世界仏教徒会議日本大会

11月14日?17日の日程で、東京・浅草ビューホテルを会場に、第24回世界仏教徒会議日本大会(主催:WFB、世界仏教徒連盟)が開催されています。

開催期間中の11月15日に、「仏教者の社会問題解決への貢献」をテーマに、仏教と社会の関わりについて7つのシンポジウムがあり、参加してきました。
詳細 http://www.jbf.ne.jp/pdf/shinpo.pdf


シンポジウムは世界各地の社会問題について、各国の仏教者が実践的な取り組みを報告されましたが、午前中に、その導入となる映画“The Economics of Happiness”が上映され、映画上映後、映画製作者:ヘレナ・ノルバーグ・ホッジ氏、アリヤラトネ氏、ジョアンナ・メーシー氏、湯川lれい子氏によるゲストトークが行われました。

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映画製作者:ヘレナ・ノルバーグ・ホッジ氏

本日のトピックスは、まずこのゲストトークについて報告します。
<例によってkamenoメモと個人的感想であることを予めご了承ください>

 

映画“The Economics of Happiness”

この映画は、グローバル経済が世界中の人と文化に及ぼす衝撃に目を向けました。
オーストラリアからペルーまで、色々な国の農家、経済学者、店主、著者、政治家と話し、その数々の声は、押しつけられた自由貿易が招いた結果を明らかにします。グローバルではなく地域に密着した経済によって生まれる、より充実した、環境にやさしい将来のかたちがあります。(映画製作者:ヘレナ・ノルバーグ・ホッジ)

現代社会はグローバル化が進展しています。
けれども、グローバル化は私たちの生活にプラスとなっているのでしょうか。
アメリカ型の大量消費社会は、本当に豊かさをもたらすのでしょうか。


この映画は
(1)このまま現状を受け入れて無知なまま進んでいくのか
(2)今、何が起きているのか現状を見て理解し、無知の改善を行う
の二つのどちらの道を歩むべきか、選択を私たちに訴えかけています。


映画の内容の詳細は触れませんが、私は映画を見終わってダライラマ14世法王の詩、"THE PARADOX OF OUR AGE"が思い浮かびました。
是非一度ご鑑賞されることをお勧めします。



THE PARADOX OF OUR AGE

We have bigger houses but smaller families;
more conveniences, but less time;

We have more degrees, but less sense;
more knowledge, but less judgement;
more experts, but more problems;
more medicines, but less healthiness;

We've been all the way to the moon and back,
but have trouble crossing the street to meet
the new neighbor.

We build more computers to hold more
information to produce more copies then ever,
but have less communication;

We have become long on quantity,
but short on quality.

These are times of fast foods
but slow digestion;

Tall men but short character;
Steep profits but shallow relationships.

It's a time when there is much in the window,
but nothing in the room.

The 14th Dalai Lama

現代の矛盾

大きくなった家、少なくなった家族
便利になって、時間がない

増える学位、鈍くなる感性
増す知識、衰える判断力
増える専門家、増える問題
増える薬、損なわれる健康

はるか月まで行って帰ってくる時代
新しい隣人に会うために道一つ越えられない

情報を蓄え、複製するためにコンピューターを作り、
真のコミュニケーションは減る
私達は量を重んじ、質を軽んじるようになった

ファーストフードと消化不良の時代
大きな体と狭い心
伸びる利益、そして薄まる絆

ショーウインドーに多くのものが陳列されていて
倉庫には何もない、これが我々の時代だ

ダライ・ラマ14世
(訳:「チベット通信」より)


大量消費社会は、まさに仏教の三毒、貪瞋痴を具現化したものであるともいえそうです。
スーパーに並ぶ品物は、どこの国のどのような人々が作りだしているのか全く想像ができません。

地域のコミュニティーは崩壊の危機に瀕しています。
しかしながら、世界の人口の半分はいまだにローカルコミュニケーションが成り立っている社会です。
これらの社会がグローバル化の波に飲まれる前に、「アメリカ型の大量消費社会が決して幸福をもららすものではないという情報提供」を行う必要があります。
「情報提供」により、経済システムへの「無知」を徐々にでも無くしていくことができるでしょう。

地域の文化、習慣、風習、伝統、宗教は先祖から受け継がれてきた大切なもの。
豊かな生活は、ローカルコミュニケーションからこそもたらされているのです。

今だからこそ、ローカルコミュニケーションを見直し、生かす政策が必要であるといえそうです。

そのためには、仏教者のコミュニケーティーは最も適切なものともいえます。
資本主義、限りない欲求、非人間的システムを見直し、仏教、仏陀の教えに根ざしたローカルな金融、生産者が見える仕組み、分散型エネルギー、隣人との対話(隣人会議)の実践を広めていくこと。
仏教が中心となり、コミュニティーを作ることができるのです。


■ゲストトークの結論

ローカル化の取り組み、自然に密着させる教え、仏教の縁起こそが真のグローバル化の源となる。
仏教の三毒、貪瞋痴から切り離された草の根のローカルな運動を有機的、水平的につなげて広げていくことが大切である。
それを結ぶのが仏教の縁起である。

所有の概念が三毒を生み出す。所有できない、所有を欲する心が苦を生み出す。
共有し、互いに尊重すること、命を支える社会への転換、基本的仏教に立ち返ることが必要。


仏教の教えはインドラの網。網の目には一つひとつ宝石があり、互いに光りあい映しあう。
それが、現代社会においては濁ってしまっているのだ。
一つひとつのコミュニティーがもう一度再生され、光を取り戻すことが必要である。


<この後行われた午後のシンポジウムで、その実践について具体的に論議されています>


kameno付記
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私は空を見ました。いまはすっかり青ぞらに変ったその天頂《てんちょう》から四方の青白い天末《てんまつ》までいちめんはられたインドラのスペクトル製《せい》の網、その繊維《せんい》は蜘蛛《くも》のより細く、その組織《そしき》は菌糸《きんし》より緻密《ちみつ》に、透明《とうめい》清澄《せいちょう》で黄金でまた青く幾億《いくおく》互《たがい》に交錯《こうさく》し光って顫《ふる》えて燃えました。
(『インドラの網』(宮沢賢治・角川文庫,1996・青空文庫)

※インドラ=帝釈天。インドのヴェーダ神話の神が仏教に取り入れられたもので、仏法を護る神。その宮殿の屋根には美しい網がかかる。

投稿者: kameno 日時: 2008年11月15日 11:25

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