デシマル考

※今日の記事タイトルの「デシマル」は40数年前にヨーロッパに禅を伝えた弟子丸老師のことではありません。

ここのところドイツの方とメールでやり取りする中で
Flugkosten 50.000EUR
などという表記があったりします。
これは航空券代金が50ユーロということではなく、5万ユーロということを表しています。

このように、ドイツ、フランスなど、英語圏以外のヨーロッパでは3桁ごとの位取りに"."ドットを使うことが普通に行われています。
また、小数点には","(カンマ)が使われることが普通で、日本の表記方法とは逆となります。

12.345 という数字は日本では じゅうにてんさんよんご。ドイツでは「いちまんにせんさんびゃくよんじゅうご」と捉えてしまいます。
わかっていても、馴れないと数字の大小についてピンとこないですね。

ただ、日本でも小数点をカンマで表記する事例があります。
例えば、これは 横濱市復興局 昭和22年6月製版仮製三千分一 地形図「上永谷」の一部です。
chikeizu

標高表記で 73,0 というように小数点が","(カンマ)になっていますね。
恐らく地図の技術をフランスやドイツから導入した名残りではないでしょうか。
そういえば、0.1のことを「ぜろ”こんま”いち」と言ったりしますね。
これも何かの名残りでしょう。

小数点をどう表すかは


百二十三万四千五百六十七点八九の各国における表記は、次の通りである。
日本では 1,234,567.89 または 1234567.89 縦書きは 百二十三万四千五百六十七・八九
イギリス、アメリカでは 1,234,567.89 または 1,234,567·89
フランス、南アフリカでは 1 234 567,89
ドイツでは 1.234.567,89
インドでは 12,34,567.89
アラビアでは ١٬٢٣٤٬٥٦٧٫٨٩

■小数点にドットを使う国=日本、オーストラリア、ボツワナ、カナダ(英語話者)、中国、コスタリカ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、香港、インド、アイルランド、イスラエル、韓国、北朝鮮、マレーシア、マカオ(中国語を使う場合)、メキシコ、ニカラグア、パナマ、フィリピン、プエルトリコ、サウジアラビア、シンガポール、タイ、台湾、英国、米国
■小数点にカンマを使う国= アンドラ、アルゼンチン、オーストリア、ベルギー、ボリビア、ブラジル、カナダ(フランス語話者)、クロアチア、キューバ、チリ、コロンビア、チェコ、デンマーク、エクアドル、エストニア、フェロー諸島、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、グリーンランド、ハンガリー、インドネシア、アイスランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マカオ(ポルトガル語を使う場合)、マケドニア共和国、オランダ、ノルウェー、パラグアイ、ペルー、ポルトガル、ポーランド、ルーマニア、スロヴァキア、セルビア、スロベニア、スペイン、南アフリカ、スウェーデン、スイス、ウクライナ、ウルグアイ、ベネズエラ、ジンバブエ、モンゴル
■小数点がMomayyezとなる国= バーレーン、イラン、イラク、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、シリア、UAE
(ウィキペディア「小数点」項より引用)


きれいに分かれてしまっています。
これでは問題があるとして、第22回国際度量衡会議において次のように議論され、国際単位系(SI)の結論が出されました。

Symbol for the decimal marker
The 22nd General Conference, considering thata principal purpose of the International System of Units (SI) is to enable values of quantities to be expressed in a manner that can be readily understood throughout the world,
the value of a quantity is normally expressed as a number times a unit,
often the number in the expression of the value of a quantity contains multiple digits with an integral part and a decimal part,
in Resolution 7 of the 9th General Conference, 1948, it is stated that "In numbers, the comma (French practice) or the dot (British practice) is used only to separate the integral part of numbers from the decimal part",
following a decision of the International Committee made at its 86th meeting (1997), the International Bureau of Weights and Measures now uses the dot (point on the line) as the decimal marker in all the English language versions of its publications, including the English text of the SI Brochure (the definitive international reference on the SI), with the comma (on the line) remaining the decimal marker in all of its French language publications,
however, some international bodies use the comma on the line as the decimal marker in their English language documents,
furthermore, some international bodies, including some international standards organizations, specify the decimal marker to be the comma on the line in all languages,
the prescription of the comma on the line as the decimal marker is in many languages in conflict with the customary usage of the point on the line as the decimal marker in those languages,
in some languages that are native to more than one country, either the point on the line or the comma on the line is used as the decimal marker depending on the country, while in some countries with more than one native language, either the point on the line or comma on the line is used depending on the language,
declares that the symbol for the decimal marker shall be either the point on the line or the comma on the line,reaffirms that "Numbers may be divided in groups of three in order to facilitate reading; neither dots nor commas are ever inserted in the spaces between groups", as stated in Resolution 7 of the 9th CGPM, 1948.


結論は、
小数点は"."ドット、","(カンマ)どちらを使っても構わない。
位取りには3桁ごとにスペースを空けても良いが"."ドットや","(カンマ)は用いないこと。
でした。

国際単位系(SI)スタイルでは 1 234 567.89 または 1 234 567,89 ということですね。
ですから、冒頭の表記は Flugkosten 50 000EUR としたほうが良いし、12,500円は 12 500円と書いた方が好ましいということになります。

 


蛇足ですが、小数に関して興味深い文化の分類方法があります。
それは「分数文化圏」「小数文化圏」という区分です。

分数文化圏はヨーロッパ、アメリカ合衆国、エジプトなど
小数文化圏は日本、中国、インド、アラビアなど

そういえば、欧米圏はやたらと分数を使いますね。
貨幣では1/4ドル(クォーター)、紙幣で20ドル札が良く使われるというのは分数文化圏であるからでしょう。
逆に日本では四分の百円玉や2千円札は使われない(使わない)ですね。
文化の違いが顕著に現れている例といえます。

投稿者: kameno 日時: December 13, 2010 1:15 AM

コメント: デシマル考

日本の地形図で少数点の表記が","(カンマ)時代と"."ドット時代の変化があったのを初めて知りました。明治の初めからずっと"."ドットだとばかり思い込んでおりました。

手持ちの地形図を見てみますと、明治10年代のフランス式地形図・1/2万迅速図も","(カンマ)ですし、以後の戦前のドイツ式地形図も","(カンマ)だったの様です。それが"."ドットに変わったのは戦後の昭和40年図式からだ様です。戦後米軍管理下に置かれた地理調査所でしたが、昭和40年までは戦前からの","(カンマ)を使用していた様です。

この昭和40年図式から"."ドットに変わったのはおそらく製図方式がインキング方式からスクライブ方式に変わったのが原因だったと思われます。ペン書きだと「線の細太」が表現出来るのですが、スクライブ式だと「線の細太」が出来ません。良い例が温泉記号で湯気がクラゲの様に書いていたのが、昭和40年図式から湯気が直線に変わったのと同じ理由であったのではないかと思います。

投稿者 ハマちゃん | December 13, 2010 4:02 PM

> kameno先生

昨日はお疲れ様でした。
この記事のタイトルを見て、すっかり「弟子丸」だと思いました(笑)

投稿者 tenjin95 | December 14, 2010 8:48 AM

ハマちゃん様
やはり、昭和30年くらいまでは”ドット”区切りの小数点表記が地図全般で使用されていたようですね。
その理由の一つに製図方法があるという説はとても興味深いです。

tenjin95様
はい、デシマルポイントの話題でした。
※先日お疲れ様でした。仏教関連の「爪の先」が元でとても有意義な会になったと感じました。

投稿者 kameno | December 15, 2010 7:45 AM

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