2003-11月号
曹洞宗を開かれた道元禅師が、つぎのような歌を詠まれています。 峰の色 谷の響きも 皆ながら わが釈迦牟尼の 声と姿と この歌は、﹁わたくしたちが眺めている山の緑や、清らかな谷川の流れの音は、すべてお釈迦さまのお姿であり、お声なのだ﹂という意味であり、永平寺で修行する禅師の思いが伝わってきます。禅師はいつも自然に深い思いを寄せ、見慣れた山や谷の響きとともに生きることが根本だ、と考えられたからこのように詠んだにちがいありません。 春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり このような歌もあります。﹁すずし﹂とは涼しですが、心にわだかまりがない様子をいいます。四季それぞれの美しさ、そういう自然の姿を素晴らしいと感じるだけでなく、そうした自然に囲まれて自分の心もわだかまりなくサッパリとしてくる、自然と心の共生がよく表されています。 現在、曹洞宗では﹁グリーン・プラン﹂という運動を推進しています。これは、どのような運動かというと自然との共生、生命と環境の調和を目指したものです。 ﹁環境問題?何をいまさら、分かっているよ﹂とか﹁私一人で何が出来るの﹂、﹁環境より経済が優先だよ﹂という声が聞こえてきそうです。しかし、﹁分かっているよ﹂といっても、何もしなければ解決には繋がりません。﹁私一人﹂から始めなければ、誰も始める人は現れてこないのです。 経済問題も確かに重要です。しかし、公害を振りまき、環境を破壊してしまったならば、その経済的損失は簡単には取り返すことは出来ないでしょう。 ﹁もっと豊かに﹂という掛け声のもと、限りない人間の欲望の結果がどの様なものか皆さんは既にお解りでしょう。 改めて言うまでもなくみんなが﹁緑を、自然を守ろう﹂と考えているのに、判ってはいるのに、なぜ実現しないのか。それどころか、ますます緑が減ってしまうのでしょうか。 ﹁緑を、自然を守ろう﹂とは、ただ木を切るな、緑を増やそう、というだけの話ではありません。一人ひとりができることからやっていこう。そして私たち自身はもちろん、子どもたち、社会、日本、世界をみんなで守ろう、これが﹁グリーン・プラン﹂なのです。 では、どこで、何から始めたら良いのでしょうか。以下に、身の回りで、今日からでもできることを挙げてみました。 �@電気のスイッチはこまめに切りましょう �A水の出しっぱなしは止めましょう �B自動車のエンジンは不要の時は止めましょう �Cゴミは分別分類して出しましょう �D余りものが出ないよう食事を工夫しましょう �E空き缶やタバコのポイ捨てをやめましょう �Fまわりの植物を大切に育てましょう �G排水口にゴミ取りのネットをつけ、下水道を守りましょう 既にお聞き及びの項目もあるかも知れません。既に実行している事柄も有るかも知れません。しかし、このような小さな積み重ねが大きな結果をもたらし、豊かな未来を約束するのです。 貞昌院では今月から境内に太陽光発電設備を稼動させました。少しでも地球環境に貢献したいとの思いを一人ひとりからみんなへ、小さな運動から大きな運動へ。それぞれの置かれている立場は様々おありでしょう。公害が深刻な地域もあれば、まだ緑豊かな場所もあるでしょう。既に地域ぐるみでこの問題に取り組んでいる所もあるでしょう。皆さんに﹁グリーン・プラン﹂の趣旨を理解し、地域の実情に合わせて、なんらかの行動を起こして頂ければ何よりです。