可能です。
冒頭の記事にある海藻のホンダワラ類によるバイオ燃料の生産は、まさにその最たる事例といえます。
特に、日本は膨大な排他的経済水域を有する海洋国です。
これも、前に 海洋基本法に基づき海洋相を設置 という記事の中で書きましたが、日本は、国土面積は約38万km2 で、世界第60位ですが、領海面積(内水を含む) は43万km2、領海(内水を含む)+接続水域は74万km2となり、膨大な水域を保有しています。
さらに、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた水域面積で約447万km2であり、これは世界第6位の位置を占めます。
国土面積と合計すれば約485万km2(世界第9位)。
日本は偏狭な国であるという認識は間違いであることがわかります。
そして、日本の周囲は、その沿岸を暖流(黒潮、対馬海流)と寒流(親潮、リマン海流)が流れ、世界中で有数の多様な海藻が分布する海域となっています。
ホンダワラといえば、海水浴などでよく見かける、砂浜に打ち上げられているあの海草です。
褐藻類のホンダワラ科に属する海藻の一種であり、群生して大きく生長し、海の森ともいえる「藻場」を形成します。
ここで、ホンダワラ類を利用してバイオ燃料を作る意味を列記してみます。
日本ならではの特徴も多数含まれます。
逆に言えば、日本でこれをやらなければ何処でやるのか!ということがわかります。
■世界第6位の広さを誇る排他的経済水域を有効に利用できる
■ホンダワラは食料との競合がない
■成長に伴い二酸化炭素の吸収を行う(燃料として燃やしてもカーボンニュートラルとなる)
■海域の富栄養化を防ぎ、水質の浄化を行う
■海の森、藻場を形成し、魚類を育む
■安定的なエネルギーの自給率を高める
このようにいいこと尽くめです。
(もちろん課題も多いでしょうけれど)
ホンダワラ類の養殖件研究については、下記のサイトが参考になります。
京都府立海洋センター 季報 第83号 ホンダワラの種苗生産と海面養殖
約1万平方キロの養殖場で日本のガソリン販売量のほぼ3分の1に相当する量が生産できるのであれば、日本海に大きな油田ができたことと同じです。
日本には都市鉱山と併せて、このような資源が潜在的に眠っているのです。
ホンダワラ類によるバイオ燃料が成功することを願っています。
魚場の活性化で魚が増えたらいいね。
鉄の設置のように(沈没船がいい漁場になるように)
投稿者 Anonymous | 2009年7月12日 19:52
沈没船の漁礁もいいですけれど、ホンダワラのような自然の漁礁も増えていくといいですね。
日本海といえば、水温の上昇と富栄養化で今年も越前クラゲが心配です。
環境の変化を知らせてくれる生物たちにアンテナを張っていかないと後で取り返しがつかないことになりそうです。
投稿者 kameno | 2009年7月13日 09:00