サバ のお話し

早いものでもう10月。
すっかり秋めいてきました。
味覚の秋、「秋さば」「寒さば」に代表される鯖(サバ)はこの時期から脂が乗ってとても美味しくなりますね。


さて、禅の修行僧も食事の際には「サバ」という用語を使います。
といっても、魚の「鯖」ではなく、「生飯」と書く「サバ」のことです。

どういうものかというと、下写真の赤い矢印の先に乗ってる七粒ほどのご飯粒のことです。

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修行僧は寝る時も坐禅堂で寝ますし、坐禅も当然、坐禅堂。そして食事も僧堂飯台といって坐禅堂でいただきます。

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食事の際に用いる食器が応量器(おうりょうき)です。
応量器は、幾つかの食器が入れ子になって重ねられコンパクトにまとめて持ち歩きます。
食事の際に、食事作法(じきじさほう)に則って応量器を開きます。

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点心飯台の際にはこの食事作法の途中で「生飯之偈(さばのげ)」を唱えながら、ごはん粒を七粒ほどつまみ、刷(せつ)の先に載せます。

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生飯之偈
汝等鬼神衆(じてんきじんしゅう)
我今施汝供(ごきんすじきゅう)
此食偏十方(すじへんじほう)
一切鬼神供(いしきじんきゅう)

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(ざっくりとした意訳)
一切の萬霊たちへ
いま、皆に施しをする
この施しはあらゆる方角に偏り
一切の萬霊たちに、みな等しく行き渡らせる

そして、生飯の施しをした後、初めて食事を頂きます。

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このような食事作法は、修行道場において何百年にも亘り、変わること無く続けられている厳格な作法です。
合理的な機能をもつ応量器、合理的な作法に基づく食事作法は「禅の思想」の根本ともいえるものです。

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坐禅堂の坐禅をする場所を「単(たん)」といい、その前縁の板の部分を「牀縁(じょうえん)」と呼びます。
この牀縁は、食事の際に応量器を開く場所ですので、坐禅の際には手や足を付くことは絶対にしません。
ましてやこの部分に腰かけるというようなことは厳禁です。

食事の後、浄巾で拭いて清め、食事は終了します。

 

食事の前に集められた生飯はどこへ行くかというと・・・
このように坐禅堂の前で供養されるのです。

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修行道場の坐禅堂は僧堂とも呼ばれ、その内部は一般には人の目に触れることのない非公開の神聖な場所です。
けれども、人の目に触れることのない場所においてもきちんとした作法が厳密に整えられ、受け継がれてきたのです。

投稿者: kameno 日時: 2015年10月 1日 20:17

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