根松・未来を見据えて

明日仏前結婚式が挙行されるため、諸準備を整えています。
鬘や衣装、その他準備品も整い、本堂や控室も概ね形が出来上がりました。
(ご両家のみなさま、数多くの結婚式場から貞昌院を選んでいただき、ありがとうございます)

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準備品の中で、この時期に一番苦労したのが根松です。
つまり、根っこのついた松の苗木。
年末?正月にかけてはかなり豊富にあるのですが、この時期は端境期で一番品薄な時期であります。

いつもお願いしている植木屋にも、いつまで経ってもなかなか入ってこないため、横浜?鎌倉の植木屋を数件巡ってみましたが、どこも在庫なし。
その他心当たりのところを中心に範囲を広げて探してみましたけれども見つかりません。

これはいよいよ、山で掘ってこないといけないかな・・・・・とまで考えましたが、一か八かで近所の小さな花屋に聞いてみたところ・・・・あった!あるではないですか!
灯台下暗しです。
よかった。


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結婚式に限らず、おめでたい場には根松がつきものです。
正月飾りとして根松を飾ったりもしますね。
(年末に在庫が増える理由です)

禅寺では、このほかに、根松を飾りそれを行持の後境内に植えるという伝統があります。
これは、恐らく『臨済録』「行録」にその起源があるのでしょう。


深い山奥の境内に臨済義玄禅師が松を植えているのを見て、臨済禅師の師である黄檗希運禅師が
「深山裏栽許多作什麼」・・・・「こんなに樹がたくさんある所に樹を植えてどういうつもりか」
と訊ねます。
臨済禅師はそれに対し
「一與山門境致、二與後人作標榜」・・・・「一つには山門の境致とし、二つには後人のために標榜となさん」
とこたえました。

つまり、後世の人のために植え、そして道標となるように植えるというわけです。
臨済禅師の頭の中には、苗木ではなく、遥か数百年後に立派に聳え立つ樹の情景が思い浮かんでいたのでしょう。

これから寺社は紅葉のシーズンを迎えますが、私たちが素晴らしい紅葉の光景を見ることができるのも、数百年前の先人たちが未来を見据えて樹を植え、樹を守ってきてくれたからに他なりません。


晋山式(住職の就任式)など、禅寺におけるお祝いの行持には根松が用いられ、それを境内に植樹するのはそういう意味があります。

同様に、仏前結婚式で用いられた根松は、式を挙げられた二人に新居に持ち帰っていただき、そこに植えていただきます。
新生活を始める記念樹として、庭の境致として、そしてこれから築きあげていく新しい家庭を見守る樹として、時々初心を振り返る道標の樹として。


仏前結婚式は、お釈迦様、ご先祖さまのもと、厳粛に行われる式です。
明日の式が滞りなく円成しますよう、お二人が末永く幸せな家庭を築きますように・・・・・



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投稿者: kameno 日時: 2007年10月 1日 12:50

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