ジョルダン:曲線定理、世界初の完全証明 信州大教授らフランスの数学者カミーユ・ジョルダンが1887年に概念を確立し、その後多くの数学者らが完全証明に挑んできた「ジョルダンの曲線定理」について、信州大工学部の中村八束(やつか)教授(62)が27日、ポーランドの数学者ら16人との約14年間にわたる共同作業で、完全証明に成功したと発表した。数式上の誤りなどを確認するコンピューターシステムのチェックを経て、約20万行にわたる証明が完成。中村教授らは「完全証明したのは世界初」としている。
「ジョルダンの曲線定理」は「平面上の閉じた曲線は、平面を曲線の内と外に分ける」というもの。直感的には明らかだが、数学的な証明は難しいとされてきた。
中村教授によると、人間が行った数学的な証明をチェックする「プルーフ・チェッカー」というコンピューターシステムのうち、今回はポーランド・ビアリストーク大のアンジェイ・トリブレッツ博士(64)らが開発した「MIZAR(ミザール)」と呼ばれるシステムを使用したという。中村教授は「同様のシステムでコンピュータープログラムにミスがないことを確認するなど、今回の成果は実社会にも応用できる可能性がある」と話している。
証明は中村教授のホームページ http://e-learn.mine.nu/mizar/jordancurve.htm で閲覧できる。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/europe/news/20050928k0000m040137000c.html
紙の上に鉛筆で一筆の適当な線を描きます。
線が途中で交わったりしないようにし、出発点に戻ってくるようにすると、きちんとした閉じた図形が出来上がります。
このとき、この図形によって「必ず」内側と外側にきっちり分けられるのだろうかというのが、ジョルダンの閉曲線の定理とされているものです。
私たちは感覚的に、そんなことは明白じゃないか!と思うわけです。
何回やってみても、どんな形になろうとも、描かれた閉曲線によって二つの領域に分かれることを当たり前のこととして学習しているからです。
しかし、いざそれを数学的に証明しようとすると、とてつもない困難に突き当たります。
たとえ、何千万、何億回繰返して検証したとしても、たった一つの成立たない事例が見つかるかもしれない。そういう可能性が無いという事は否定でないからです。
当たり前だと思われている事が、実は感覚的という危うい前提の下に成り立っているということはとても多いのですね。
さて、そもそも、前提となる連続曲線って何でしょうか。
「一筆で書かれた連続的な線」という表現では不十分ですね。
とすれば、
実数の区間[0,1] からユークリッド平面上への写像として定義された線分
(x(p),(y(p)),0≦p≦1
が連続であるとは,任意の実数ε> 0 に対して,あるδ> 0 が存在し,|p'-p|<δならば
ρ((x(p'),(y(p'))-(x(p),y(p)))<ε
が成立すること.このような線分を2次元平面上の連続曲線と定義する。
とでも言わなければなりません。
そして、その連続曲線で作られる閉曲線については
平面上の任意の2点が連続曲線で結ばれるとき、これを弧状連結と呼ぶ。
パラメータを0≦p≦1 としたときの閉曲線
(x(p),y(p)),(x(0),y(0))=((x(1),y(1)))
が途中で自分自身と交わらないとき、これを単純閉曲線という・・・・・・
というように、直感を排した数学を基礎から逐一構築していかないと、この定理の完全証明ができないのです。
こういう途方ない作業を成し遂げて、完全証明を果たしたグループの皆さんに心より敬服いたします。