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破壊された仏像に手向けられた聖なる白布・カタ [チベット・砕かれた仏の国]より。野町和嘉氏撮影。
チベットでは、ダライ・ラマを最高位として、哲学を修め、徳をそなえた高僧こそがチベット文化の核心であると人々は信じてきた。アディを戦慄させたのは、中国が行った高僧に対する残酷な精神破壊の数々であった。それらの『儀式』は大衆への見せしめとして行われた。
チベットではごく普通の人々でも、生きものは虫一匹とて決して殺さない。すべての生きものは因果応報によって生まれ変わった人間の姿であるかも知れないと深く信じられているからだ。その高僧は後頭部に銃を突きつけられ、手錠をかけられたその手には金槌が握らされていた。そしてこともあろうに、台の上には菜っ葉からつかまえてきた青虫が一匹ずつ置かれ、それを叩き潰させるのである。
<中略>
こうした弾圧は、中国が文化大革命に突入するずっと以前の、1950年代後半から始まっていた。チベット全土がこうして悪夢にうなされていたときにも、共産主義者の謀略を逃れたダライ・ラマが、インドにあって仏法を守り続けていたことが、チベットの人々にとってどれほどの支えとなったかは計り知れない。
(チベット『天の大地』1994年 集英社刊より)
これは、高知県出身のフォトジャーナリスト、野町和嘉氏によるチベットの戦慄のドキュメンタリー『天の大地』です。
ここに引用した文章は中国が行ったチベット僧たちに対する思いつく限りの恥辱のほんの一部ですので、是非 チベット・砕かれた仏の国 をご覧いただくことをお薦めします。
野町和嘉氏は、1988年以来チベットに通い、極限高地の信仰と暮らしを撮影し続けています。
また、イスラームの聖地であるメッカ・メディナの撮影をサウジアラビアより正式に要請されたことがきっかけでイスラームに改宗、メッカ大巡礼の全容を内面から撮影されてきました。
信仰のもつ力、それは計り知れないエネルギーとなります。
チベットが中国軍に降伏した以降は、チベット僧侶、チベット人たちは餓えと拷問、強制労働を余儀なくされます。
そのなかで、僧侶たちにとって一番耐え難いものは、収容所となった寺院内で、僧侶たちだけに強制させられた仏像や経典類破壊の罰則であったといいます。
野町氏は、亡命政府の置かれている、インド・ダラムサラで20人以上の亡命者に様々な質問を試みたそうですが、ほとんどの方が胸の内を開くことは無かったそうです。
僧侶の中には、あまりに苛酷な精神重圧により、人を信じることができなくなってしまったものもいます。
「私をひどい目にあわせた中国人たちを思うと哀れでなりません。拷問の痛みで眠れない夜、あの人たちが来世に背負ってゆくことになる業の深さを、私は何度も考えさせられました。自分が生まれ変わり、あのような人間になるとしたら、本当に恐ろしくて、恐ろしくて、、、」
数年にわたり筆舌にし難い拷問を受けてきた尼僧ケルサン・ペモのことばは、チベット仏教の精神を端的にあらわしています。
このような歴史に対し、事実をきちんと伝えることは大事なことであると感じます。
日本にいる私たち僧侶にも、出来ることは、いくらでもあるはずです。
野町和嘉さんの写真展および講演会のご案内です。
■野町和嘉写真展「チベット」
「ゆるす言葉」発売記念展
会場:青山ブックセンター本店内ギャラリースペース
電話:03-5485-5511
会期:2008年8月11日 - 8月28日
■野町和嘉写真展 地球巡礼
あーすぷらざ 3F企画展示室
Tel:045-896-2899
会期:2008年9月6日?10月13日
公開時間:10:00-18:00 祝日を除く月曜日休館
入場無料
主催:神奈川県立地球市民かながわプラザ
指定管理者 財団法人 かながわ国際交流財団
作品制作協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社
協力:クレヴィス
■野町和嘉講演会
日時:2008年9月13日(土)14:00?15:45
場所:あーすぷらざ5F映像ホール
入場無料 事前申し込み制
■公式サイト
野町和嘉:世界地図で辿る“地球巡礼”
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