ライトアップと環境への影響

秋の夜長といわれるように、秋彼岸から冬至にかけて日に日に日没の時間が早まってきています。
また、最近は都市空間を魅力的に演出したり、自然(桜、紅葉など)を美しく照らし出すライトアップの事例がが多くなってきました。

これからクリスマスシーズンに向けて、一般住宅でも電飾を施すことも一般化しており、ますます夜間照明はにぎやかさを増すばかりです。

日本におけるライトアップは、神戸ポートタワー(1963年)がその始まりといわれています。
そして、照明デザイナー石井幹子氏による東京タワーのライトアップ(1989年)以降、各地で盛んになり、いまや都市景観の一つとして欠かせない存在となりました。

このような美しいライトアップも、問題点が無いわけではありません。


ライトアップによる景観の美化が過剰ではないかという意見です。
また、自然環境への影響も問題視されるところです。
動植物には日照時間を体内リズムの調節に利用しているため、例えば長日植物や短日植物には直接の影響を及ぼすでしょうし、人間の生活パターンにも影響を与える可能性もあります。


環境省(当時環境庁)では照明による環境影響について下記のように分類しています。

■照明による環境影響

(1) 動植物への影響
 (a) 野生動植物
  ?昆虫類?哺乳類・両生類・爬虫類?鳥類?魚類?植物?生態系
 (b) 農作物・家畜
  ?農作物?家畜
(2) 人間の諸活動への影響
 (a) 天体観測への影響
 (b) 居住者への影響(住居窓面)
 (c) 歩行者への影響
 (d) 交通機関への影響
  ?自動車?船舶・航空機

『光害対策ガイドライン』1998年3月環境庁

このような一連の問題は光害(ひかりがい)と呼ばれます。

経済的な面ではどうでしょうか。


■東京タワー
ライトの数=176個
点灯時間=日没から午前0時まで
電気代=1日約25,000円

■東京都庁
ライトの数=287基
点灯時間=日没後約4時間
電気代=1日約 2,000円

■横浜ベイブリッジ
ライトの数は=264個
点灯時間=日没から午前0時
その電気代は1日およそ36,667円

これを高い(浪費)と見るのか、景観演出の有効な手段のひとつと見るのかは様々でしょう。
みなさんはどのようにお感じでしょうか。

ちなみに大船観音寺は2個のハロゲンランプにて日没から9時までオレンジ色の光で照らし出されています。


そのような中、ライトアップで有名な京都・高台寺では境内のライトアップを自然エネルギーで行うという試みがなされています。


koudaiji.jpg

太陽光発電でライトアップ―高台寺


三洋電機の太陽電池を使って夜間ライトアップされている高台寺の庭(京都市東山区)。
電源車が昼間に太陽光で電池に充電している。1日最大24キログラムの二酸化炭素を削減するのと同じ効果という。12月9日まで。
(時事通信 11月3日)





この報道は、高台寺と三洋電機による協働事業によるライトアップに対するものです。
華やかなライトアップですね?
高台寺は元々は曹洞宗の寺院(現在は臨済宗)ですが、北政所も400年後にこんな形でライトアップされるとは夢にも思わなかったでしょうね(余談)。

このライトアップは、アート・ディレクター東泉一郎氏による映像作品で、水滴や花や人の手など、躍動する生命を表現しているそうです。
境内には樹脂製の蓄光石もちりばめられており、幻想的な光を放ちながら異空間を演出しています。





高台寺と三洋電機の"共創"によるエコロジーライトアップについて

<テーマ>「地球といのちがよろこぶライトアップ」


 三洋電機株式会社は、10月26日(金)?12月9日(日)に高台寺(京都市東山区)で開催される「秋の特別夜間拝観」において、高台寺とのコラボレーションによるライトアップを行います。
 高台寺の方丈前庭 波心庭において、光・映像・音を用いた動きのあるライトアップを実施。ライトアップには、当社の太陽光発電システムを搭載したソーラー電源車「ソーラービークル」で発電した電力を一部活用しています。また、太陽光や蛍光灯の光を吸収して発光する「蓄光石」を用いるなど、光のエネルギーを活かした「地球といのちがよろこぶライトアップ」を展開します。
 三洋電機は、ブランドビジョン「Think GAIA」のもと、「エコロジーライトアップ」という新しいライトアップのスタイルを今後も提案していきます。




この報道ですが、ライトアップ全体を賄っているわけではなく、ソーラービークルでの給電量は蛍光灯30本×6時間分に留まるとのことです。
具体的には、境内のライトアップで使用するプロジェクター3基のうち1基分の電力がソーラービークルにより供給されます。
これによりライトアップ期間(45日間)でCO2が 1.08トン (24kg×45=1080kg) 削減されるそうです。
逆に言えば、ライトアップにより、CO2が 2.16トン分浪費されることになるわけですね。


それでも、環境配慮のアピールはできるのでしょうか・・・かなり大々的に報道されております。

環境や光害に対する配慮を充分に行った上でのライトアップは良いのですが、パチンコ屋のサーチライトや広告看板、ネオンサインなど、無秩序なライトアップだけは勘弁して欲しいものです。

投稿者: kameno 日時: 2007年11月 4日 17:04

コメント: ライトアップと環境への影響

こんばんわ。
日暮れも早くなり夕暮れの街にひんやり風が吹けば、アスファルトとビルの谷間の御堂筋にもイルミネーションがともり、少し元気づけられます・・
今は勤めはやめてますが大病院の近くにイルミネーションのすごい場所が出来たそうで(それも個人のお宅)、患者さんには迷惑では?と思いきや評判は上々。
「年の瀬というのに家に帰れなくても、ここで元気づけられる。」と・・
神戸のルミナリエもそんな効果があったようですが、暗闇に浮かぶきらめきが人の心に灯火をもたらすのでしょうね。

供給電力をエコロジックにすることで、さらに科学と芸術のコラボレーションが楽しめたらいいですね!

投稿者 ゆが | 2007年11月 6日 20:51

ゆがさん
夕暮れの訪れが急に早くなりましたね。
最近は個人宅でも競ってクリスマスイルミネーションに力を入れる方が増えました。
ホームセンターなどでは10月から既に専用コーナーが設けられております。
なるほど、年末を病院で過ごす方の心の支えになったりもするのですね。
神戸ルミナリエも大震災被災者の心の支えとなりました。経済的な側面だけで計り切れないこともあるようです。

投稿者 kameno | 2007年11月 7日 07:53

「眠らない街」があちこちにできたお陰で、夜の街に繰り出す若者・子ども達の増えた一因でもあるように思います。とにかくまぶしすぎますね! どうしてあそこまで明るくしないといけないのか・・・当たり前になっていることを考えてみることが大事なのですね。

投稿者 asami | 2008年6月 6日 11:04

asamiさん
スペースシャトルから眺める地球の夜の部分の写真を見ると、無数の光が網状に広がっています。
光は私たちに活動時間を広げてくれますが、それが果たして私たちにとって豊かな暮らしをもたらすのか、あらためて考える必要がありそうですね。

投稿者 kameno | 2008年6月 6日 23:27

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