涅槃会法要第二部

横浜市仏教連合会・仏教奉讃会主催 涅槃会法要の第二部として、『佛遺教経』と涅槃図についての講演がありました。

講師は大正大学講師 土屋慈恭師です。


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講演内容の一部をメモとしてまとめてみました。
一般向けに分かりやすく咀嚼した内容でした。


涅槃会には涅槃図を掲げてお参りしますが、それは宗派を問わないことです。
また、特に禅宗では『佛遺教経』を用い、葬儀などでも唱えたりします。
しかし、天台宗ではあまりこれを用いないようで、講義の前半は『佛遺教経』についての解釈が行なわれました。


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『佛遺教経』はお釈迦様が入滅する際に集まった弟子たちに説いたお経で、『遺経』と略したり『彿垂般涅槃略説教誡経』などという名前で呼ばれます。
後秦の時代に亀茲国の三蔵、鳩摩羅什が詔を奉って訳されたものです。

内容は、経典の名前が表すとおり、お釈迦様が弟子たちに説いた最後の言葉を十数項目にまとめたものです。

禅宗の僧侶は毎年年頭に「遺言」を作成するのですが、天台宗ではそれが行なわれないようです。
「もし自分が遺言を今書くとしたら」という視点からの解釈も行なわれました。


<『佛遺教経』解釈の内容については割愛します>

遺教経は次のように結ばれます。


爾の時、阿珸樓駄、衆の心を観察して佛に曰して言く。但だ是の念を作す。世尊の滅度、一に何ぞ疾かなる哉と。
汝等比丘、憂悩を懐くこと勿れ。若し我、世に一劫住すとも、会うものは亦た当に滅すべし。会って而も離れざること、終に得べからず。自利利人の法、皆具足す。若し我久住すとも更に所益無けん。応に度すべき者は、若しは天上、人間皆悉く已に度す。其の未だ度せざる者には皆、亦た已に得度の因縁を作す。自今巳後、我が諸の弟子、展転して之を行ぜば、則ち是れ如来の法身常に在して而も不滅なり。是の故に当に知るべし。世、皆無常にして会えば必ず離有ることを。憂を懐くこと勿れ。世相是の如し。当に勤めて精進して早く解脱を求め、智慧の明かりを以て諸の癡闇を滅すべし。
汝等比丘、常に当に一心に出道を勤求すべし。一切世間の動不動の法、皆な是れ敗壊不安の相なり。汝等且く止みね。復た語を得ること勿れ。時、将に過ぎなんと欲す。我、滅度せんと欲す。是れ我が最後の教議する所なり。

『佛遺教経』にみられる最後の説法は、釈尊が鹿野苑における最初の説法(初転法輪)において説いたとされる<四諦>に通じるものでもあります。

すなわち、
〈苦諦〉は、迷いの生存は苦であるという真理
〈集諦〉は、苦の原因は迷妄と執着にあり、欲望の尽きないことが苦を生起させているという真理
〈滅諦〉は、欲望のなくなった状態が苦減の理想の境地であるという真理
〈道諦〉は、苦減にいたるためには八つの正しい修行方法(八正道)によらなければならないという真理
であります。

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蛇足となりますが「自灯明・法灯明」については、自らを灯明とし、自らをたよりとして,他人をたよりとせず、真理を灯明とし、真理をよりどころとして,他のものをよりどころとせずにあれという教えであります。
長阿含経(巻2)などに伝えられるものですが、本来、「自らを島とし…」と訳されるべきところ、「島」を意味するサンスクリットがパーリ語などの俗語では「灯明」を意味する語と同語形になることから、俗語で書かれた原典によった漢訳者が誤訳したものと考えられます。

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以上を踏まえて涅槃図を具体的に眺めていきました。

沙羅双樹というのは二本並んでいる沙羅の木。
それが東西南北で8本、その中でお釈迦様が入滅されました。
お釈迦様が入滅の際にその時に木が花を咲かせ、白くなっています。それが鶴が頭を下げた様子に見え、それを鶴林と表現したりします。


お釈迦様の周りに弟子たち、いろいろな印度の神様、動物たち。動物たちも集まっています。
しかし、猫が見えない。
猫たちが集まらなかったために十二支から除外された、などど言われたりもします。


入滅の日は旧暦の15日ですから満月ですね。
天にはお月様のもとに現れた女性が描かれていますが、これがお釈迦様のお母さん。
お釈迦様をお母さんが迎えてくる、これはとっても東洋的で良い表現だと感じます。


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講演の後には参列の皆様に涅槃図をゆっくりとご覧戴きました。

天台宗の観点からの涅槃図の捉え方についていろいろと興味深い点もあり、また発見もあり、一般向けの講演ではありましたが私たちにとっても学ぶところが多くありました。

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涅槃図は様々なパターンがあります。
また、説話も微妙に異なっていたりします。
涅槃図のバックグラウンドを推察しながら眺めていくと面白い発見もあるでしょう。

涅槃図も詳細については、日を改めて別に記事としてまとめてみます。

投稿者: kameno 日時: 2010年2月10日 23:29

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