東日本大震災では、3月11日午後から翌12日午前9時までに出された緊急地震速報13回のうち、4回分が長野県北部での地震を栃木県で地震発生などのように適切な予測でなかったそうです。
原因は離れた場所で同時に地震が発生したため、それぞれのデータの分離ができなかったことによるものと考えられています。
今回のように幅広い震源域をもつ震災では仕方の無いことでしょう。
仮に適切でない予報が多く出されても、身を守る行動は怠り無くする必要があります。
新幹線 揺れ9秒前にブレーキ
今回の地震で、東北新幹線は地震の揺れをいち早く検知するシステムが作動して、最初の揺れの9秒前、最も大きい揺れが起きる1分10秒前に非常ブレーキをかけて減速を始めていたことが分かりました。JR東日本は、この効果もあって新幹線が脱線を免れたとみて、データの詳しい解析を進めています。地震発生当時、東北新幹線は27本の列車が乗客を乗せて走っていましたが、いずれも脱線せず停止しました。JR東日本は、東北新幹線の沿線のほかに、太平洋沿岸にも岩手県の宮古や宮城県の牡鹿半島などに9つの地震計を設置し、揺れをいち早く検知して列車を減速させる「早期地震検知システム」を備えています。今回は、東北新幹線の線路からおよそ50キロ離れた牡鹿半島の地震計が、午後2時47分3秒に運転中止の基準となる「120ガル」という地震の加速度を捉えました。このため、システムが自動的に架線を停電させ、走行中の新幹線は一斉に非常ブレーキをかけて減速を始めました。このうち、線路沿いの地震計が最も大きな揺れを観測した仙台駅と、1つ北の古川駅の間には「はやて27号」と「やまびこ61号」が走っていましたが、JR東日本がデータを解析したところ、これらの列車が非常ブレーキをかけた9秒後から12秒後に最初の揺れが始まりました。そして1分10秒後に最も強い揺れが起きていました。このとき新幹線が何キロまで減速できていたかは分かっていませんが、JR東日本は強い揺れの前に減速を始めていたこともあって、新幹線が脱線を免れたとみて、さらに詳しくデータの解析を進めています。
(NHKニュース 4月5日配信)
震災の際に、新幹線をはじめ、鉄道に導入されている地震警報システム(通称「ユレダス」)の効果が顕著に発揮されています。
「ユレダス」とは、Urgent Earthquake Detection and Alarm System の頭文字をとったものです。
国鉄鉄道技術研究所の開発したシステムで、地震の際に即座に運行中の列車を止め、あるいは急ブレーキをかけることで被害を最小限に抑える仕組みです。
特に新幹線は一秒間に6~70メートルほど進みますので、ブレーキをかける1秒の遅れが大惨事を引き起こしかねません。
2004年に発生した新潟県中越地震では、震源直上にあった「ユレダス」が地震のP波を検出して僅か1秒以内に警報を出し、付近を走行中の全ての列車に非常制動がかかりました。
この時は「とき325号」が脱線してしまいました。
震源に近かったため、警報からS波到着まで2秒もなかったことが原因です。
それでも、死傷者を出さなかったという意味は大きく、大きく揺れ始める前に急ブレーキが作用したということが功を奏したといえます。
このシステムが無かったとしたら、脱線だけでは済まなかったことでしょう。
東日本大震災でも、「ユレダス」が大きな役割を果たしました。
今回は震源が三陸沖合いだったこともあり、S波が到達する少なくとも9秒前には急ブレーキが作動していたようです。
東北新幹線では合計27本の列車が乗客を乗せて走行していましたが、どの列車も脱線を免れました。
つくづく緊急地震速報のシステムは世界に誇るべき技術だと感じます。
東日本大震災で東北新幹線は、高架橋など多数箇所に被害を受けたものの、東京~那須塩原間、盛岡~新青森間は既に運転を再開しています。
明日には盛岡~一ノ関、4月12日には那須塩原~福島、4月下旬には全線にわたり運転再開する見通しとなりました。
鉄道技術者の総力を挙げた復旧作業に心から賞賛したいと思います。
東北新幹線の全通が復興の大きな原動力となることでしょう。