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昨日のトピックスの続きです。
カオスの論理を調べていく中で、興味深い研究に突き当たりました。
国立肥前療養所精神科医 田原孝氏の臨床研究報告です。
内容をかいつまんで箇条書きにすると次のようなものです。
■人間は、生まれてから死に至るまで、生体活動はカオス的に明瞭な変化を示す。■生まれたばかりの赤ちゃんの生体活動がは、無構造で、ノイズ的である。
■成長するに従って、次第に複雑なカオスを形成するようになる。
■健康な身体や精神状態であるほど、生体活動はカオス的に揺らいでいる。
■外界の変化を情報として取り入れて、これに柔軟に対応するカオス状態を作り出すことによって、生体全体の動的な安定を図っている。
■健康を損ねたり、疲労やストレスのある状態では、生体活動のカオスの程度は弱くなる。
■老化が進行すると、やはり生体活動のカオスの程度は次第に弱くなる。
■カオスの程度が弱くなり、規則的な構造になった時は、それは死を意味する。『臨床におけるカオスの応用』(バイオメカニズム学会誌、Vol.19、1995 田原孝)より要約
生体活動というのは、動脈波・静脈波・心臓の鼓動・眼球運動・身体運動・脳波・呼吸運動などをいいます。
これらの活動が、カオス的なゆらぎを示すわけですが、生老病死のそれぞれの時点で、特徴的な変化をみせるということです。
そして、健康状態が悪化するに従って、カオスの程度はどんどん弱くなっていき、究極の状態、つまりまったくカオス的でなくなり、規則的な構造になった時に死に至るというものです。
これは、「病気になる状態っていうのは、身体の状態の一定のリズムというものが崩れてしまうために起こり、そのリズムが崩れてしまう究極の状態が死である」と考えていた私にとって、まさに、全く違う方向からのアプローチであって、とても衝撃を受けたことを覚えています。
生まれた赤ちゃんの持つ、無構造でノイズ的っていうのを、イメージ的に描くと、
kじぇぐぉhgなふぉpdかkぐぇうぉgj 【無構造でノイズ的】 1/f0
というようになるでしょう。
それが、適切に作り出されたカオス構造では
このじょうたいがてきせつなかおす 【カオスを形成】 1/f
そして、死に至った時の規則的な単純構造は
あああああああああああああああ 【単純構造】 1/f2
こんなような感じで表わされるでしょう。
ここで、ジップの法則から1/fゆらぎについて考えてみます。
ジップの法則(-ほうそく、Zipf's law)とは、サイズがk 番目に大きい要素が全体に占める割合が 1 / k に比例するという経験則である。Zipfは「ジフ」と読まれることもある。包括的な理論的説明はまだ成功していないものの、様々な現象に適用できることが知られている。この法則に従う確率分布(離散分布)をジップ分布という。
Wikiペディア
すなわち、
・単語の使用頻度
・ウェブページへのアクセス頻度
・都市の人口
・上位3%の人々の収入
・音楽における音符の使用頻度
・細胞内での遺伝子の発現量
・地震の規模
・固体が割れたときの破片の大きさ
を調査していくと、それは、どうやら、自然界のゆらぎの大きさと頻度との関係にもあてはまることがわかってきました。
頻度(frequency)から生まれた用語が 1/f ゆらぎです。
1/f ゆらぎについては、以前のトピックス 電子音が溢れているけれど で触れています。
この1/f ゆらぎが、冒頭の、生体活動のカオス的揺らぎ、つまり、生命のリズムと結びつけることができるということになります。
私たちは、妙なる音楽や美しい風景に感動して、「我を忘れる」ことがある。他方、高エントロピーな騒音や汚物には嫌悪を感じるし、低エントロピーだが単調な音や図形に接していると退屈する。ともに対象から自己を遠ざけようとする。音の周波数のパワースペクトルを分析すると、美しい音楽は、前衛的な現代音楽(多くの人にとっては雑音である)などを除けば、1/f ゆらぎを持つことがわかる。美しい自然風景に特徴的な変化に富んだ曲線にも1/f ゆらぎが見られる。私たちが1/f ゆらぎに身体との心地よいハーモニーを感じるのは、私たち自身が1/fのゆらぎをもった複雑系であるからだ。他者の中に自己を見つけるとき、私と他者の間にある複雑性の落差が無化され、「我を忘れる」のである。『海・呼吸・古代形象―生命記憶と回想』(三木成夫、うぶすな書院 1992)
文中の「高エントロピーな騒音や汚物」というのは
kじぇぐぉhgなふぉpdかkぐぇうぉgj 【無構造でノイズ的】 1/f0
の状態(冒頭の例でいう赤ちゃんの状態)であり、
「低エントロピーだが単調な音や図形」というのは
あああああああああああああああ 【単純構造】 1/f2
の状態であるといえます。(冒頭の例でいう死の状態)
となると、私たちが美しい音楽や美しい風景に接した時には、身体や精神状態により感動の度合いが異なるといえるでしょう。
そして、もし身体や精神状態が良くない場合は、適切な1/f ゆらぎを医療に導入することで、本来の生体活動に近づけることができる、というのです。
1/f ゆらぎについてその実態や理論構築の基礎アプローチをまとめたものが下記サイトにあります。
とてもわかりやすくまとまっていますのでご紹介いたします。
体感音響研究所のサイト
音楽における 1/f ゆらぎ分析の理解